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アンティークコインの世界

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前7世紀に世界で初めて金属製の円形コインがリディア(現在のトルコに位置した古都)で発行された。物々交換の効率の悪さから解放され、小さく軽く携帯しやすいコインによって人間はさらに商…
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Antique Coins World | British Medals Collection

今回は表題の通り、イギリスのメダルを紹介する。イギリスのメダルはどれをとっても一級品だが、中でも筆者の目をひときわ惹いた一枚を取り挙げる。 ヴィクトリア朝イギリスで1854年に発行されたホワイト・メタル製メダル。1854年のクリスタル・パレス(水晶宮)の移設を記念したものである。本作はアメリカの貨幣鑑定機関NGC社から世界最高鑑定の評価を受けている。現存する同タイプの個体の中で、最も保存状態が良いことになる。 表側にはクリスタル・パレスの扉を開くブリタニア女神が描かれてい

ダイアナ妃の記憶 | 王室に立ち向かった英国プリンセス

英国ダイアナ妃。その美しい容貌と慈愛に満ちた精神、そして若過ぎる死は世界中の人々に鮮明に記憶された。英国の名門貴族スペンサー家の令嬢として生まれ、英国王室に嫁いだプリンセス。世界で最も写真を撮られた女性。それだけ聞けば、誰もが羨むような経歴だが、実際の彼女の心は常に孤独だった。今回は、そんなダイアナの人生を追いながら、生きるヒントを探していきたい。 ダイアナはメディアを利用して英国王室にたった一人で立ち向かった勇気のある女性だった。だが、英国王室はダイアナに名誉と威厳を傷つ

アンティークコインの世界 | 神聖ローマ帝国 都市景観 ターレル銀貨

今回は表題の通り、神聖ローマ帝国で発行された都市景観を描いたらターレル銀貨を紹介していく。現ドイツの都市アウグスブルクで発行された一枚で、17世紀当時のアウグスブルクの街並みを写した傑作である。それでは、早速観ていこう。 神聖ローマ帝国アウグスブルクで1639年に発行されたターレル銀貨。フェルディナント3世の肖像とアウグスブルクの都市景観を描いている。都市景観側の中央に描かれた松ぼっくりは、アウグスブルクの都市紋章で豊穣と繁栄を象徴している。三十年戦争の真っ只中、当時の街並

フランス革命のその後 | 繰り返す革命と人々の記憶

今回は、1789年に勃発したフランス革命のその後に焦点を当て、当時の歴史を追っていく。時はフランス革命が収束し、ブルボン家が再び王座に舞い戻ったルイ18世の治世から始めよう。オーティエという人物の回想録から、フランス革命後のフランスの情勢が詳しく窺える。以下、オーティエの回想録を元に当時の出来事を述べていく。 王室の髪結いオーティエが記した回想録からは、ブルボン家の人々がいかに横柄で薄情だったかが窺える。もちろん、回想録は筆者の主観が入り過ぎることと、オーティエ自身が盛癖の

アンティークコインの世界 | 古代コインのカウンターマーク

表題の通り、今回はカウンターマークが打たれた古代コインを紹介する。カウンターマークとは、新たなコインを発行する余裕がない混乱期及び緊急時に行われる手段のひとつで、既に流通している他国のコインに自国の刻印を打って利用したり、自国のコインの額面を変更して再使用した。カウンターマークの歴史は古く、その源流は古代にまで遡る。今回はパンフィリア地方のシデで発行され、ペルガモン王国でカウンターマークが打たれたものを紹介する。 カウンターマーク入りの稀少な古代コイン。矢筒を表したカウンタ

アンティークコインの世界 | 王妃フィリスティスの銀貨

今回は、シチリア島シラクサで発行された王妃フィリスティスの銀貨を紹介する。シラクサは、古代ギリシアの中で屈指の名品コインを生み出した地域として知られている。精霊アレトゥーサの銀貨などが著名である。 シチリア島シラクサで、前240〜前214年まで発行された16リトラ銀貨。アッティカ式のドラクマと異なり、リトラという独自の単位が用いられていた。本貨は16リトラで、量目は12.98グラム。英表記のLitrai(リトライ)はリトラの複数形である。日本では慣習的に複数形にせず原形のま

アンティークコインの世界 | ローマ建国神話 裏切りのタルペイア

今回は、ローマ建国神話に登場する裏切りのタルペイアという巫女を題材としたデナリウス銀貨を紹介していく。最初に少しだけ神話の簡単な背景を述べておく。古代ローマのウェスタの巫女は、王政期からその存在が確認される伝統ある役職だった。役職の期間中は、交際も結婚も許されなかった。女神ウェスタへの忠誠を誓うためである。制約があるものの、様々な特権も付与された。だが、規律を破った場合は死罪を宣告された。 アウグストゥスの治世初期に発行されたデナリウス銀貨。帝政移行間もない時期のため、トゥ

アンティークコインの世界 | 魅惑のレインボートーン

表題の通り、美しいレインボートーンが現れたコインを紹介していく。レインボートーンは、いつの時代も愛好家たちを魅了してきた。今回は古代と近代の銀貨で美しいトーンが乗ったものを眺めていく。それでは、まずは古代から年代順に追っていこう。 共和政ローマで発行されたデナリウス銀貨。狩猟の女神ディアナと彼女の猟犬が描かれている。美麗なレインボートーンが乗っており、観ていて魅了される一枚。デナリウス銀貨にはこうした虹のようなトーンが乗りづらい傾向にあるため、珍しい個体と言える。UNC状態

セレスタン・ギタールの日記から探るフランス革命期の貨幣事情

ルイ16世が処刑された1793年1月21日は、気温は3℃で天候は曇り空の湿った日だった。これはギタールという名の一般市民がつけていた日記から得られる情報である。フランス史には取り挙げられることのない些細な情報だが、気温や天候から空気感のようなものが伝わり、当時の情景がより鮮明に想像できる。 当時の人間が記した日記は、自分がそこにいたかのような感覚にさせてくれる。肌寒くどんよりと曇った空の下、ルイ16世はこの世を去った。そうだったのか。そんなこと、教科書のどこにも書いてなかっ

アンティークコインの世界 | ドイツ第三帝国ナチ政権下の貨幣・勲章・メダル・バッジ

ドイツ第三帝国ナチ政権下の歴史は、極めてデリケートな内容として扱われる。今回は学術研究を目的とした中立的な立場から述べ、彼らのいかなる思想も支持しないことを先に明記しておく。第二次世界大戦時に軍事同盟を結んでいた日本にとって、ナチ政権の行いは他人事ではなく、彼らの歴史について学ぶこと重要である。 ナチ政権下での貨幣・勲章・メダル・バッジは非常に人気が高く、コレクターの間では高額で取引されている。敗戦後にその多くが溶解され、処分を免れたものが僅かである背景からコレクターを狙っ

『ハリー・ポッター』の世界の魔法通貨について | 英国魔法界の貨幣単位

今回は、J.K.ローリングによる『ハリー・ポッター』の作中に登場する魔法通貨を紹介していく。 英国魔法界の貨幣単位は、ガリオン、シックル、クヌートの3種から成る。また、魔法界でも英国以外の地域では異なる通貨が使われているようである。作中では、ガリオンは金貨、シックルは銀貨、クヌートは銅貨と言及されており、それぞれに異なる神獣が描かれている。金銀銅を貨幣素材の基本としているのは、現実世界と共通している。 貨幣単位の原作の英表記は、下記の通りである。 Galleon(ガリオ

アンティークコインの世界|王位請求者アンリ5世の5フラン試鋳貨

今回は表題の通り、フランス革命期の動乱に巻き込まれ、王位継承者として担ぎ上げられたブルボン家の少年アンリ5世ことアンリ=ダルトワの5フラン銀貨、そして、彼の生い立ちについて紹介していく。 フランスで1831年に発行されたアンリ5世の5フラン銀貨。シャルル10世の退位後、超王党派はその孫アンリ=ダルトワを擁立し、アンリ5世と呼んだ。本貨は、超王党派のメンバーによって王位請求及びアンリ5世の宣伝を目的に造られた幻の試鋳貨である。だが、王位はオルレアン家のルイ=フィリップに簒奪さ

アンティークコインマニアックス コインで辿るフランス革命史

今回は、フランス革命期を中心にその前後に発行されたアンティークコインを眺めていく。実際に使われていたフランス本土発行の大型銀貨を主軸に、当時のフランスの歴史背景を紐解いていく。 近代フランスにおいて何と言っても大きな出来事は、やはりフランス革命だろう。フランス革命はフランス国内のみならず、世界中に多大な影響を与えていった。現在、日本で使われているメートル法もフランス革命の時代にフランスで考案されたもので、私たち日本人も彼らの影響とその恩恵を多いに受けている。そう考えると、時

アンティークコインの世界 | 大阪・造幣博物館の名品〜

今回は、造幣博物館に展示されている貨幣を紹介していく。当館では日本の江戸・明治時代を中心とした稀少な貨幣を展示・収蔵する他、諸外国の貨幣も展示されており、大変充実した内容になっている。尚、館内の展示品は一部が撮影可能となっている。そのため、ありがたいことに貴重な画像サンプルを入手することができる上、こうして紹介することも叶った。 造幣局・造幣博物館正門 造幣博物館は、大阪造幣局に併設されている。大阪造幣局は、これまでに数多くの貨幣を発行してきたことで知られる。日本の貨幣はも