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映画感想 「人情紙風船」2022/7/20(水)

7/20(水)の仕事帰りに京橋の国立映画アーカイブに山中貞雄監督の遺作「人情紙風船」を観に行った。相変わらず仕事はキツいけど何とか行けて良かった…笑
何せ残された時間は少ないのだ…

この作品は是非ともスクリーンで観たいと思っていたので今回の企画展での上映は本当に嬉しい!しかも4Kリマスター!
実際に観た感想は修復されているからか映像にノイズが無くなったのでとても観易いと思いました。名作がこうして甦るのは良いですね。音響も悪くなかったと思っています。映画自体はDVDソフトを持っているので内容は知っているのですがやっぱりスクリーンで観ると格別でした。

改めて観てみても未だに古臭さは感じない現代的な時代劇だなと思います。
髷は結ってるし言葉は古典落語みたいですがユーモアと漂う諦観とリアリズム。この辺が絶妙で好きなところ。原作の河竹黙阿弥の「髪結新三」も好きな作品ですがこれを1937年に映画化したのは当時の時世もあったのかもしれないと考えてしまいました。
今と違い監督の権限がどれほどかは判りませんが山中監督の想いは如何ほどだったのか…

この作品を完成後に中国に出征して若くして戦病死してしまい無念だったと思います。もし戦病死せずに生還して戦後も作品を遺していたらと思うと残念でなりません。黒澤明監督と同じ年齢なので僕もぎりぎりリアタイで劇場で観れたかもしれない…
山中監督も1937年の時世を想いつつ映画を撮ったのではないか。「髪結新三」も幕末のバタバタした混沌とした時代を反映した内容だし当時の観客には馴染みのある歌舞伎の演目なので理解しやすい作品になると思ったのかもしれない。

江戸の長屋での話だと落語みたいで面白可笑しい雰囲気もあるので騙されますがヤクザじゃない新三が賭場を開いて胴元やってたり誘拐したりだし大家さんはちゃっかり身代金をGETしたりとクライムサスペンスで浪人の又十郎は奥さんと微妙な感じで最後はアレだし…ユーモアが有るから暗くならないけど底辺な人達が藻掻きながら生きていく様を厭世的に描いている。って何となく今の時代にも合ってるんじゃないかと思うのです。戦争が少しづつ近づいてる今の時代に…

今回スクリーンで初めて観てモノクロなのに何となくカラーな感じに観えたのは空を映したシーン。
あ、空が青い…白い雲って思ったのが不思議でした。何故なんだろう。雨や夜のシーンも付いてないはずなのに色が見える。あれが1930年代の空なんだな…

やっぱりこの作品が好きだと今回改めて思いました…諦観と厭世的でユーモア有りの山中貞雄監督の最後の作品を。
死ぬ前にスクリーンで観れて本当に良かった…笑

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