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トラブル続出!? コピーロボットの7大特色/考察パーマン⑧

パーマンが活躍するにはパーマンセットが必要なのは言うまでもない。力を増幅させるマスク、空を飛ぶことができるマント、仲間との通信や酸素ボンベとして役立つバッジ。事件や事故を解決するには、どれも重要である。

しかしもう一つパーマンに必要なもの、それがコピーロボットだ。

ヒーロー活動において大事なものは、ヒーローの力だけでなく、ヒーローとして活躍できる「時間」である。小学生とパーマンの二足の草鞋を履くためには、パーマンでいる時の「時間」を確保しなくてはならない。

コピーロボットは、自分の身代わりという役目であるが、それはすなわちパーマンとしての時間を作ってくれる大事なアイテムなのである。

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そういうことなので、コピーロボットがうまく稼働してくれないと、ヒーロー活動に大きな支障をきたしてしまう。ところが、このコピーロボットが曲者で、たびたびトラブルを引き起こし、みつ夫を困らせる。その一方でコピーを大事に扱わないことでそのしっぺ返しを食うこともある。

今回はそうしたコピーロボットをめぐるエピソードを数多く紹介して、コピーロボットの特徴を炙り出していきたい。


特色①
コピーロボットは、その鼻を押した人の姿かたちとなってくれるロボットである。性格もコピーされるため、怠け者のコピーは怠け者となってしまう点が要注意だ。

『野球は二人で』ではコピーは居眠りをして宿題もやらず、「宿題は自分でやるべき」などと言い訳をする。みつ夫でいる時間を代行する仕事のコピーが言うべきセリフではない。

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特色②
コピーロボットの構造的な欠陥として、コピーのボタンが鼻であることだ。鼻という目立つ部分がボタンとなっているので、誤って鼻を押してしまってロボットに戻ってしまう事件が頻出する。

『パーマンに水難の相』では、パーマンの代わりに授業に出ていたコピーが、居眠りして鉛筆で鼻を押してしまってロボットに戻ってしまい、みつ夫が行方不明となってしまう。

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『コピーロボットの逆襲』では、パーマンとなったコピーが、空を飛んでいる間に鳥に鼻を押されてしまい、ロボットになって地上へと落下してしまう。

『コピーパーマン出動す』でもパーマンになってみたいというコピーが、ギャングと揉み合って鼻を押されてしまう。このように、コピーをパーマンの代わりにするのは非常に危険である。


特色③
コピーの鼻は弱点としか言いようがないが、なんとコピーロボットは、自分から鼻を押してロボットに戻ってしまうこともある。

『兄さんをパーマンを弟子に』では、カバ夫を喧嘩の相手をするように言われたコピーが、自らの鼻を勝手に押してロボットに戻る。

『先生がくる』では、みつ夫の代わりに先生に怒られてくるように命じられ、「そんな目に遭うくらいなら身投げして壊れた方がましだ」と言い出して、ロボットに戻って二階から飛び降りてしまう。まるで「台風クラブ」(注)のようなショキングなシーンである。

*注)相米慎二監督の青春映画の傑作

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特色④
コピーロボットは、コピーされた相手の性格や姿を模す訳だが、心が完全にコピーの相手となるわけではない。みつ夫のコピーロボットであれば、みつ夫の持ち物であるという自覚はどんな相手になっても残される。そして誰かのコピーになったとしても、その時の記憶も残されたままだ。

『ぼくはスターだぞ』では、落ち目の二枚目スター半寒色男のコピーとなって嫌な性格になってしまうが、戻った際にはその時の振る舞いを恥じている。

『コピーパーマン出動す』では、ギャングとなってしまったコピーは、良心が残されていた男のコピーだったために、自分でみつ夫の家に戻ってくる。そして「はやくみつ夫くん戻してくれよ」とお願いしているので、みつ夫のコピーだという自覚は十分だ。ただすぐにモノを盗んでしまう手癖の悪さは健在だった。

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『パー子の正体は?』では、みつ夫の知らぬ間にパー子のコピーとなるのだが、みつ夫の家でご飯を食べてそのまま押し入れで寝てしまう。心はパー子だが、パー子のコピーロボットではないので、みつ夫の家に留まるのである。

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特色⑤
コピーロボットはロボットなので、何らかの動力源があるはずだが、詳しい構造は不明である。充電したりなどしていないので、ドラえもん型の自家発電型なのだろう。そしてロボットなので当然壊れたりすることも・・・。

『野球は二人で』では、コピーが仮病を使い医者の診察を受けることになるのだが、聴診器を当てると歯車の音がしている。案外アナログな作りなのかもしれない。また注射をしようとして針をグニャと曲げてしまうことから、かなり頑丈な体をしているようだ。

『故障したコピーロボット』では、本格的にコピーロボットが壊れてしまう。突然動くのが億劫になったコピー、頭がフラフラし始め、行動がどんどんおかしくなっていく。バットを食べたり、壊れたラジオのような音を出したり、猛スピードで走って扉を突き抜けたりする。酷い熱を出して倒れ、体中がカチコチになる。「僕は壊れちゃう」とうわ言も言い出す。

結局、ロボット工学の大家である国大の代田教授をブービーのコピーロボットでコピーを取って診てもらうことにするのだが、これがあっさりと直ってしまう。コピーロボットは、第一人者のレベルであれば修理可能な科学技術であるらしい。

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特色⑥
ところで、パーマンセットを着たままコピーロボットの鼻を押した場合、複製されたパーマンセットはどのような効果を持つのだろうか? 仮にパーマンセットもコピーされれば、パーマンを量産できることになるのだが・・・。

『コピーの秘密』はそんなみつ夫の疑問から、コピーを使って次々と実験をしていくお話。帽子を被ってコピーロボットの鼻を押すと、帽子を被ったコピーとなることに気付き、ホットケーキを頭に乗せてコピーをすることで、オヤツの大量生産が可能となる。次にお金のコピーを作るか、という話も出るが、そこは正義のパーマンということで実験はしない。

次に二人で同時にコピーの鼻を押すとどうなるのか。みつ夫とブービーで試すと、二人が合体したような姿となり、深掘りできそうだったが、意味がないということでこの実験も終了。

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そして最後に、マスクとマントを付けてコピーを作るとどうなるか。するとパーマンセット付けたままコピーされ、力も6600倍で空も飛べる。コピーパーマンはブービーと喜んで飛んで行ってしまう。

残されたパーマンだが、これが様子がおかしい。マントは超低空飛行となってしまい、子供が乗っかっただけで潰れてしまう。どうやら、コピーの方にマスクとマントの力が寄せられてしまったようである。

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力が二分割するわけではなく、コピーの方に能力が偏るのはちょっと面白い発想。やがて力を落としたパーマンに危機が訪れるが、コピーパーマンがロボットに戻ると、その途端にパーマンの力が回復し、難を逃れる。

ちなみにバッジもまともに鳴らなくなっていた。やはりパーマンセットのコピーは難しいようだ。


特色⑦
さて、色々なコピーロボットのエピソードを見てきたが、このコピーの一番の特徴は、自我を持っているということである。コピーはたびたびみつ夫のコピーロボットであることに嫌気を差して、反乱を起こしている。

『コピーロボットの反乱』では、みつ夫の自分勝手さに腹を立てたコピーロボット。何とか懲らしめてやりたいということで、みつ夫が寝ている隙に鼻を黒く塗り、自分の鼻は白くして、みつ夫がコピーロボットだと信じ込ませる、という作戦に出る。普通はうまくいきそうもないが、自分がロボットな訳がないと嫌がるみつ夫を無理やりに信じ込まされてしまう。

やがて立場逆転して、再びみつ夫が優位に立つが、みつ夫はこれまでの行動を反省して、嫌な役目はジャンケンなどで公平に決めようと自ら言い出して和解をするのだった。ちなみにコピーは将棋などは完全に互角だが、ジャンケンは強く、草むしりはみつ夫の仕事となってしまうというオチ。

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『コピーのいたずら』でも、みつ夫に自由に使われているコピーが、「僕はドレイじゃない」「あいつのロボットになったのが不幸の始まりだ」などとすっかり嫌気を差す。そして自由を求めて旅に出ると置手紙をして家出してしまう。藤子Fの世界ではロボットまでもが家出するのだ。

その後コピーはみっちゃんに鼻を二度押ししてもらって、みっちゃんのコピーになっていたずらするなど、やりたい放題。すったもんだで再びみつ夫のコピーになるのだが、怒るみつ夫に対して、自分で鼻を押してロボットに戻ってしまう。へそを曲げると言うことを聞かなくなる、使う立場からするととても困ったロボットなのである。

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おまけ
なお、みつ夫のコピーロボットは色々な人のコピーとなっているが、『わが友「有名人」』ではプロ野球の玉選手(王貞治のパロディ)、プロレスラーの加馬(馬場のパロディ)などの姿になる。

そしてラストで売れっ子漫画家のフニャコフニャオのコピーとなるのだが、その姿を見た編集者は天の助けとばかりにマンガの手伝いをさせる。すると漫画家となったコピーは、「やってみると面白いね」と言い出して、二人のフニャコフニャオとなって合作を続けたいと言われる。

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この時、合作という形を取りつつも完全に分業で執筆していたF先生の、人手が欲しいという願いが出たエピソードだと考えるとなんとも興味深い。

最後に今回取り上げた作品名を、雑誌掲載順に列挙しておく。コピーロボットが主役の話は非常に多いことに改めて気が付いた次第である。

『パーマンに水難の相』「週刊少年サンデー」1967年3+4号
『野球は二人で』「週刊少年サンデー」1967年5号
『コピーロボットの逆襲』「週刊少年サンデー」1967年6号
パー子の正体は?』「週刊少年サンデー」1967年11号
先生がくる』「週刊少年サンデー」1967年13号
故障したコピーロボット』「週刊少年サンデー」1967年17号
コピーパーマン出動す』「小学五・六年生」1967年6月号
コピーロボットの反乱』「週刊少年サンデー」1967年24号
ぼくはスターだぞ』「週刊少年サンデー」1967年28号
わが友「有名人」』「小学四年生」1967年8月号
コピーの秘密』「小学四年生」1967年10月号
兄さんをパーマンを弟子に』「小学二年生」1967年11月号
コピーのいたずら』「小学五・六年生」1967年11月号

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