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うっせぇわ、ペットたちの本音「ウメ星デンカ」『うるさい二匹』/動物たちの反乱③

「動物たちの反乱」と題して、よく似たお話二作を取り上げ、比較・検討を行った。記事は以下です。

内容としては、賢くなる薬を動物たちに使ったところ、賢くなりすぎて人間たちが支配者たる立場を奪われてしまうという、プロットだけ聞くと壮大なSFファンタジーのお話である。


本稿では、そのようなシリアスな内容は全く含まれないお話を取り上げる。ただし、自分が飼っているペットが、本当はどんな気持ちでいるのかなどが明らかになったりして、ちょっとだけドキリとするお話でもある。

よって、「動物たちの反乱」というほどでもないのだが、動物たちの内心が明らかになるというところで、ご注目いただきたい一本ではある。


「ウメ星デンカ」『うるさい二匹』
「小学四年生」1969年1月号/大全集2巻

藤子ワールドの家庭では、ママは動物嫌いと決まっている。ペットがいる家庭は、「エスパー魔美」の佐倉家くらいだろうか。しかし子供は総じて動物が好き。よって、ママに内緒でペットを飼おうとするような話は、「ドラえもん」などには頻繁に登場する。(今度特集記事でも書こうかしら)

「ウメ星デンカ」における中村家も、事情は野比家と一緒。太郎が道端で迷い猫を見つけてしまうのだが、ママが生き物嫌いということで、やり過ごそうとする。

しかし、ゴロゴロと懐いてくるので、太郎はママの機嫌を考慮しつつ、ネコを飼えるようにしようと、家へと連れて帰ることに。しかしタイミング悪く、ママは家計簿で苦しんでいて、機嫌はすこぶる悪い。


今朝の残りご飯をこっそり貰ってネコに与える太郎だったが、ママからご飯だけでなく冷蔵庫もお菓子も無くなっていると指摘をされ、「取ったのはご飯だけ」と答えてしまう。これによって、イヌかネコを拾ったのでは?とママは感づいてしまう。

のび太のママもそうだが、ペット嫌いのママは、まるで超能力のように動物たちが家にいることを察知することができる。


太郎はママから逃れてデンカたちの部屋へ。デンカが使う不思議なツボがあったので、そこへネコを放り込むと、イヌが出てきて追いかけっこになる。どうやら、ウメ星一家はイヌを拾ってきてしまっていたのだ。

国王自らママにイヌとネコを飼ってもいいか相談するが、なしのつぶて。勲章を上げようとしても、完全に拒否。しかしその後、なんやかんやの大騒ぎを経て、本当の飼い主を探すことを条件にママは一時的に飼っても良いと譲歩することになる。


ということで、イヌとネコの元の飼い主探しとなるのだが、国王がウメ星から持ってきた「動物に人間語をしゃべらせる薬」を飲ませて、飼い主の家を聞き出そうという話になる。

さっそく薬(錠剤)を飲ませて、各自の家を聞くと、「それがわからないから迷子になったんだよ」とイヌが冷静な答え。ネコは「ばかみたい」と鼻で笑う。結局、あちこちで聞くしかないということで、二匹を連れて町へと繰り出す。


このイヌとネコはなかなかの曲者であることが、この後わかってくる。イヌの方は、自分のために飼い主の手がかりを探しに出るのに、「めんどくさいな」と、まるで他人事。

ネコの方も、いつも外出はハイヤーだったらしく、町を少し歩くだけで疲れたと愚痴を言う。

イヌは、デンカをペロペロと舐めて、デンカは「そんなに僕が好きか」と尋ねると、「しょっぱくてうまいんだ」という答え。犬がペロペロしてくるのは、人間の塩分目的だったのか・・!

ネコの方も、太郎に対して「ゴロニャーン」と体を撫でつけてくる。太郎が「生意気言っても僕が好きなんだね」と尋ねると、「体がかゆかったから擦ったのよ」という、非常に残念なお答え。


なお、この町での手がかり探しの時、しゃべれるようになる薬を、町の動物たちに飲ませていくのだが、ここでも変なことばかり言い出す。例えば・・・

・お行儀が良いという小型犬が「おら、そんなやつ知らねえだよ」とガサツ。
・カラスは「おひかえなすって」と旅がらす気取り。
・ミミズは「あたしゃ目がないのでね」と座頭市っぽい受け答え。
・ベニショーガが釣ってきた魚は「さーころせ」と開き直る
等々


手がかりも無く、疲れたということで中村家へとイヌもネコも戻ってくる。そこへパパも帰ってくる。事情を全く知らないので、急にしゃべる犬猫が家に居て、驚くパパ。

そしてパパは、ネコには服を脱ぎっぱなしにしたということで行儀悪いと非難され、アニメを見ようとテレビに向かうとニュースを見ているイヌにニクソン大統領の声明についての議論を吹っ掛けられる。


すっかりしゃべる動物二匹に、中村家は呆れてくる。するとそこへ、ネコの飼い主が現れる。ロミちゃん(ネコの名前)が中村家にいるという噂を聞きつけたのである。

すると肝心なロミちゃんは、飼い主が迎えに来たと聞いて、「まあウンザリ」と、ペットの聞きたくもない本音を語り出す。

「あの奥さん、可愛がりすぎてしつっこいのよ」

とても飼い主に聞かせられないコメントである。


ウメ星国王が、ネコ語しか話せない薬をネコに飲ませて、飼い主にもどす。ネコはミャオミャオと可愛らしく鳴くので、飼主は「ヨチヨチお家に帰れて嬉しいのね」と喜ぶが、これは実際には「うんざり」と言っていたのである。

イヌの方も飼い主(初老の男性)が現われ、無事に引き取られることに。こっちは「ポチじゃないか」とイヌに抱きつき、イヌの方も喜んで抱き合う。


ペットは自分に懐いているからと言っても、それはもしかしたら、人間の一方的な勘違いかも知れない。ペットはペットで、色々な不平不満があるのかも知れないし、鳴き声で訴えていたのかもしれない。

そんな風に思うと、ちょっとだけ複雑な気持ちになる。・・・まとめると、ペットの心、知らぬが仏というお話でした。



藤子作品の考察やってます!


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