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結局、何から読めばいいの?/「藤子・F・不二雄」読書ガイド

ハタと気づきました。

膨大な藤子作品、何から読めば分からない人が大勢いるのではないかと。

僕はほぼ全ての藤子・F・不二雄先生の作品を繰り返し読んでいるので、その面白さを十分にわかっているつもりです。

けれどたいていの方は「ドラえもん」は知ってるけど、あとは作品の名前しか分からない、というような感じではないかと思います。

このnoteは基本的に藤子F作品に触れた人を対象としていますが、もっとライトな方でも藤子作品を手に取ってもらえるような、読書ガイドが必要と考えが至りました。(ようやく)

そういうことで、本稿では「で、結局何読めばいいの」という問いに答えていきたいと思います。


◆完全な初心者の皆様へ

「ドラえもん」てんとう虫コミックス1~25巻

子供の頃読んでいた、という方は多いと思います。けれど、これを大人になって読み返すと、子供の頃に気がつかなかった発見があって驚きます。(この驚きを日々僕は原稿にしています)

最初の方(7巻くらいまで)は、ドタバタコメディの要素が強いのですが、8巻あたりからはだいぶ定番化したパターンや、思わぬ大作などが載っていて、かなり面白く読めるはずです。

ただ、26巻以降になると、少々マンネリの気持ちが出てきて、作品一本ごとの印象が薄くなっていきます。ですので、まずは25巻くらいまでの中から適当に買ってきて読むのが良いものと思います。

基本的にどの巻をいつ読んでも大丈夫なのですが、6巻→7巻は必ず順番に読みましょう。そうすることで「さようならドラえもん」からの「帰ってきたドラえもん」の感動の連続を体験できます。

「大長編ドラえもん」てんとう虫コミックス1~9巻

通常バージョンにある程度慣れ親しんだら、続けて「大長編」に進むことをお勧めしています。映画原作となっている作品です。

いつのも仲間たちが、毎回日常から遠く離れた世界に旅立ちますが、そのスケール感と完成度は、何度も繰り返し読むことができます。今回は9巻までとしましたが、完成度や王道のテーマ選択という点で9巻までが一つのピークだと思っているからです。10巻以降は、ややテーマがニッチになっていくのと、展開が少し変化球となっていくため、中級者向けと考えています。

これもどこを読んでも大丈夫ですが、できれば1巻から順番に読み進めると良いでしょう。


◆子どもに読ませたい、幼心を取り戻したい皆様へ

「パーマン」てんとう虫コミックス1~7巻

日常のヒーロー・パーマンは、マーベルなどのスーパーヒーローものの原点ともいえるお話ばかり。ドジで間抜けだけど自分なりに頑張るという等身大のヒーロー像は、是非お子さんに読んで欲しいし、大人になっても十分楽しめるマンガです。

1~4巻が旧パーマンと呼ばれる1960年代の古い作品で、5~7巻は新パーマンと呼ばれる1980年代の比較的新しい作品となっています。1~2巻で設定を掴んだあとは、一気に5巻に飛んでも良いかも知れません。

「キテレツ大百科」てんとう虫コミックス1~3巻

不思議な発明品を使ったお話で、「ドラえもん」とよく似ている構成です。ただ、主人公のキテレツ自身が発明品を作り上げていくというDIYな姿勢が、「ドラえもん」ののび太と違って、教育的かも知れません。相棒のコロ助もかわいく、女の子も楽しめます。一作一作のページ数が多めなので、「ドラえもん」に触れた後のお子さんに読ませると良いと思います。

最終回などは大人も感動できます。


◆少し大人の皆様へ

「エスパー魔美」てんとう虫コミックス1~9巻

F作品には珍しく、思春期の女の子を主人公にしたお話。超能力を使って悪を倒す!というお話ではなく、些細な能力を使ってあくまで日常の問題を解決していきます。日常と超常を地続きに描き出すF先生のバランス感覚が素晴らしい!

また、一作ごとのドラマが分厚く、ほぼ全ての作品で感動を覚えます。とてつもない完成度を誇っており、個人的には一番押したいF作品となります。


◆歴史好きな皆様へ

「T・Pぼん」中公コミック1~3、藤子・F・不二雄大全集1~3巻、希望コミックス1~3

歴史上の一大事件の端っこで、不本意に亡くなってしまった名も無き人たちを救助していくというコンセプトの、タイムトラベルもの。ピラミッド、古代ローマ、アメリカ、日本・・・、世界中のあらゆる時代が舞台となっており、物語を楽しむというよりは、歴史を学ぶという方が近い感覚です。

残念ながら版権が小学館にないので、気軽に手に取れるコミックがないのが難点。思い切って大全集を買ってしまうのが良いかも知れません。これまで未収録だった作品も全て入った完全版は、大全集のみです。


◆ディープな藤子ワールドを体験したい、衝撃的な作品を読みたい皆様

少年SF短編集

藤子作品は、清く正しい子供向けマンガの顔と、もう一つ、ハードなSFマンガとしての顔があります。このもう一つの顔を知った時、藤子F先生への見方が一新すると思います。SF的な価値観の大逆転や、日常を見つめるシニカルな眼差し、時に容赦のない暴力的な描写も見られます。

「ドラえもん」は誰もが通る道ですが、この短編集までたどり着く読者は稀です。ですが、藤子先生の短編を読んでしまった人は、きっと生涯F作品から離れなくなってしまう。そんな魅惑に満ちた作品群となります。

こちらも色んな形態で刊行されておりますが、「小学館コロコロ文庫」(通称コロ単)あたりは入手しやすいので、この1~2巻を手に取ってもらえればと思います。コロ単1巻では「ひとりぼっちの宇宙戦争」「未来ドロボウ」、2巻では「流血鬼」などが抜群の大傑作となっています。

異色SF短編集

少年SF短編集は、少年少女を主人公にしているが、異色短編は大人が主人公となっています。ですので、より一層大人向けでダークな作品が多く、読後感の衝撃度はより強烈となります。「ドラえもん」を描きながら、裏側でこんなことを考えていたのか、と思うと恐ろしい気持ちになる可能性も。

様々な媒体に発表していたので、まとまって読むためには藤子・F・不二雄大全集まで手を伸ばさないといけません。

SF短編・異色短編の区別を取っ払えば、「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」が電子書籍でも入手できるので、こちらがオススメです。全112話を8巻にまとめています。この中ではまずは1巻から読むと良いでしょう。『ミノタウルスの皿』『劇画・オバQ』などは必読です。


なお、ドラえもん公式サイト「ドラえもんチャンネル」では、いつまで続けているかわかりませんが、期間限定で藤子作品の無料配信を行っています。5~7日ごとに内容が変わっていきますが、基本的には「ドラえもん」「それ以外の作品」「短編」の3本が配信されています。特に短編については、大人にこそ読んで欲しい作品ばかりとなっていますので、是非マメにチェックしてもらうと良いと思います。


そして藤子作品に触れた後は、ワタクシの考察記事などでさらに深いFワールドをご堪能いただければと思います。


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