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ブービー(悟空)は天竺を目指す!『パーマン西遊記』/藤子Fの西遊記②

子供の頃から不思議な物語が大好きだったF先生は、愛読していた本をその後のF作品に色々な形で取り込ませている。

これまでFノートでは「ガリバー旅行記」「浦島太郎」をモチーフにした作品を紹介してきたが、今回は大好きだったと公言されている「西遊記」を下地にした作品群を見ていこうというシリーズ記事となる。

「藤子Fの西遊記」と題していくつかの西遊記作品を検証していく。その第一弾として「ドラえもん」に登場する西遊記に関する作品3本を紹介した。偶然にも3本ともジャイアンに取られるが、結局ジャイアンが痛い目に遭うという展開であった。

また、この記事の中ではそもそも「西遊記」とは何かという概要にも触れているので、先に読んでもらえれば幸いです。


本稿では、孫悟空=猿=ブービーというアイディアに基づく作品を見ていく。

『パーマン西遊記』
「小学館コミックス」1967年12月号/大全集5巻

「小学館コミックス」(旧名小学館ブック)に掲載されたパーマンは全部で15作。16ページくらいの比較的ボリュームのある作品が多く、全て考察しておきたい作品ばかりが掲載されている。

ちなみにこれまで考察済み作品はこちら・・。


本作はパー子がクリスマスプレゼントとしてブービーに「西遊記」の絵本を贈ったことに端を発する。字は読めなくとも、お猿(孫悟空)が活躍する姿に大興奮したブービーは、自分が悟空になったと思い込み、空想の化け物たちをやっつけようと暴れまくる。

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困ったパーマンとパー子は静かに言い聞かせようということでブービーに近づいていく。

「おりこうちゃんね、おとなちくちまちょうね」

と完全に赤ん坊扱いをして、孫悟空とブービーは違うと言い聞かせる。「悟空は如意棒や筋斗雲を持っているが、ブービーは持っていない、あんたはパーマン2号だ」と説得するのであった。

一度は現実に戻ったブービーだったが、みつ夫の家からカメラの三脚を一本むしって如意棒に、座布団の綿を抜いて筋斗雲に見た立てることで、再度孫悟空に成り切ってしまう。

そこでパー子は、天竺にお経を取りにいく所まで真似させれば納得して2号に戻るのではと考えて、ブービーに旅をするように勧める。一人で行かせようと思っていたが、ブービーは1号を猪八戒3号を沙悟浄に見立て、さらに町を歩いていた袈裟(けさ)姿のお坊さんを三蔵法師として旅に同行させようとする。

何とか三蔵法師だけ引きはがし、仕方なく3人で西の方向へと旅することになる。

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やがて山奥にたどり着き、日も暮れ始め、お腹も減ってくる。するとちょうど絵本そっくりの古い山寺をブービーが見つけて、そこに立ち寄ることにする。

お化けが出そうな古い山寺だが、中に入ると住職と坊主が現われ、夕飯を用意してくれる。何とも親切な住職たちだが、裏ではパーマンであることに気を揉み「このまま帰すわけにはいかない」と相談している。どうやら悪い奴らのようである。

西遊記の絵本では泊まった古寺の住職たちは怪物に変身するらしく、孫悟空になりきっているブービーは、三脚の如意棒を振り回して、休んでいた住職たちに襲い掛かる。何とかブービーを取り押さえる1号と3号。帰ろうとすると、意外にも引き留められ一夜を過ごすことに。

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その夜。パーマンたちが寝ていると、住職たちが寝床に近づいてきて、怪物に変身して火で焼き殺そうとしてくる。やはり怪物だったか、となぜかパーマン1号が孫悟空になって水を吐く術で火を消す。

・・・もちろんこれは夢で、夢から覚めると1号はまんまとおねしょをしてしまっていたのだった。

こっそりと布団を庭へと担ぎ出し、火を焚いて乾かそうとするパーマン。すると山奥に無数の鬼火がチラつき、どこからかシクシクと泣き声が聞こえてくる。ユーレイ大嫌いのパーマンは急いで部屋に戻るのだが、2号も3号もそこにはいない。

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その頃2号3号はシクシク聞こえてくる泣き声が気になって、出元を探していた。すると庭の小屋の中から泣き声が聞こえ、戸を開けると住職と坊主が捕まって閉じ込められている。パーマンたちを接待してくれた住職は、町で強盗して山に逃げ込んできた逃亡犯だったのだ。

真相を知ったパー子たちだったが、こっそり背後から逃亡犯たちに不意打ちされ、気絶してしまう。逃亡犯二人は続けてパーマンも倒そうと寝室に行くが姿がない。そこでパー子たちだけでも始末しようと、穴を掘って埋めようとする。

一人では怖くて、パー子たちを探して庭を歩いていたパーマンだったが、穴に埋めようとしている現場に出くわし、「オバケでなきゃ怖くない」とあっと言う間にニセ住職たちをやっつけてしまう。

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鬼火だと思っていたのは、逃亡犯を追っていた警官たちで、彼らに引き渡して山寺での事件は解決となる。


翌日、ブービーは別の絵本を読んで悲しみの感情を爆発させている。パー子が今度は「さるかに合戦」を読ませてしまし、ブービーはやっつけられるお猿に感情移入してしまったようである。パー子、少しは考えろよ・・。

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パーマンながら猿というパーマン2号のキャラクターを存分に活かしたお話。ブービーが悟空に成りきって天竺を目指して、実際に事件を解決してしまうという優れたプロットの作品であった。


ところで孫悟空と言えば、手塚治虫の「ぼくのそんごくう(ぼくの孫悟空)」が思い起こされる。漫画はもちろんアニメ映画が抜群の出来で、子供の頃から何度か見ているお気に入りの作品である。

この「ぼくのそんごくう」では、ある事情から若き藤子不二雄両先生や赤塚・石ノ森先生が代筆した作品が一本残されている。安孫子氏の「愛…しりそめし頃に…」に代筆のエピソードが出てくるので一部では知られた話だ。

「トキワ荘版・ぼくの孫悟空」などと言われているようだが、僕は残念ながらまだこれを読めていない。何とかして読むことはできないだろうか・・。


パーマンの考察たくさんやっています。


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