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あやとり研究の成果が続々・・!?/のび太の3大特技がスゴイ!あやとり編①

野比のび太の3大特技。それは「昼寝」「射撃」そして「あやとり」である。しかもただの得意というレベルではない。この3大ジャンルにおいて、世界トップクラスの実力を備えているのだ。

しかしながら、恐ろしいことにこの3大ジャンルは、今の世の中ではほとんど役に立たない。よって、のび太の世界的な実力は、今の世では認めてもらえないことになる。


まあ、「射撃」については、戦闘場面で役に立つ。実際にのび太は、町内での拳銃王コンテストで優勝するし、西部開拓の時代や宇宙でも射撃の特技を生かしてヒーローとなった。

実際にこれから日本が戦争に巻き込まれたりした場合に、射撃の腕前が買われるかもしれないので、これについては役立たずと言ってしまうのは可哀想だ。ただ、普通の日常生活においては、活躍の場がないということだけだ。

これまでに得意技=「射撃」については、既に記事にしているので、ご参照ください。


次に「昼寝」については、実際のところ、のび太はいつでもどこでも一秒に満たない早さで寝付けるので、休息が必要な場面で他の人よりいち早く体を休めることができる。

疲れを感じた時には、数分でも昼寝をすると良いと言われている。疲労対策として、「昼寝」の特技を生かすチャンスはありそうだ。


しかし、「あやとり」はどうだろう?

競技(?)人口も少なそうだし、見た目も地味だし、凄い技をキメてもそれが凄いとは気づきにくい。ぶっちゃけ、世の中から無くなったとして、困る人がどれだけいるだろうか。

あやとりの紐とかで商売している人もいなそうだし、あやとりの攻略本も本屋で見かけたことはない。僕自身、あやとりの経験はほとんどないし、あやとりで盛り上がっているシーンに出くわしたこともない。

凄いんだろうけれど、その凄さが理解されないという点において、のび太のあやとりテクニックがまるで無視されてしまうのも無理はないような気がする。


ということで、「のび太の3大特技がスゴイ!あやとり編」として、のび太の世界的レベルとなるあやとりのテクニックを紹介しつつ、その実力が全く評価されない、むしろバカにされてしまうという悲哀のエピソードを検証していく。

まずシリーズ記事1本目ということで、のび太のあやとりシークエンスを一挙ご紹介していく。その後、2本目・3本目で著名なあやとりエピソードを詳しく見ていくことにしたい。



『ゆめふうりん』「小学四年生」1972年7月号/大全集2巻

「ドラえもん」において、初めて「あやとり」というキーワードが登場したのがこの作品。

ガキ大将・ジャイアンが、空き地でみんなを集めて、それぞれどんな遊びをしたいか聞いていくのだが、その時にのび太は「あやとり!」と主張する。

その後深夜に、のび太が「ゆめふうりん」を使ってガキ大将となり、皆に向かって「あやとり大会をやりたい」と言うのだが、まるで無視されてしまう。

最初から「あやとり」はバカにされる対象となっているようである。


『オトコンナを飲めば?』(初出:オトコンナ)
「小学三年生」1974年12月号/大全集5巻

続けて、実際にのび太が初めてあやとりのテクニックを披露したのがこのお話。「オトコンナ」という薬(ガス)を使って男の子と女の子の個性を入れ替えるという、今のジェンダーレスのご時世にはそぐわないようなお話となっている。

本作では冒頭で見たことのないようなあやとりの技が飛び出す。長い間工夫を重ねて発明したという作品で、「踊るチョウ」と名付けられる。

しかし誰に見せることなくパパとぶつかって崩れてしまい、もう二度と作れないと嘆くのび太。そしてパパは謝るどころか、「もっと男らしい遊びをしなさい」と叱られてしまう。

なお、本作では「オトコンナ」という薬(ガス)によって、世の中の男らしさと女らしさが交換となるのだが、これは「もしもボックス」で男女を入れ替えるような展開とほぼ一緒である。


『ジャイアンズをぶっとばせ』「小学四年生」1974年12月号/大全集4巻

『オトコンナを飲めば?』と同じ月に発表となった本作でも、あやとりの話題が少しだけ出てくる。

野球で失敗続きののび太は、野球に向いていないのでチームを退けと言われてしまう。この時に、「女の子とあやとりでもやってろ」とバカにされたという会話が出ている。

本作を見ても、この時代は「男の子らしさ」「女の子っぽく」という表現が、差別的ではなく、日常的にさらりと使われていることがわかる。

今の時代であれば、のび太はもう少し生き易かったのではないだろうか。



『カネバチはよく働く』「小学五年生」1975年3月号/大全集3巻

続けてこの作品では、冒頭、部屋で静かにのび太があやとりをしていると、ドラえもんが「のび太君は本当にあやとりが好きだねえ」と話しかけてくる。するとのび太が意外な答え。

「特別好きってこともないけどさ。お小遣いもなくなったし、金もかからずくたびれず、腹の減らない遊びとなるとこれしかないもの」

と、まさかの「特別好きではない」発言。要は、積極的ではなく、消極的にあやとりをしているという重大証言なのである。

もちろん、これはただ言っているだけとも考えられる。その後の「あやとり」エピソードからは、むしろ積極的な情熱を強く感じるからである。



『のび太ののび太』「小学六年生」1975年8月号/大全集3巻

本作は、のび太が一日のスケジュールを決めて、その予定を守らせようとそれぞれの時間にタイムマシンで未来の自分に知らせに行くというお話。そのスケジュールの中に「あやとりの研究」という時間がある。

時間としては1時から1時45分までという、結構長い時間研究に充てる予定を組んでいる。残念ながら実演するシーンは出てこなく、どんな研究をしているのか見てみたかった。

いずれにせよ、あやとりへの情熱があるからこそ、研究の時間をスケジューリングしたのであろう。


『いたわりロボット』「小学五年生」1975年10月号/大全集4巻

本作も、冒頭にてあやとりの大技炸裂。複雑に両手の指に紐を巡らせる大作で、完成させたのび太は、

「ついにできた! これこそ二十一世紀のあやとりだ。これを「銀河」と名付けよう」

と大興奮する。

そして「パパー、見て見て!」と走って見せに行くのだが、見せようと思った相手が悪かったのか、部屋で「ドジャン」とパパにぶつかり、テーブルをひっくり返し、茶碗を割ってしまう。

そして、「あやとりなんかに夢中になって、男らしくない」という例の反ジェンダーなお説教を食ってしまう。・・・可哀そうなのび太。さぞかし生きずらいことだろう。


なお、この作品では、そんな生きずらいのび太が「いたわりロボット」という何でもかんでも慰めてくれるロボットによって、前向きな気持ちにさせてもらう。このロボットは「男らしさ」について、なかなか良いことを言うので、抜粋しておく。

「男らしいって、そんなにいいことかしら。やたらに勇ましがって強がって、そんな人たちが戦争なんか起こすのよ」

のび太のあやとりは、ジェンダーレスの世の中、やたらに勇ましがって戦争をしてしまう世の中において、必要な特技なような気がしてくる。


今回紹介してきた作品群によって、のび太の特技=あやとりというイメージはだいぶ完成に近づいた。この後、2本、あやとりを真正面からテーマとした作品があり、それが決定打となる。

予告編として、この2本について軽く触れておきたい。

『あやとり世界』
冒頭でのび太が両手を口も使う新作「ほうき星」を披露。しずちゃんたちに自慢するが、まるで感心されない。また、作中であやとりチャンピオンが、大技として「銀河」を披露する。『いたわりロボット』でのび太が作った「銀河」とは少し形状が違うようだが、名前が一緒なだけなのだろうか?

『家元かんばん』
冒頭で三カ月も工夫を続けたという「ギャラクシー」という超大作を完成させるのび太。しずちゃんたちに自慢するのだが、今回もまるで相手にされない。

のび太の研究が報われる日がくるのだろうか・・?



「ドラえもん」の考察しています。


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