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のび太はしずちゃんとまったり時間を過ごしたい/シリーズ・トキノナガレ②

シリーズ・トキノナガレ。前回は「キテレツ大百科」から、勉強と発明に忙しい勉三さんとキテレツが、時間の流れから脱することでゆとりの大切さに気がつく話だった。

本稿では、「ドラえもん」の中から、時間に関係するひみつ道具をダダダっと紹介していきたい。「キテレツ大百科」と逆で、時間を無駄に過ごしがちなのび太が、時間の大切さを知る話がほとんど。ただし、調子に乗って時間を操りすぎて、滅茶苦茶な終わり方となる作品も多い。

『まほうのとけい』
「小学一年生」1971年3月号/大全集3巻(単行本初収録)

まずは基本的なところから。

朝の支度に手間取っているのび太くん。時間を自由に進めたり戻したりできる「まほうのとけい」をドラえもんが出して助けてくれる。まだ初期ドラの作品のため、のび太ではなく、破天荒キャラのドラえもんがこの時計を使って、時間を行ったり来たりさせて、周囲のみんなを困らせる。

テレビで「ウラトルマン」を見ていて、これが終わってしまうのでもう一回見るために巻き戻して、ニュースとウラトルマンがごちゃごちゃになったりする。次回の記事で取り上げる『時門で長~い一日』などと同じ展開である。

「小学一年生」らしい、子供心の溢れた作品と言えるだろう。

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『ウルトラストップウォッチ』
「小学四年生」1973年9月号/大全集3巻

これも基本的な作品。

朝、宿題を忘れていたのび太に対して、ドラえもんは間に合わせるので宿題を続けるように言う。そこで出した道具『ウルトラストップウォッチ』世界中の時間を止めることができる道具で、「キテレツ大百科」の「脱時機」と同じ働きとなる。

のび太は調子に乗って時間を止めて悪戯をして回るが、隙を見てドラえもんに取り戻される。ドラえもんが、「時間を止めてばかりいると、他の人より早く年を取るのだ」と脅して鏡を見せると、のび太のかおは皺だらけ。これはドラえもんはこっそりを時間を止めて、のび太の顔にしわを書き入れていたのだった。

時間の流れの外側にいると、自分だけ年を取ってしまうという説明がいかにもドラえもんらしい。

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『人間製造機』
「小学六年生」1974年7月号/大全集2巻

「逆時計」という時間を巻き戻す時計が登場する。詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

『マッド・ウオッチ』
「小学六年生」1975年2月号/大全集2巻

これも基本的なひみつ道具が登場する。

ママの長い説教を受けるのび太。しずちゃんが遊びに来るので早く済ませたいという事情を汲んで、ドラえもんは「狂時機」という道具を出してくれる。これは身の回りの時間の進み方を早めたり遅くしたりできる時計である。ボタンを捻ると正常な時間に戻る装置も付いている。

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これものび太がドラえもんから奪取し、ドラえもんの時間を百倍遅く設定して邪魔されず自由に使えるようにする。

やがてしずちゃんが家に来て、何して遊ぼうかということになるが、のび太はのんびりしずちゃんと過ごしたい。しずちゃんは、時間を無駄に過ごすのが大嫌いだというので、「狂時機」を使って、時間の流れをゆっくりにする。

「もっとのんびりしようよ。二人でただこうして・・・。向き合っているだけで楽しいじゃないか。僕はね、こうポカーンと・・・、君の顔を見てるだけで・・・、何とも言えず安らかな・・・、夢見るような気持ち・・・ぐう」

まったりしている間に寝てしまい、気が付いて時間を正常に戻すと、真夜中になっていたのだった。

のび太がしずちゃんを前にして言うセリフは、読んでいるだけでこっちも眠くなるのんびりさ。対するしずちゃんは無駄な時間が嫌いだと言っているので、二人の価値観のズレが非常に気にかかるところである。

なお、本作に登場した「狂時機」は、ドラえもんの定番ひみつ道具として、何度か登場する。「驚時機」となっているケースもある。

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『スピードどけい』
「小学二年生」1977年8月号/大全集7巻

時計の針を回すと、一日があっという間に経ってしまうというひみつ道具。

あと3日と迫った夏休みが待ち遠しいということで、3日分早めて夏休みに突入するのび太たち。ところが夏休みに入っても、明日が待ち遠しい、早く明日に、とやっている間に、夏休みはいつのまにか後一日。

宿題を全くやっておらず、困り果てたのび太だったが、ドラえもんが夏休みまであと二日の日まで巻き戻してくれて事なきを得るのだった。

都合の良い時間だけ過ごそうとして、一日一日を大事にしないのび太を見ていると胸が痛んでならない。そんなお話であった。

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『時間貯金箱』
「小学二年生」1977年4月号/大全集9巻

続けて、今度は無駄な時間を貯金しておけるという道具。

ママの留守番の時間が勿体ないというのび太に対して、ドラえもんは『時間貯金箱』を使って時間を30分貯金してくれる。しずちゃんの家で遊んでいると、ピアノのレッスンの時間となってしまったので、それまで貯めていた時間を「おろす」。すると、時間がその分逆戻りしてもう少し遊べるようになる。

これを使って、ママの小言、ご飯までの時間、テレビのニュースの時間などを貯め込んでいく。ところが、宿題をやっていなかったことに気づき、それまでの時間貯金をいっぺんに卸してしまい、夕方四時半へと逆戻り。ちょうど帰宅したばかりのパパは、会社から早く帰りすぎたということで、急いでもう一度出社するのだった。

この道具、欲しいです。

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『時間よ動け~っ!!』(初出:『タンマ・ウオッチ』)
「小学二年生」1979年9月号/大全集11巻

本作で登場する「タンマウォッチ」は、端的に時間を止めることのできる道具で、『ウルトラストップウォッチ』と全く同じ働きをする。

今回ものび太が時間を止めて悪戯をして回るが、タンマウォッチが壊れてしまい、止まった時間から抜け出せなくなる。困ったのび太は、タイムマシンで時計が壊れる前の時間に戻ることを思いつき、ドラえもんに助けてもらう。

冒頭でのび太は、ドラえもんに宿題が遅いと言われ、野球に誘ったジャイアンたちにはノロマと呼ばれ、しずちゃんには貸した本を読むのが遅いと非難される。この様子を見ては、時間を止めてあげたくなる気持ちも良くわかる。

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『のび太のなが~い家出』
「小学三年生」1981年4月号/大全集12巻

これは後に「のび太の家出」というテーマでも取り上げる予定の作品である。「時間ナガナガ光線」という光線を浴びると10分が一時間に感じられるひみつ道具が登場。ママに光線をあて、のび太は3時間の家出を決行。ママにとっては3時間は18時間に感じられ、感動的な3時間ぶりの再会を果たすというお話。

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『時差時計』
「小学五年生」1983年7月号/大全集12巻

その名の通り、「時差時計」を使うと、この時計の周りだけ世界の時間のどこでも合わせることができる

これを使って、ジャイアンズの野球練習をあっという間に終わらせる。その後はしずちゃんとの時間を何度も時間を戻して引きのばす。『マッド・ウオッチ』同様、しずちゃんと一緒にいるだけで幸せなのび太なのである。

その後時差を戻さず宿題をゆっくりと仕上げて寝てしまい、ニューデリー時間の午前7時=日本時間の10時半になってしまっていた。パパも遅刻に巻き込まれる。『時間貯金箱』の時同様、パパにはとんだ迷惑な結果なのである。

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さて、本稿では「ドラえもん」から時間に関するお話を9作集めて、一挙に紹介した。

しかしながら、「ドラえもん」には、藤子F先生の時間観がわかる大本命のお話が2作残されている。こちらを次回見ていくことにしたい。



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