【短篇】水族館の廃墟
やがて森に埋もれてしまいそうな錆びついた階段を降りて、落ち葉で覆われたけもの道のような石畳を踏み歩くと、木と木の間、狭い湾を隔てた向こう側にその建物は見える。空と、空の光を反射した海から眩しい日射しが差し込むときでさえ周囲は薄暗く、鳥や虫の鳴き声がしてもそれらはすぐに鼓膜を突き刺す静けさの一部になった。建物の壁面の青い塗料は剥がれ落ち、ところどころひび割れたコンクリートは中の鉄筋をさらけ出していて、すりガラスの窓は内側から汚れてくすんだ色をしていた。近づけば近づくほど目に入