【Podcast】#5 「涙の価値」
『幸せな人しかたどり着けない場所』の第5回では、わたくし、秕目の提案で、「涙の価値」について語り合いました。
さて、何の話をしたのだったか。
終盤、3人の間に、涙を流す前触れのような、静かな昂奮が残っていたことだけは、何となく覚えています(本当?)。
ぜひ、ポッドキャストを聞いていただきたいのですが、せっかく言葉を残す余白が生まれたので、紹介文を書いてみます。ポエム、ポエム……。今は外が暗い、少し特別で、感傷的な深夜です。書いた内容に後悔しそうな気もしています。
💧
価値の言葉が、冷たく響いている。
カチ、カチと定常を進行する、時計の針のような。
この本は、読む価値がある。
本を読む、価値があるのか/ないのか、峻別する義務がある、突き放す物言い。相手に意図がなくとも、ふとしたら、感情が緩徐に刺されている。その、棘のように体へ残る感覚だ。
相手にとって価値は違う、自分にとっても違う?
だから、それが?
互いに共有できる、いつかしたいね。
想うのは、一見、素敵だけれど。
見ていない。与り知らない何処かで、第三者が第三者に下した価値が、押し売りされている。
せめて自分が。自分なりに価値を知れたなら。
相手と対等に話せればと願う、心が叫ぶ。
失望に近い微睡みが、私たちを襲う?
価値の言葉を、衒いなく使う。
カチ、カチと毅然を進行する、意思表明。
人生を旅する。
有耶無耶を体験をしたい、自由でいたい!
あらゆる余地を生きたい!
そう、価値を放つのは可能だろうか?
いつか、変な人と会うだろう。いつか、本を乱読するだろう。
いつか、見た映画のタイトルは分からない。
時を過ぎると、やはりどれも素敵だけれど、
またある時を過ぎると、どれも物足りない。
一方、そして、だからこそ、同じように、
命は、価値の所在を見定め、選択し、集中する。
その、厳しさの認識が、私たちを生かしつつもある。
息をし、長らえるために?
金、物、愛なのか。
かくして価値が、眼前にまろび出るためなのか。
涙の心の、足場のない。
媒介物。そう、分かちがたく捉えられる言葉。
というか、感情そのもの!
感情表現そのもの!
私に満ちる価値と、食い合うか。
眼前で、誰か泣いている。
自分も、泣いている?
終りに泣いたか、記憶もない遠く、
泣かなかったか。
重ねた歳は忌避される、ああ、心に過剰だと忌避される。
血走った眼。
かつて幼い恥ずかしさは、悔しくて腫れそうだった。
行動で涙した、淡泊で熱い、
涙は、もう出ない?
息を引くのは、止んできた?
大人になり、何か学ぶ。大人らしき、感情を統制する。
混沌に、価値がまろび出ている。
どこへ?
私を。濡らすまで。
どこへ?
(秕目)
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