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マークの大冒険 TRUE END | ささやかなる目覚め
古書店アレクサンドリア______。
「おかえり」
マークはウェスタにそう声をかけた。旅を終えたマークの目の前には、ウェスタの姿があった。水晶の中で眠る彼女ではなく、微笑を浮かべこちらを見ている、あの頃と同じ彼女がいた。
「あなたなら、必ずここまで辿り着けると思ってた」
「夢じゃない?」
マークが不安げにそう言うと、ウェスタは彼の頬に軽くキスした。急な出来事にマークは言葉失い、頬を染めて放心していた。そして、ウェスタの髪がブロンドから黒色に変わっていく。
「やっとお目覚め?現実逃避さん。夢の旅を通して、少しは自分を取り戻せたかしら?おかえりを言われるのは、本当はあなたの方なのだけどね。私はずっと、ここいたのだから」
ウェスタがいたずらな表情でそう言うと、彼女の視線の先には涙ぼくろが印象的な一人の青年が立っていた。
「キミは......」
「女神が人に恋すると、能力と役目を失い人間になってしまう」
「ニーベルングのブリュンヒルデ?」
「そういう話もあったかもね」
「行こう!」
青年は彼女の瞳を真っ直ぐ見据えると、その手を取り、走り出した。
「ちょっと!行くってどこに?」
困惑する彼女にお構いなしに、青年は古書店の扉を勢いよく開いた 。
「さあね!でも、ここじゃない場所に!ボクらの本当の冒険はこれからでしょ?」
そう言って彼らは古書店を飛び出すと、街を駆け抜けていった。
「それと、ひとつ訂正しなきゃいけないことがある」
「何?」
「ボクはキミが好き"だった"は訂正。ボクはキミが好きだ!」
空から走っていく二人の姿が見える。その姿は次第に遠く、小さくなっていく。一面には青空が広がり、巨大な白い入道雲が二人をまるで見守るかのようにゆっくりと流れていた。
END
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