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【完結】【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい

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杉藤 俊雄 は××したい を加筆修正して1本化しました。 アーカイブと混同して ややこしいかもしれませんが、ご容赦していただければ幸いです。 エブリスタでマルチ投稿しています。 …
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2021年12月の記事一覧

【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_33_現代編 03

【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_33_現代編 03

202×年6月 日本

 懐かしい夢を見た。

 福田 エリコは、未だぼやけた視界の中で夢の残滓に手を伸ばそうとする。夢の中で自分に伸ばされた白い手だ。だが、掴もうとしても、意味がないことを知っている。だって、彼女はもう、この世にいない。

 それが分かっているのに、手を伸ばさずにはいられなかったのは、彼女の本当の望みが叶っていないことを知っているから。

『1999年が来るよりも早く、いま、この

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【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_34_閑話 02

【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_34_閑話 02

 1969年。中学に入って早々、親元から離れて学生寮で同級生と生活することを選択した福田は、早くも後悔していた。

 カルチャーギャップ。そんな言葉が脳裡によぎり、図書館で借りた三島由紀夫の書籍をお守り代わりに、麗しい美貌のルームメイトに視線をむける。杉藤 貴子は興味深そうに福田が読んでいる本を見て、そして神がその手で形作った二重の瞳を瞬かせた。

 男子寮は個室だと聞いていたが、女子寮は二人で一

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【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_35_高校生編 01

【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_35_高校生編 01

 あぁ、大変だった。

 まさか男子寮が二回も放火されるとは思わなかったし、渦中の人物二人がこの事件で命を落とした。裏でなにがおきていたのか分からないし、僕はそんなことに興味はない。

 ただ、放火されたことをうまく利用して、僕たちが廃人に追い詰めたあの二人を実家に帰すことが出来たのは、なんだか話が出来すぎている気がする。

 大人の僕は思い出す。あの時の僕たちは、なんだか誰かが作った、暗い道を歩

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【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_36_高校生編 02

【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_36_高校生編 02

 やり切った僕の美しい顔。飛び散った血で汚してしまった鏡台をのぞき込んで、僕は天使の美貌でニコリと笑いかける。

 これは大人の僕の話。様々なものを手に入れて、様々なものを壊されて、様々なものを穢されて、様々なものを弄ばれて、様々なものを手放して、様々なものを捨てていった結果の果て。

 人のせいにするなと、人は良く言うけど、本当は分かっているんだろ?

 誰かがいるから問題が起きて、罪が発生する

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