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日が沈み意味が昇る

私の生きる意味は このコーヒーを注ぐ一瞬にのみ発揮される

もし私が珈琲を注ぐタイミングを間違えようものなら この世界に必要のない人物になる

でも私は幸せ者なのかもしれない。
なぜなら生きる意味があるから

このコーヒーを注ぐこの瞬間 私は誰よりも誇らしい私になれる

それはそうだ。私はこのコーヒーを作るという工程のために今まで生きてきたからだ。

もしも私がパソコンをカチカチする作業や
誰かに何かを教えようとしたならば
私の価値はそこら辺の石ころにも及ばないだろう

さて、ここで私は 「なぜコーヒーを作るようになったのか」の話をしよう

そうだな。話すと長くなるから簡潔に

その他のことに私の価値。意味を見いだせなかったからだ。

なにをやっても上手くいかない私は
ある日 とあるビルの屋上に居た。
もうあと一歩だったのだ。

私の元々価値の無い人生に
本当に価値がなかったのか答え合わせが出来る瞬間を逃してしまった。

そんな大罪人である男はこう言った。

珈琲を飲みに行こう。

この白しげと白髪の似合う大罪人は
私の手を取って、珈琲屋に連れていった。

いい香りだ。

差し出されたのは一杯の珈琲と硬めのプリン。

私はその珈琲に酷く感動した。

そこにあったのは 私の探してる生きる意味でも価値でもない。

ゆらゆら揺れる白い湯気と
プリンのカラメルの光沢を少し眺めてこう言った

「これなんですか?」

「そうだな……幸せかな」

「そうですか」

そこにあったのは幸せらしい。
私は今まで生きてきて
こんな幸せ見た事ないとそう考えた。

違った。

忘れていたのだ

あの子どもの頃に見つけた四つ葉のクローバーは
私にとって幸せであって 価値でもあり 私の意味でもあった。

大人になるにつれ 私はそんな小さな幸せや価値、意味を見つけられず

見つかるはずもない大きなそれに盲目になっていた。

でもそれは

「思い込みだ すべてそれで完成する」

「いいや、感性じゃないかな」

ならマスター。

「私に珈琲を作らせてくれないか?」

初めて作ったその珈琲はお世辞にも美味いとは言えない
荒い仕上がりだった。

「ハッハッハ。いいじゃないか。これは君だよ。いい味をしている。私は好きだな もちろん、これから磨いていく工程も私は楽しみだ」

呆気なかった。
私の生きる意味も価値も幸せも
答えはただ1つ

誰かに認められたいだった。

その為に私は磨いた。
ただ珈琲を作るだけじゃない

誰かと沢山話した。
旅行に行った。
動物と触れ合った。

感性を磨いた。

今の私には自信がある。価値がある。経験がある。

そしてその先に

「ぷはぁ……やっぱ美味いよ。いつもありがとう」


幸せがある


日が沈み初めて
ようやく人は昨日の有難みを感じられる


日が沈み初めて意味が昇る

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