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2022年9月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_72_30代編 02
三月の割に気温が高いせいで、施設の周りに植えられていた桜はすでに満開だった。空は嫌味なくらいに青くて高くて、雲が少なくて、太陽が輝いている。
施設を訪問する前に撮影OKの許可を取り付けた。
さらには入居者の何人かは、僕の動画に出ることを快く快諾してくれた。
なにせこの施設は山中崎にあり、入居者のほとんども山中崎の住民。山中崎で杉藤の名前を出したら、全面的に協力するのが山中崎の住む人々の共
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_73_30代編 03
五代くんと別れて家路につく僕は、混沌とした頭をなんとか整理しようと試みるも、気を抜いた瞬間に祥子さんの死に顔がちらついて、その場で声を上げたいような走り出したくなるような、いますぐ誰かに縋りつきたくなるような様々な感情の渦に襲われた。
理性的な解決よりも、感情に任せた報復を望む内なる声が、舞い上がる夜風と一緒に僕を唆しかかって、どこからか聞こえる発情した猫の声と興奮した犬の声が神経を逆立てる
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_74_30代編 04
「ふ……ッ!」
ざけんなっ!
という言葉のかわりにこみ上げてくるものがあった。
女の子に間違えられた。それだけの理由で、僕は一方的に暴力を受け、理不尽と惨めさを被り、全身全霊をかけて整えた顔を半壊させられたというのかっ!
どれだけの整形手術と、術後の苦痛を乗り越えてきたか。
どれだけこの顔の骨をけずり、皮膚を切り裂いてきたか。
肝臓や腎臓やら体中の臓器を壊す覚悟で、ホルモンバラン
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_75_30代編 05
数日後、自宅アパートにて。
「杉藤……すまない、すまない」
「もういいよ。五代くん」
僕を見て痛ましそうな顔を作る五代くんに、僕は彼の不安を少しでも和らげようと微笑みかけたけど、今の僕の顔は包帯に覆われているのを忘れていた。なんだかマスクで生活していた頃に戻ったみたいだ。
気持ちをすぐに伝えることができない、伝わることができない不便さに胸の奥にざらついた感触が広がる。
もう、あの頃に