【詩】光る雨粒の夜



『光る雨粒の夜』



連続してない雨粒が、一つ、一つ落ちる

「手を繋いでいることのむずかしいさよ」

カフェの端のテレビは

絶えずぼうりょくの話をしている

葉がひらり、ひらりとして

ゆっくりと舞う、その色を

じっと見つめていたのは

いつの季節だった



連続していない雨粒の、濡らす夜が

きら、きらとして光っている

幹線道路を走るテールライトの

浮遊する円盤たちが遠ざかっていく



手を繋いだ二人が、二人ずつ

あかるい真夜中を歩いていて

同じタイミングで笑った



知っている?

映画が詩なのではない、映画館が詩なのだ

しかし、それを取り違えることも、それもまた詩なのだ



雨粒が連続していない透明な夜ほど

孤独が浮遊して

まるで一人ではないみたいに

思える夜は、ない



こつ、こつ、こつと

階段に触れる足音は、等間隔の

「手を繋いでいることのむずかしいさよ」

光を濡らす透明な雨粒たちと

そしてその真夜中は小さな革命だった

さみしくなるのは

そうした、幻のうしろすがた



いい夜だった、と呟いて

昼間みたいな改札の向こうで

ばいばい、と振られた手の

黄色くなった白シャツの袖が

揺れるのを見ていた








アキ・カウリスマキ「枯れ葉」によせて


(けむり)










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