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書く30分と、読む1分。

4月、ということで企業では新人研修の季節。

かくいうわたしも、研修の講師として山口県までご出張。わが社では、新人研修は1ヶ月間だ。お互いおっかなびっくりだった初日がつい昨日の出来事のようだが、はやいもので残すところあと数日となった。

はじめは、全員が他人のお宅にお邪魔しているようなよそよそしさをまとっていたが、いまでは休憩時間にプライベートな会話で盛りあがる。

だいたい、人が職場というその空間に慣れ、住人となじんでいくキッカケは、直接的な業務以外の雑務だったりする。

研修のあいまに、除湿機に水を補充したり、ウォーターサーバーの水を交換したり、自分のゴミ箱を捨てるついでに先輩のゴミ箱も捨てたり、そんな日々のちいさな出来事が、自然にみんなを「ゲストからキャスト」に変えていく。

そして、わが社の研修では、1日の最後に「日報」を書いてもらっている。内容は単純で、今日の振り返りと、明日への課題。

文字数にすると500〜600文字くらい。まるで「ショートエッセイ」だ。これを手書き。時間はゆっくり1時間くらい。

もちろん、ふだん文章を書きなれていない方もいらっしゃる。そういう方は、はじめに白紙に下書きをして、整ったらレポート用紙に書き写したりしている。

この作業には好き嫌いがあってとうぜんだが、だいたいの方が、一生懸命下書きをして、丁寧な文字で作成してくれる。

慣れてくると、みなさん3〜40分くらいで仕上げられるようになる。「できましたー」と渡されるその内容は、いつどの方を読んでも「はあー、ほおー」と、読みごたえがある。

たいていの方が「わたし語彙力無くて」とか「文章力無くて」とか仰るが、こうしてnoteでまいにち読み書きするわたしが読んでも「伝わる」文章ばかりだ。

それはきっと、新人研修という特殊な世界で体感する、人それぞれの前向きな表現、不安感という「こころの動き」がつづられているからなのだと思う。いつだって文章は、ときにテクニカルな表現力よりも、素直で分かりやすいことば遣いが人の心をくすぐるときがある。

そしてわたしはいつもそれを1〜2分で読みおえる。

書いては消し、天井をみあげ、悩みながら3〜40分もかけて書きあげた文章でも、読む人は1分だ。

本格的に「書く仕事のプロ」でもない限り、なかなか他人さまが目の前で「ショートエッセイ」を書く姿は見られないだろう。

日々、あたり前のようにまわりに溢れているエッセイやコラムも、こうやって書かれているんだなあ、と思うと感慨深い。

「これはいい文章」と思ったとき、それが流水のようにサラサラと書かれたものなのか、推敲と校正を繰り返して懊悩のすえ書かれたものなのか。筆者の費やした時間を想像しながら文章を読むと、それもまたおもしろい。

そしてnoteは、ときどきそんな舞台裏を教えてくれる場所であったりもするから、やっぱりnoteは、おもしろい。

ちなみにこの記事は、1220文字、70分くらいかかりましたです。
たぶん読者の方々、きっとここまで2分程度で読み終わりましたよね。


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