『さよならですべて歌える』を読んで

 なんか最初は色々感想書こうかなーとか、日記のネタにしようかなーとか、そういったことを考えながら読んでた。けど、夢中になった。話自体は、よくある話。劣悪な家庭環境で育った音楽やってる若いヤツが女と出会って恋をして、そんで女が病にかかってその女のために男が曲を作って。
 でも、そんな話でも、言葉で飾りつけるだけで、感情をぶつけるだけでこんなに大きくなるんだなって。物書きとして負けた。そもそも勝負にすらなっていないけど。もらい事故を食らった気分だ。
 この本の感想すら僕は言葉にできない。でもとにかく読んで欲しい。話の内容もそうだけど、言葉がとにかく綺麗で。
 言葉は魔法じゃない。だけど、言葉を使うと人は魔法使いになれるのかもしれない。
 成人してから読んだ本、いや、もしかしたら今まで読んだ本の中で一番感情を揺さぶられた。有名な作家の本を沢山読んできたけど、どれよりも突きつけられた。
 初めはやり切れない感、田舎の燻り方、どれもリアルで。子供の無力感や大人の怖さが、嫌なほど思い出された。そんな中で出された
『枝をトントンと、二回道の表面にぶつける。
いつか折れることを期待している。』
この一節が僕を夢中にさせた。
 恋も音楽も生活も、もしかしたら

 『すべてさよならで歌える』

 のかもしれない。

さよならですべて歌える (集英社文庫)

 全然PRとかじゃなく。読んで欲しい。この本、僕は友人に贈って貰ったけど、今なら、その時の友人の気持ちがわかる。


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