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東京オリンピックの影響か?『U子の柔一代』/ YAWARA!U子③

オバQ世界のアイドル(?)U子さんの初登場から、柔道との運命的な出会い、そして柔の道を究めんとするエピソードを追いかけていこうという企画「YAWARA!U子」の第三弾。

これまでの記事はこちら。

前稿で紹介した『U子ちゃんの芸術指導』のラストで柔道の稽古を始めて、さっそくQ太郎を練習台にして投げ飛ばしてしまう。


本稿ではいよいよ柔の道にのめり込んでいくU子を描いたお話を見ていく。

『U子の柔一代』
「小学六年生」1966年8月号/大全集11巻

本作はU子さんの4回目の登場作。

3回目の登場作は、記事にしなかったが、『あっちこっちハイキング』という作品で、正ちゃんQちゃんと、よっちゃんU子さんのダブルデートハイキングを計画し、それをドロンパとゴジラに邪魔されるというお話であった。


それから3カ月ぶりにU子さんが登場するということで、冒頭、Qちゃんが「U子ちゃん、久しぶりだね」と挨拶するところから始まっている。

U子はQちゃんに会っても喜んだりもせず、「負けると思うな思えば負けよ」と鼻唄を歌っている。

このU子が口ずさんいる歌は美空ひばりの「柔」という楽曲である。1964年の東京オリンピックで初めて柔道が正式種目となり4階級の内3回級で金メダルを獲得したが、これに合わせて、本曲は大ヒットを飛ばし、64年、65年の紅白歌合戦でも歌われた。

オバQが絶賛連載中だった64年~66年は日本全国で柔道ブームが起きた時代であり、U子さんが柔道を始めたのも時代の流れだったのかもしれない。


さて、Q太郎に話しかけられたU子さん。突然ダンスをするかのようにQちゃんに体を掴むと、デヤーと投げ飛ばしてしまう。

当然ながら「いきなり何するんだ」と怒るQちゃんに、「あらQちゃんごめんなさい」とU子。柔道の技の工夫を考えて歩いていたので、まるでQちゃんに気付いていなかったと言うのである。

そして、倒れたQちゃんの手を取るU子だったが、反射的にそのままQ太郎に巴投げを食らわせる。さらにQちゃんをおぶろうとすると、そのまま背負い投げへ。もはやこうなると歩く柔道マシーンである。


もっとも、U子は反射的に技が出てしまう自分に対して、「それだけ柔道の天分があるってことね」と前向きに捉える。

そんな時に、藤子F先生と思しきひょろっとした男性が道に立っているのを見つけたU子さん。足払いをすると簡単に倒れると想像し、実際に技を仕掛けたくてムズムズし出す。

QちゃんがそんなU子を止めようと体を掴むと、またも反射的に投げ飛ばされてしまう。Qちゃんは、そのまま飛んで逃げるのだが、U子はそれを見て「この技をミサイル投げと名付けましょう」と、まるで迷惑を掛けている意識はなさそうである。


正ちゃんに酷い目に遭ったと報告するQ太郎。「柔道は習いたての頃はやたらに投げたくなるらしい」と正ちゃんは言う。

その後、なんやかんやがあって、ボクシングが天下無敵だと言い張るドロンパとU子が一戦交えることになる。女は相手にしないと言っていたドロンパだったが、「男らしく戦いなさい」とU子に掴み掛かってこられ、コテンパンにやられてしまう。

ドロンパが倒されたと聞いて、今度は神成さんがU子に試合を申し出る。神成さんは剣道五段の腕前だと名乗るが、U子は「張り合いがあるわ」と動じない。

それどころか、木刀を振りかぶってくる神成さんをヒョイとかわして、あっと言う間に勝負を決めてしまい、神成さんは「女ながらにあっぱれ」と降参してしまう。


すっかり自分の腕力に自信をつけたU子さん。「このワザを人のために役立てたい」と意気揚々である。正ちゃんたちは「生兵法は大怪我の元」と言ってたしなめるのだが、全く聞く耳を持たない。

その後U子は見ず知らずの夫婦喧嘩に割って入り、夫をぶん投げて怪我を負わせてしまい、「プライバシーに立ち入らないで」と叱られたり、犬の喧嘩に間違って加勢してしまい逆襲にあったりと、ろくなことにならない。

さらに、通りすがりの刑事に「知り合いの悪い人を紹介しろ」などと言い出したりしたので、Qちゃんもすっかり呆れてしまう。


正ちゃんは「U子が自信を持ち過ぎている、もっと謙虚になるべきだ」と考え、「もっと強い人が現れれば、上には上がいると思い知るのではないか」と思う。

そこで、隣町に空手の干垣源五郎という師範がいるので、その人に頼んでU子さんと試合をさせようと考える。さっそくQちゃんが依頼に出向き、事情を説明すると、「その娘っ子の目ん玉くり抜いてやるぞ」と物騒なまでに盛り上がる。

干垣は一目変人で、あまり強そうに見えないのだが、妙にジャンプ力と手刀の破壊力がある強豪であった。

今度はU子に試合の件を相談に行くと、怯むことなく「ステキ!」と目を輝かせる。「相手は日本一、いや世界一強いかも知れない」とQちゃんが言うが、「じゃその人に勝てばあたしが世界一ってわけね」と大喜び。すっかり大きな自信をつけてしまっているようだ。


果たして、広い野原でU子を干垣が対峙することになる。

まず干垣からU子に「必殺の一撃」と言う手刀を食らわせようとするが、その手をU子があっさりと払う。「勘弁ならねえ」と今度は足技でU子に迫るが、これもすかされて、足の裏をくすぐられてしまう。

ところが劣勢の干垣は、一発逆転の蹴り技でU子を上空高くまで蹴り飛ばすことに成功。U子をやっつけたと思いきや、そのまま上空で態勢を立て直したU子が干垣目がけて落下。もろに体当たりして、干垣を地面に埋めてしまう。

・・・これにて勝負あり。

打ちどころが悪かったのか、「シェーイ」とイヤミのポーズを取っておかしくなってしまう干垣源五郎。U子は「これであたしは世界一よ」とガッツポーズ。どうやら余計に自信をつけてしまったようである・・・。


なおU子は本作の二カ月後のエピソード『たくましきQ太郎』にて、柔道の初段を取ったと嬉しそうにQちゃんに報告している。あれだけ強いので、すぐに二段三段と昇段していくことだろう。

順調にYAWARAの道を突き進み始めたU子なのであった。


さて、「小学六年生」だけに登場していたガールフレンドのU子だが、その後「新オバケのQ太郎」ではメイン格のキャラクターとして物語で大暴れしていく。

またQちゃんはU子さんともっと仲良くなりたいのだが、これもなかなかうまく進まない。QちゃんとU子のドタバタな恋路については、また別の特集でまとめてみたい。



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