見出し画像

暗闇では目をつぶれ。

夜道を運転しているとき、ラジオから聞こえてきたこのことば。
パーソナリティーは「よく剣道の先生がそう教えてました」と言っていた。
おそらく剣道において”極意”のようなことばなのだと思う。

たしかに、森のなかで星もみえない夜に戦うハメになったとき、敵の動きを目で追っていたのではやられてしまう。

それならいっそ目を閉じ、他の”四感”を研ぎ澄ませて戦え、ということなのだろう。

敵との対峙で目を閉じるという行為はすごい度胸が必要だ。
さらに、不利な状況で冷静に不退転の決意ができる力はとても強靭な精神だなと思う。

「ふと見える瞬間を見逃してしまうんじゃないか」
なんて考えてしまうわたしは、きっと次の一瞬で切り伏せられてしまうタイプ。

***

とても自分にはできない、と思いつつも、生きていればこの世のあらゆる負の感情と戦わざるをえない瞬間がある。

刃物の切っ先を突きつけあう戦いはなくても、24時間仕事とプライベートを繰りかえしているだけで、自分が抱く負の感情との戦いはまいにちのようにある。

不安、迷い、絶望、焦り。
誰かに傷つけられたり、誰かを傷つけたり。
心が張り詰めたり、失敗を後悔したり。
生きる意味を見いだせないなかったり。

「あー、キツ・・・」
と思うときの心の中は闇だ。もうまっくら闇。

こうなると、視界はとうぜん狭い。
かんがえも呼吸も浅くなる。ろくな判断や行動をしない。
人と話せば、失言をして余計に闇が深くなったり。

そんなときは、3分間でいいから実際に目をつぶって自分を落ち着かせる。

焦って光を探す前に、まずは目をつぶる。
闇に覆われたときの恐怖は、なにもが見えないことだ。
だとしたら、わざわざ闇を見ておびえてやることはない。

まぶたの裏は闇じゃなくて、自分と向き合う場所。
ふかく呼吸を整えながら、雑念を落ちつかせる。

3分経って、ふたたび瞼を開けると、すこし景色が変わる。

闇と戦うというよりは、闇を払う作業か。

「暗闇では目をつぶれ」ということばは、どの時代でも冷静に生き抜くための極意のようだ。

皆さんからいただくサポートはとても励みになっています! ---いつもありがとうございます!---