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商業広告はやらない、社会テーマ専門でやりますって、よくそんなワガママが通りましたね?


(前回からのつづき)
妻「前回は、以前勤めていた会社(博報堂)で「民間企業の広告は一切やりません!社会テーマの広告専門でいかせてもらいます」というスタンスで仕事をしていたというお話をききましたが、一般の民間企業でそんなワガママが通るのですか! ?」

夫「いやー、ほんとにありがたいことだったと思います。でも、今までほんとにたくさんの企業の広告をつくってきました。その時代時代の旬なタレントさんを起用してキャンペーンをつくっていく、そんな刺激的な毎日を過ごしてきました。とても面白かったし、やりがいもあった。でも、社会がこれだけ課題を抱えている中で、ただ経済をぐるぐる回すためだけの広告はもういいやって思うようになって。散々、大企業の利益に貢献したと思います。自分でいうのもなんですが。。。それと大手広告代理店が扱うキャンペーン予算は億単位です。そりゃあ、そんだけ金をかければ宣伝は基本うまくいくはずで。お金が儲かるからやりたい! というクリエイターもたくさんいると思うし。だから僕は、そういうの、もういいやと思ってしまったんです。今後の人生は、自分が正しいと思うことをしたい。より社会のためになることをしたい。社会の広告屋として生きていきたいって思うようになってしまったんです。だから会社には、辞める覚悟で宣言しました。報酬ランクが下がるリスクもありました。自分は器用にやれるタイプではないので、最悪、クビになっても仕方がないという覚悟でした。

ただ、その時は僕は、博報堂をも変えたいという思いもありました。リーマンショックや3・11以後の世界や日本は変わりつつあった。CSRではなくCSVへと。会社の本業の中で、社会課題の解決に向き合って行こうという流れが始まっていた頃で、名だたる世界的企業がソーシャルグッドにシフトしつつあった頃でした。博報堂が相手にする企業も変わってくる。そうなれば、博報堂のビジネスも変わってくる。だからこそ、それに備えて、みんなが商品を売るための戦略の提案と同時に、企業が社会問題にどう向き合っていくのかを踏まえた提案をしないといけない時代になると思いました。そんな時に、僕のようなクリエイターはたくさんいた方がいい、という勝手な思いがあり、まず社内の意識も変えたいと思っていたりしました。」

※CSR・・Corporate Social Responsibility (企業の社会的責任)

※CSV・・Creating Shared Value (共有価値の創造)

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↑博報堂を辞める前に、自分の中でホットだったのが世界的経営学者ポーターが提唱していた『CSV』という考え方。それを日本の大企業と共に社会課題に向き合い、NPOとのコラボで実現しようという組織を、博報堂社内で立ち上げました。いろいろと模索中でした。

妻「希望通りになったのですね。それなのに、なぜ、博報堂を辞める必要があったのですか?」

夫「最大の理由は、博報堂で受けられる案件と、受けられない案件があることでした。国や地方自治体、NPO、NGOレベルの広告は、予算が限られています。一番、課題に向き合っていて、広告を必要としているのに、大手広告代理店には、予算の関係で頼むことができない。私は、いったい誰の味方になるべきなんだろう?と考えました。

そして、予算が足りないことで、必要なPRができないところに、私の進む道があると思い始めました。博報堂では扱えない案件に対して、大手のスキルを活用して、広告することができる専門会社があれば、ニーズもあるだろうと。そして新会社を立ち上げることになりました。これが、2018年5月22日設立の『社会の広告社』です」

妻「なるほど、予算がきっかけだったんですね。でも、クオリティの高い広告を安く作ってほしいというご依頼が増えた場合はどうしますか?」

夫「その場合は、予算を作るところから考えます。例えば、クラウドファンディングとか、助成金をとることもアドバイスして、必要な予算は作ってもらいます」

妻「それから、ダム問題に関わる映画を作ったり、様々な社会テーマの広報に関わっていますが、関わった以上、さらにもっとディープに運動に関わっていくという流れにならないのでしょうか?」

夫「気持ちとしては全ての案件にディープに関わりたいと思っています。だって、そこに日々困っている状況があるので。しかし私は、広告することが役割だと思っていて、伝え役に徹しています。僕は一人しかいない。でも世界には伝えなきゃいけないことがたくさんある。実際、各社会テーマには現場に寄り添うNPOやNGOの方々がいらっしゃいます。僕はそういった人たちを支援する立場に徹したいと考えています。僕は、それぞれの案件の戦略をたて、運動を加速化して、そして、軌道にのれば、ある時期から去っていく。本来は、僕なんか必要ないという状態が、ベストなわけですから。『社会を変える当事者たちを支える裏方』それが自分の役割だと思っています。

妻「つまり、社会テーマにも、専門的なマーケティング戦略と広報戦略とかが必要だということなんでしょうか。社会課題については、新聞やテレビなどが取材して発信してくれると思うけど、それでは足りないということ?」

夫「これまでは、社会問題に向き合う団体の現場では、「広告にお金をかけるなんてもったいない、自分たちは正しいことをしているのだから、自然に応援団は増えていくだろう」と思われていました。でも、今は、ありとあらゆる情報が氾濫していて、その中で、社会活動のPRは一部の意識高い系の人による拡散に頼っている現状です。

それでは、不十分です。専門的なテクニックを使って、課題を見える化していかないと広がりません。例えば、環境保護に向き合う団体があるとする。でも今って、環境保護については、小学生だって学びます。生物多様性、里山保全、気候変動対策、ほんとに様々なNPOやNGOもあります。地域の自治体でもやるし企業だってCSR活動として環境保護運動のようなことはやっているわけです。でも、その団体自体が、それこそサステナブルな維持をしていくためには、他の環境保護活動の違いやターゲットを鮮明にし、戦略を作っていないといけない時代になっているんです」

妻「なるほど。頑張っていれば、誰かが見てくれる、取材してくれるって時代ではないんですね。」

夫「ソーシャルセクターには、圧倒的に広報戦略とかブランド戦略が足りてないんです」

妻「でも、社会課題は、日本にも世界にも途方に暮れそうなくらい存在しているわけですよね。うちの会社で、それぞれに対して詳細に関わっていくとしたら、きりがないのではと思ってしまうのですが。」

夫「いつも、最大に効果があることを考えています。例えば、各社会テーマの全国組織の広報戦略に関わらせてもらうとか。個々の団体の広報を担当するのではなく、それらを束ねた組織を担当させてもらう。その中で大きな業界全体のブランド戦略を立案し、それを踏まえた発信のプラットホームをつくったりすることで、規模感を活かしたソーシャルインパクトを出すことができるのではないかと考えています。」

妻「社会福祉法人の仕事はまさにそうですね」

夫「そうですね。介護や保育、障害支援などの社会福祉業界って、すごく大変だ、きつい、みたいな印象があると思うのですが、実はそこで働く人たちはそのイメージとは全然違う。まだ伝わっていない社会福祉業界のプロッぷりや日々の面白さを、現場の当事者が記事を書いて発信するプラットホームをつくっています」

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妻「クライアント様の選び方があるということですか。」

夫「すでに社会テーマとして有名なことではなく、メディアに載っていないことが私のやることだと思っています。私が関わることで社会が動くというような、社会テーマの本質に触れるものをやってみたいです。と言いつつも実際のところは、『縁』という感じですね。博報堂時代の繋がりでやっていることもありますし、映画を見たことがきっかけで声がかかることもあります。一度、お話をきいて、自分がやるべきかどうか、考えて判断させてもらっています。」

妻「そういえば、あなたはもともと社会派だったということだったね。3.11以前でもそういうところがあったかもね。」

夫「思い起こせば、常に自分のつくるCMで誰かをハッピーにしたいという思いは持ってました」

妻「アルトのCMのときとか?」

夫「はい、そうです。ちょうど君が妊娠している時に、生まれた後の育児ライフを想像して、育児で頑張っているママを応援するCMを作りました。作詞もして。

「世界でいちばん頑張っている君に」歌:HARCO(青木慶則さん)

ものすごくパーソナルな思いを込めて作ったもので、実際にオンエアされたらママたちにウケることは想定していたのですが、これが、社会的な応援歌として話題になり、大勢のママたちからメッセージをもらいましたし、俳優の小栗旬さんも「元気づけられた曲」だとテレビ番組で取り上げてくれたんです。

当時(2005年)は、最近の「#metoo」みたいな活動はなかったし、育児は女性がやるものだという風潮も、まだまだ強かったです。このCMは、車の宣伝で、車目線だけど、妻に頑張ってほしいという旦那目線でもあったんです。その結果、車も売れましたが、社会の人の心をハッピーな方向へ動かすことができました。
これが、広告の醍醐味なんだな、と思った経験でした。CMを見た人の人生をよりよい方向へ変えて、社会がよくなるきっかけになったことがすごくうれしかったです。

被災地でCM作った時にも、ものすごく感謝されたんです。それもうれしかった。社会テーマの広告で、世の中に、様々なハッピーを作ることができると感じました。通常のクリエイティブでは味わえない醍醐味がありました。さらに、社会を変えるきっかけにもなった。それで稼いで家族を養えるなら、こんな喜ばしい良い仕事はないと思いました」

妻「大きな転機でしたよね」

夫「そういえば、逆に僕から質問ですが博報堂を辞めるって言った時、君はどういう心境だった?」

妻「博報堂勤務時代にNPOを立ち上げ、全国各地の方たちとネットワークもできていて、ちゃんと運営していたので、大丈夫なのでは、と思いました。やりたい仕事を一緒にしてほしい、ということだったので、それは私が、時間的にも内容的にも一番安心して取り組める仕事だと思いました。」

夫「だからすんなりOKってなったんだよね。僕の独立時は、子供もまだ小学生と中学生だし、君は絶対反対すると思ってたから、企画書とかバッチリつくってプレゼンしたらすんなりOK。そういえば、子供達の方が、うち大丈夫かよって心配してたよね」

妻「とくに長男が」

夫「何か買おうとすると長男に止められたりして。。まぁ、いまのところ、なんとかなってますね」

妻「ですね」

夫「これからも頑張っていきましょう。社会のために、人のために、そして家族の幸せのために!」


これからも弊社の仕事について発信していきます。

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