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パーマンを追い詰める殺人歌『全悪連盟歌』/音痴選手権③

「音痴選手権」と題して、「オバQ」と「ドラえもん」世界からそれぞれ飛び切りの音痴を紹介してきた。本稿では「パーマン」から、これまた非常に迷惑千万な音痴男を取り上げたい。

パーマンと敵対するある人物が、あまりに殺人的な歌声だったため、かなりのギリギリまで追い込まれる。そんな最悪の事態の物語を紹介する。その状況をどのように回避したのか、ご注目いただきたい。

なお、これまでの記事はこちら・・。



「パーマン」『全悪連盟歌』
「小学三年生」1984年4月号/大全集8巻

藤子Fノートの熱心な(?)読者ならお分かりの通り、「パーマン」は大きく二部構成を取っている。1960年代に連載された「旧パーマン」と1980年代にリバイバルされた「新パーマン」である。

旧と新では時代が20年近く空いてしまっているため、数多くの設定変更がなされた。今後分かりやすく、どのように変更したのか、それにはどういう事情があったのかなどを記事にする予定。

本作は「新」パーマンの一本で、敵となる組織名は「全日本悪者連合」である。略して全悪連。その名の通り悪者が一堂に会した組織で、理事長以下手広く犯罪に手を染めている。

この組織は「旧」パーマンにも存在しているが、名前は「全国ギャング・ドロボー連盟」、略して全ギャド連だった。なぜ名前が変わったかは不明だが、ギャングという表現が現実味を無くしていたことが影響を与えているのでは、と予測している。


さて、そういうわけで、今回の敵は全悪連。彼らは日頃の犯罪活動をパーマンたちに何度も邪魔されていて、お飯(まんま)食い上げ状態。なので、何としてもパーマンをやっつけたいと、日々色々な策を巡らせているのだ。

ちなみに全ギャド連の記事はこちら。




夜中に寝ているみつ夫を呼び出すパーマンバッジの音。みつ夫は寝ぼけてバッジを庭から捨ててしまい、そのままベッドへ逆戻り。翌朝、パー子たちが、何で呼んだのに来てくれなかったのかとクレームを入れてくる。

パーマンはそこで寝惚けてバッジを捨ててしまったことを思い出す。が、庭からパーマンバッジは見つからない。(この時鳴らして探せばいいのに、と思ったがそれはしていない)


その頃、全悪連の本部ビル。ぼろい外観で、看板には全〇連と伏せ字で表記されている。さすがに悪がここにいるとは明示してはいないようだ。

ビルの中では、理事長が高らかに歌声を上げている。歌声も酷そうだが、歌っている歌詞も滅茶苦茶なので、全文抜粋しておきたい。

都の西北○○町に
そびえるビルこそ
われらが本部
見よ悪者の集うところ
落日の意気高らかに
さえぎるカモなくよ
悪連 悪連 全日本悪者連盟

作詞作曲・理事長

部下二人は、「ひでえ歌だ」と内心我慢して聞いている。一人がメロディーも歌詞もどこかで聞いたような気がすると感想を述べると、もう一人が

「それは仕方がないよ俺たちゃドロボーだもの」

と気の利いた返しをする。盗作もれっきとした犯罪行為なのだ。


理事長は、「最近の悪者は暗く沈み切っている、真面目に悪の道に励む悪者たちを勇気づけたい」と、今回の連盟歌創作の意図を語る。

その狙いは立派(?)なものだが、理事長は自分の歌声に自信たっぷりで、自らテープに吹き込んで全国の連盟支部に送るのだ、と意気揚々。少年時代には歌手になろうと思ったほどだ、と目を細める。一週間後に吹き込みを行うため、それまで猛練習するという。


一方、バッジを探すパーマンたち。が、全く見つからず、交番にも届け出がない。このままではバードマンにバレて、ひどいお仕置きを受ける羽目に・・。

そこにパーやんから事件の報が入る。パーマンは一人、バッジを探すことに。


ふたたび全悪連本部。一人の悪者がビルに飛び込んでくる。何か大きな収穫があったようだ。すると、体調の悪そうな副理事が姿を現わす。理事長が歌の練習をしているのだが、あまりの酷い声に、うんざりとなっているのだ。

他の構成員たちも、気分を悪くして入院したり、逃げ出すように泥棒に出かけたりして、本部内はもぬけの殻となっているのだった。


飛び込んできた悪者が手にしていたのは、パーマンバッジ。最悪なことに、パーマンが庭に投げ捨てたバッジは、悪者の手に渡っていたのである。バッジを見た副理事は、理事長の歌声とセットにして、パーマンに一泡吹かせてやろうと考える。その具体的な策とは・・・。


みつ夫が部屋で転がっていると、ガン子が「変なおじさんからパーマンに」と言って、小さなプレゼントを渡してくる。開けるとなんとパーマンバッジ。泣いて喜ぶパーマン。


副理事が考えたアイディアは、パーマンバッジを改造して、スピーカー機能を加え、発信源となるマイクを理事長に持たせて、かの酷い歌声を吹き込ませようというもの。

なお、理事長にはマイクを「プロ歌手養成機」だと偽って渡す。理事長の歌声でパーマンを苦しめますとは言い難いのだ。


ここからは理事長の気も狂わんばかりの歌声と、パーマンとの格闘が開始される。・・といっても、一方的に昼夜問わず理事長の殺人的な歌声がバッジを伝わって流れてくるだけ。せっかく取り戻したバッジを捨てるわけにもいかず、竹竿にくくりつけてなるべく自分から遠ざけようとしたりするも、効果なし。

パーマンはフラフラとなり、その様子を見ていた全悪連メンバーもニンマリ。あと一歩で、打倒パーマンとなりそうだ。


理事長はすっかりマイクを気に入って歌の練習をしていたが、休憩がてら屋上に行き、そこで歌の悪口を聞いてしまう。

「しっかり耳栓をして、ビルの外にいてさえ堪えるからな。ほんとに理事長の歌の酷さときたら、殺人的というか・・・」


「プロ歌手養成機」は破壊され、副理事たちもボコボコにされてビルから追い出される。パーマンを倒すためだったと弁解するが、聞く耳持たず。打倒パーマンよりも自分のプライドの方が大事な理事長なのである。

ま、これによって、パーマンの病院送りは免れたようである。それにしても、歌が下手な人って、自分では気付かないものなんでしょうかね。



「パーマン」考察、紹介をしています。


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