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のび太のママ発狂。『ゴキブリカバー』と『ごきぶりふえ』/ゴキ〇リこわい②

人類最大の敵。それは〇キブリである。(二度目)

一説によれば、ゴキブリは数億年前に生まれてから、姿かたちを変えていないとされている。たいていの生物は環境の変化など対応して、より生き延びやすくするために、進化を遂げていると言われている。

ゴキブリが全く進化していないということは、ゴキブリは最初から進化要らずの生命力を保有していたことになるのだろうか?

私たちはそうした彼らの妙な生命力を直感的に察知して、恐怖感を覚えるのかもしれない。自分たちより強い物への畏怖と言いましょうか・・。


藤子F作品には、時々ゴキブリが出てくることがあって、それはなかなかの恐怖を感じさせてくれるお話だったりする。

前回紹介した「パーマン」の『ゴキブリこわい』では、悪者にゴキブリ嫌いという弱みを突かれてしまうお話だった。この中で最も恐怖を覚えたのは、ゴキブリ牧場の網が破れて、何万匹というゴキが這い出てきたシーンである。詳しくは下記の記事にて。


本稿では「ドラえもん」に登場するゴキブリ作品をご紹介。ゴキブリが地球に誕生した秘密も明らかとなる壮大なお話のようだが・・。


『ゴキブリカバー』「小学五年生」1979年11月号/大全集8巻

部屋でくつろぐのび太とドラえもん。すると階下から「キャア~」と悲鳴が上がる。のび太が様子を見に行こうとすると、ドラえもんが「ゴキブリが出たんだよ」と言う。

ドラえもんはママの悲鳴の種類を把握しているらしく、「キャーと言ったらゴキブリ、キャーといったらネズミ、キャーの場合には滑って転んだの」と、説明する。もちろんのび太には聞き分け不能である。

ドラえもんの指摘通り、ママが「ゴ、キ、ブ、リ」とわめきながら駆けあがってくる。そして徹底的に退治しなくちゃということで、すぐに「ゴキブリコイコイ」を買ってきて欲しいと用つけてくる。


ドラえもんとのび太のどっちが買い物に行くかで押し問答となるが、そこでドラえもんが何かを閃く。取り出したるは「ゴキブリシーバー」というゴキブリのように二つの触覚(アンテナ)がついたシーバーである。

ドラえもんは「全員集合」とシーバーに声を吹き込むと、ゾロゾロと無数のゴキブリが部屋に入ってくる。その数に思わず飛び上がってビビるのび太。ドラえもんは「お礼に毎日のご飯を約束するからうちの手伝いをして欲しい」とお願いする。

するとシーバーからゴキブリ軍団の声が聞こえてくる。「わかった、君のために働こう」というのである。そしてわざわざゴキブリの方から「しかしこの格好出歩くとまずいと思うが」と申し出がある。

そこでドラえもんは「ゴキブリカバー」という小さな着ぐるみのようなものを出す。この中に先ほどの大量のゴキブリに入ってもらい、集団で一つのぬいぐるみを動かす仕掛けである。見た目は可愛くて、蝶ネクタイなどをしていて、知らされない限りとてもアレが入っているとは想像できない。


さっそく買い物に出掛けていくゴキブリカバー。サササと動きは俊敏である。「ゴキブリシーバー」の放射能によって進化を遂げたゴキちゃんたちは、言葉も理解している様子。

買い物からはあっと言う間に帰ってくる。買ってきたのは、自分たちを捕まえる「ゴキブリコイコイ」だが、ドラえもんはそれを見せて、罠だから近寄ってはいけないと注意する。

その後、ゴキブリカバーはかわいいロボットだと家族に認識(勘違い)され、家の手伝いをして回って、可愛がられる。

エサは一個で十分で、やりすぎると増えてしまうという。・・・これはもちろん、後の伏線となる。また、狭いところが好きだからと、ゴキブリカバーはゴミ箱の中で睡眠をとるのであった。


これで毎日楽ができると喜ぶのび太。ゴキブリカバーにのび太の世話を任せて、ドラえもんはこの機会に久しぶりに未来の世界に帰ることにする。ところが、のび太を一人にしては、ろくなことが起こらない・・・。

翌朝、寝坊してしまったのび太、ゴキブリカバーにササっと学校まで運んで欲しいとお願いすると、もっと仲間が増えないとのび太を運ぶ力が出せないという。

そこで、大きくするために、エサを4個与えると、すぐにムクムクと体が大きくなる。そして背負ってもらって、学校へ運んでくれるのであった。


この後はのび太がいつものように調子に乗るパターン。ジャイアンにロボットを貸せと要求されるのだが、ゴキブリたちにエサをやってもう一回り大きくさせて、ジャイアンを撃退する。これに喜んだのび太は、「ジャンジャン食べてよ」とエサを大盤振る舞い

案の定ゴキブリカバーは天井に届くほどの巨体となり、ママからどこかへやってよとクレームが入る。ところが、すっかりパワーを持て余しているゴキブリカバーは、出て行けというなら行く先を探せと逆提案。そして「無責任なことを言うと怒るぞ」と脅してくる。


ドラえもんが未来の世界から戻ってくると、ゴキブリカバーは、すでにのび太の部屋全体に体が大きくなってしまっている。「なんてことをしてくれたんだ」とドラえもん。まるで「バイバイン」で饅頭が増えてしまった時と同じ反応である。

しかも、カバーの許容量を上回って繁殖したため、カバーがプチプチと弾けそうになる。もしカバーが破れると、何十万匹のゴキブリがワ~と溢れ出てくることになる。

その様子を思い浮かべて、ゾクゾクと震え上がるのび太とドラえもん。人の迷惑にならないような、大量のゴキブリが喜んでいくところを、今すぐにでも探さなくてはならない・・・。


結局、追い詰められたドラえもんが考案したのが、「タイムマシン」で3億年以上前の石炭紀に送り込む作戦。まだ人間も恐竜も生まれていない時代である。

ドラえもんは言う。

「ひょっとして、あれがゴキブリの先祖になったのかもしれない」

3億年前からゴキブリが今と同じフォルムなのは、現代のゴキブリを3億年前に送り込んだから・・・? 「T・Pぼん」であれば、厳罰を食らうルール違反となるような歴史改変をしてしまったようである。


それにしても前作のパーマンといい、本作といい、ゴキブリが大量に溢れ出てくる様子を想像させるのが、上手なF先生である。


ちなみに、「ドラえもん」ではもう一本ゴキブリをテーマとした作品が存在する。それが『ごきぶりふえ』である。

『ごきぶりふえ』「小学一年生」1975年10月号/大全集8巻

「小学一年生」掲載の小品ではあるが、見所が実に多彩。ゴキブリが出ただけでママが「引っ越ししようかしら」と真剣に考えたり、ゴキブリを集めるのに「ハーメルンのごきぶりふえ」という道具を使ったりと、なかなかユニーク。

さらにはジャイアンが、母ちゃんからお小遣いを貰うために、「ハーメルンのごきぶりふえ」で町中のごきぶりを集めて、これでいくらくれるかと聞くのだが、笛が壊れてしまい、大量のゴキブリが部屋中に充満してしまう。

本作もまた、大量のゴキブリが溢れ出る、とっても気持ち悪いお話なのであった。



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