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「頭の回転」が売っているなら並んででも買う。
コールセンターのQCという謎の仕事をしている。
カスタマーサポートなどに電話したとき「通話品質の向上のためこの通話は録音しています」なんてアナウンスを聞いたことはないだろうか。
いまは、だいたいのコールセンターが顧客との通話を録音している。
その録音を聞いて、オペレーターに対しあーだこーだアドバイスをしているのがわたし。
オフィスでデスクに座り、イヤホンをしながらひたすら聴く。
聴いた通話内容に対し、アドバイスをExcelに打ち込む。
この作業をひとりで黙々とやっていると、たまに同僚や上司が「なに聴いているの?」とコミュニケーションをとりにきてくれる。
それがもし4〜50代の上司であれば「サザンです」と答えたりする。
すると上司が「あ、オレはホテル・パシフィックが好きだな」と粋な返しをくれたり。
30代の男性社員であれば「湘南乃風」と答えたりする。
「あ、睡蓮花すか?」なんてこれまた粋な返しをくれたり。
悶々と顧客と受付のやりとりに聴きふけるこの仕事も、こんなおふざけの瞬間にふっと救われたりする。
***
先日は、20代の女子社員が「なに聴いているんですか?」とやってきた。
久しぶりにこの年齢層に聞かれたので、一瞬「あ・・・う・・・」と悩んでしまった。
いつもどおり答えを返そうとするが、
「(いま流行りのだれでも分かるやつ・・・いま流行りのだれでも分かるやつ・・・)」
スッと出てこない。
やっと、0.8秒くらい後。
「BTS」
「BTS?」
その子はBTSを知らなかった。
当然だ。
このジャンルは好き嫌いが分かれる。
「あ、紅蓮華」
「ぐれんげ?」
流行り=鬼滅の刃という、おじさん丸出しのセンスで切りかえしたが、なんとこれもダメ。
たぶん、この時点でこの子は、
「BTS→なにか仕事の専門用語」
「ぐれんげ→ハ?」
という状況だろう。
だいたい、この手のおふざけに許される時間は2〜3秒がいいところ。
チャンスも、ほぼワンチャンス。
その子はウフフ、と愛想笑いをしてくれながら「通話聴くのも大変ですよねー」と去っていった。
・・・オー、ノー。
普段、通話のアドバイスでは「こんな時はこう」「この場合の切りかえしはこう!」なんてエラソーにアドバイスしているくせに、わたしの頭の回転はいつの間にこんなに老いたのだろう。
5秒後くらいに頭に浮かんだ、
「米津玄師」
「ヒゲダン」
というワード。
ああ、神様。
どこかで「頭の回転の早さ」が売っているなら、わたしは前日からテントを張って並びます。
皆さんからいただくサポートはとても励みになっています! ---いつもありがとうございます!---