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ナラ子の愛情はヒートアップ!『ぼくはきらわれたい』他/ウメ星デンカとナラ子の場合④

「ウメ星デンカ」の少し(かなり)マイナーなキャラクター、ナラ子。奈良漬けからネーミングされたこの女の子は、デンカたちの従者ベニショーガの娘である。

父親とは離れて母親と別の星(プリキシマ星)に住んでおり、時々地球にやってきては、ひと騒動を繰り返す。


外見は、前髪ぱっつんのおかっぱで、目はパッチリ、口はいつも逆への字口。背丈はデンカより若干高いくらい。服装は貴族っぽいシャツに★柄のスカート姿が定番である。

性格はとにかく暴れん坊で、おてんばとかそういう次元ではない。太郎の世界のガキ大将フグ田を簡単に泣かしてしまうし、デンカたち王族に対しても容赦なくいたずらを仕掛けてくる。

自分のことを「ぼく」と言うなど、言葉遣いは基本的に男の子口調。「やれ」というとやらず、「だったらやるな」と反応するとやりだす、典型的な天邪鬼な性分で、とにもかくにも我が道を行く強烈キャラなのである。


特にデンカに対しては、付き纏うように近づいてきて、デンカの嫌がる言動を繰り返す。デンカはそんなナラ子に辟易としており、なるべくなら関わりたくないと思っている。

ところがある時、ナラ子はデンカのことが大好きなので、好きゆえに意地悪をしたくなってしまうということを吐露してしまう。デンカはこの発言を陰で聞いていたのだが、「そんなのあるかい」と思わず突っ込む。

デンカはまだ10才と幼く、ナラ子の少しひねくれた愛情表現をさっぱり理解できないのである。


・・・と、そんなナラ子とデンカの恋愛(?)エピソードを、これまで3本の記事で紹介してきた。本稿では、ナラ子がデンカを好きだということが公然となったあとのお話を二つ見ていきたい。

その前に、時間に余裕のある読者様は、下記の記事をどうぞ先にご一読下さい。


『デートなされませ』
「週刊少年サンデー」1696年27号/大全集3巻

このお話を語る上で忘れてはならないキャラクターが、侍従ロボットのゴンスケである。

ゴンスケは「21エモン」でお金に細かい芋掘りロボットとして、毒気をばら撒いていた強烈なキャラクターであるが、藤子先生のお気に入りだったようで、「ウメ星デンカ」でも登場させている。

「ウメ星デンカ」では芋掘りという要素は抜けているが、お金が大好きなのと計算が得意という点や、性格や素行の悪さは「21エモン」から引き継いでいる。

そしてこちらのゴンスケは、なぜか太郎の友だちであるみよちゃんのことを好きになってしまい、一直線な愛情表現を繰り返す。その様は本作中でも「バカの一つ覚え」などと評されている。


本作では、ナラ子とゴンスケという強烈コンビが、それぞれデンカとみよちゃんを誘って公園デートをすることになるというお話である。

展開は、いつもナラ子とゴンスケに振り回されている王様や王妃の心身を休めさせるため、ベニショーガが裏で糸を引いて、ナラ子とゴンスケをデートに外出させ、そのまますぐに二人を帰らせないように奮闘するというもの。

このお話の中で、ナラ子の部分だけ抽出すると、まずデンカにボーリング玉でのキャッチボールを強要し、ボコボコにしてしまう。この後、ベニショーガの策略により、デンカがナラ子を誘う形で、デートをする羽目に。

ナラ子は「静かな公園のベンチで二人っきりでしみじみ語り合いたい」と、デンカが言っているとして、デンカを引きずるようにして公園へと向かう。デンカは早く帰りたいがために公園を走り回るのだが、その辺で落ち着いて話そうよと、ナラ子の超能力で捕まえられてしまう。

なんやかんやあってベンチに座る二人だが、しみじみ語るようなネタはなく、二人には気まずい沈黙が流れる。ナラ子に「男性がリードするもの」とせっつかれ、困ったデンカはベニショーガを頼る。

ベニショーガは他のデートをしている男女の会話を盗み聞いて、「愛よ永遠に」という映画の話題をしたらどうかと提案。デンカはさっそくナラ子に「愛よ永遠にという映画見た?」と話題を振ると、「見てないわ」と言う答え。デンカも釣られて「僕も」と返してしまい、再び長い沈黙へ・・・。


ナラ子とデンカのデートと並行して、ゴンスケとみよちゃんも公園のベンチで気まずい時間を過ごしており、こちらもベニショーガがサポートに入っている。ベニショーガは、ナラ子とゴンスケをなるべく公園に引き留めて、家での王様たちを少しでもゆっくりさせたいという狙いがあるのだ。

結局、二組の会話は盛り上がらないので、ベニショーガが二組相手に昔話を語り始めることになるというラストとなっている。


本作の見所としては、『ナラ子もやっぱり女の子』でナラ子がデンカを好きだと告白したことを踏まえて、ベニショーガが「ナラ子はデンカが好きだから」と二人をデートさせようとする場面だろうか。

さらには、「我慢して付き合ってやらあ」と憎まれ口を叩きながらも、ゴンスケに嬉しそうに「デンカとデート」と自慢するシーンなども、ほっこりするところである。



『ぼくはきらわれたい』
「週刊少年サンデー」1696年32号/大全集3巻

デンカが好きだということを隠してきたナラ子だったが、カミングアウトしてからは、愛情表現はさらに進化を遂げ、遠慮が無くなっていく。

本作も、基本的な構造はナラ子→デンカ、ゴンスケ→みよちゃんの一方通行かつ、迷惑千万な恋愛模様が並行して描かれていく。『デートなされませ』と同様の流れである。


本作始まってすぐに、ナラ子は「ぼくはデンカがかわいくてしようがないんだ」とゴンスケに語っている。「変わった趣味だな」などと言われながらも「デンカのためならなんでもしてやる、うんとかわいがってやるんだ」と決意を述べる。

さらには「世界一の幸せ者にしてやる」とまで豪語し、ゴンスケは「これぞ誠の愛だ」と感銘を受けて、「オラもやるぞ」とみよちゃんのご機嫌取りを開始することになる。


その後ナラ子は、デンカがくしゃみをするとチリ紙を無理やり鼻に押し付けたり、二階の窓から弾みで突き落としたりと、「余計なお世話」を繰り返す。しかしナラ子からすると、「だいぶデンカを幸せにしたよ」という認識である。

デンカは太郎に「何とかしてよ」と相談すると、意図して嫌われればいいとアドバイスを受ける。体中を泥で汚し、言葉も乱暴に、態度はだらしなくせよと具体的な助言。

ところが、一度好きになった人はどうなったとしても好意的に見えてしまうもので、「ちょっとニヒルでいいじゃない」「デンカはどんな格好しても素敵ね」とベタ褒めされてしまう。

さらには「いい加減にしろ!!僕はしつっこいのが大嫌いだ!!」とデンカがマジ切れするのだが、ナラ子は逆に「素敵!!」と反応し、「デンカにそんな強い面があったなんて見直したわ!!」と何だか尊敬までされてしまうのであった。


デンカに対して好きだからこそ逆にいたずらしてしまうという精神構造だったナラ子だが、登場するごとに直接的な愛情表現を口にするようになり、最終的には尊敬までしてしまう。デンカはすっかり惚れられてしまったのだ。

デンカは相変わらず、ナラ子に付き纏われるのが嫌で嫌で仕方がないわけだが、この勢いが続けば、どこまでグラッと来てしまうかも知れない。


本作を最後にナラ子は姿を消し、そのまま「ウメ星デンカ」は最終回を迎えてしまう。ナラ子がデンカと結ばれるかは謎だが、何せデンカの父親である国王が王妃と婚約したのは8才の時で、現在10才のデンカよりも年下だった。すぐに二人が婚約、結婚となってもおかしくはないのである。

以上、ナラ子のお話に記事4本もお付き合いいただきまして、感謝申し上げます。



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