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【裏側2】先制パンチ

当時は「シェフ」が現場の全てを掌握していました。
この店一筋。生粋の叩き上げです。
誰よりも店を把握し、
僕のことも小さい頃から知っています。

そんな「自分の城」のような所に、
2代目が侵略しにきたのですから、
気分は穏やかではないでしょう。

スタッフと打ち解けるために
食事を兼ねたミーティングを開催した時に事件は起こりました。

不思議なことに誰1人、僕と一言も喋らないのです。
事前に用意したネタ帳も5分で消化し、
冷たい空気が現場に漂います。

「二代目とは話すな」とでも言われているのでしょうか
全員がシェフの顔を伺いながら、フリーズ状態。
さながら
「ミーティングなど意味がない」といった雰囲気です。

するとシェフから一言
「厨房備品を交換して下さりありがとうございました。
ですが、資金に余裕があるなら我々の賃金を上げて下さい」

食事中に、まさかの賃上げ要求です

食べていた料理の味がしなくなってしまいました…

修繕したことを逆手に取られ、
先制パンチ炸裂です。

当時の給与は全員悪くはありませんでした。

うちの場合、
シェフによる「労働組合」が完全に出来上がっており、
僕と敵対する構造を作っていました。

さながら労使交渉のような息の詰まる展開の中、
咄嗟についた「嘘」をカウンターパンチとして繰り出します。

「あの修繕費用は僕のポケットマネーです」
驚いた様子のシェフ。
反論は出てきませんでした。

「今後善処する」旨を約束し、
パンチを避けることができました。

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