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やきものの違い | 陶磁器

工芸を楽しく学ぶには、違いを知ることが第一歩です。本日は、うつわの基礎とも言える陶磁器の違いについて、お話ししたいと思います。

陶磁器は、焼成して作られるため、「やきもの」とも呼ばれ、大きくは陶器、磁器、炻器(せっき)、土器の四つに分類されます。土器は日本の歴史教科書の最初に出てくるように、縄文時代から存在する最も歴史の古いやきものです。窯を使わず、800度程度の温度で野焼きされることが特徴です。その後、古墳時代に、須恵器(すえき)と呼ばれる、轆轤(ろくろ)で形作り、窯を用いて高温で焼成する技法が朝鮮半島から伝えられました。須恵器は、日本の炻器の始まりとも言われるほどに、現在のやきものに大きな影響を与えています。

陶器と磁器の違い

現在、家庭で使われるうつわの多くは、陶器か磁器ですが、陶器は陶土と呼ばれる粘土質の土からできていて、磁器は陶石と呼ばれる石からできているという素材の違いがあります。石を素材とする磁器は硬く、叩くとカンカンと高い音がします。反対に、陶器は叩くとコンコンと低い音がするのが特徴です。うつわの底を見ると、素地が露出しているため、白い磁器と色のついた陶器とを簡単に見分けることができます。また、陶器は吸水性がある一方で、磁器には吸水性がありません。日本の陶器は8世紀頃からの長い歴史を持ちますが、日本の磁器は17世紀に佐賀県の有田で作られたのが初めてです。

朝鮮から伝来した磁器

日本で最古の歴史を持つ磁器である有田焼は、もともとは朝鮮から伝来したものです。17世紀初頭に、朝鮮陶工の李参平らが有田町の泉山で陶石を発掘したことで、磁器作りが開始されました。その後、有田では酒井田柿右衛門が赤絵の開発に成功し、独特の乳白色の素地に描かれた赤絵の作品は、欧州にまで広まりました。ドイツの窯元であるマイセンは、この柿右衛門様式を模したと言われています。2016年には、有田焼が400周年を迎え、パリやミラノなどで大規模な展示を催し、日本の磁器の美しさを改めて世界に伝えました。

写真:有田にある泉山磁石場 (国指定史跡)

釉薬の景色が美しい陶器

陶器は、陶土で作られたものに釉薬をかけたもののことを言います。釉薬は、「ゆうやく」もしくは「うわぐすり」と言い、ガラス質の膜のことを言います。陶器は、土そのものは吸水性があるため、そのままでは水をすぐに吸収してしまいますが、釉薬をかけることで耐水性を高め、多様につかうことができるようになります。釉薬は様々な種類があり、土と釉薬の選び方や釉薬の掛け方によって、独特の表情が生まれます。この釉薬がかかった表情は、「景色」と呼ばれ、うつわ好きな方にとって、美的な楽しみの一つになっています。抹茶碗として有名な楽焼、萩焼、唐津焼はいずれも陶器であり、それらの景色は、日本の美意識を映し出したものであると言えます。

写真:萩焼の抹茶碗(田原崇雄作)

窯変が魅力の焼き締め

須恵器を起源とする炻器は、釉薬をかけずに焼き締めるもので、「焼き締め」とも呼ばれます。土と炎によって生み出される焼き締めは、窯の中で表情が変化する「窯変」が魅力の一つです。窯変は、予測し得ない未知の魅力があり、同じものを複製することを基本とする大量生産品の多い現代では、希少だとして、国内外で人気が高まってきています。日本では、常滑焼、備前焼、信楽焼などが炻器として知られていますが、いずれも六古窯(ろっこよう)と呼ばれる日本最古の産地の一つであり、伝統的なものづくりが継承されています。

写真:備前焼の徳利(藤田祥作)

やきもののお手入れ方法

磁器は強度もあり、吸水性もないため、細かい手入れは不要ですが、赤や金銀の上絵と呼ばれる装飾が施されているものは、電子レンジでの使用ができません。陶器は釉薬をかけているものの、吸水性があるため、使ったあとに、そのまま放置しておくと、臭いや染みが残ってしまいます。食事後には素早く洗い、洗ったあとには、きちんと拭いて、十分に乾かしましょう。また、陶器や焼き締めのうつわは、初めて使う際には、半日程度、米の研ぎ汁につけておくと、臭いや染みがつきにくくなります。これは目止めと呼ばれる作業ですが、面倒な場合は水につけておくだけでも大丈夫です。

まずは、ご自宅にあるうつわを「陶器」「磁器」「焼き締め」と分けてみましょう。すると、産地の違いや作り手の違いに興味がわくようになります。それぞれの違いを感じながら、工芸の世界に足を踏み入れてみてください。



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