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今まで女性のひきこもり当事者が集まれる場所がなかった?

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯6、ラジオ音声を全文書き起こしました。

女性限定の当事者会を開くことの意味は?女性の当事者たちの状況は?構成担当山田英治(社会の広告社)が、ひきこもりUX会議代表林恭子さんとひきこもりUX女子会に参加されていた当事者、経験者にお話を伺いました。
※音声で聴きたい方は、コチから!

パーソナリティ:高橋みなみ                      ゲスト: ひきこもりUX会議代表 林恭子さん、女性当事者         取材構成:山田英治(社会の広告社)


高橋みなみさん「ひきこもりボイスステーション。パーソナリティの高橋みなみです。今回はひきこもりの女性の当事者の方の声を紹介したいと思います。ひきこもりと聞くと、まずは男性をイメージする方が多いと思うんですが、実は女性のひきこもり当事者の方も多いんです。この時間に紹介するのは、女性当事者たちの集まり、ひきこもりUX女子会です。構成担当、社会の広告社 山田英治さんが代表の林恭子さんにお話をうかがいました」

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林さん「一般社団法人ひきこもりUX会議の代表をしております、林恭子と申します。ひきこもりと言うと男性が多いと思われる方は、今も多いと思うんですが、女性も実はいるんですね。実際には半々ぐらいだと思いますね。でも、その女性達が安心して集まれる場というのが、これまであまりなかったものですから、女性だけで集まる当事者会というのを作ってみようということで始めたのが、このひきこもり女子会です。

私たちは実態調査もこれまでに行なっているんですが、その調査の中でも、実は6割から7割の女性たちが男性が苦手であるとか男性が怖いと感じる方がいることが分かっています。DVや性的な被害に会うというようなことから、ひきこもる方もいらっしゃいますし、また摂食障害やリストカットという形でひきこもっていく方も、男性より女性の方が多いような気がします。また、女性の場合には、例えば、体調の変化ですとか様々なことで女性同士なら話せること、ちょっと男性がいると話しづらいということもありますので、やはり女性に限定するということは結構大事なポイントかなと思っています。

私も、高校時代の不登校と、20代のひきこもりを経験して、そこから抜け出すのに非常に長い時間がかかったんですね。そのひきこもり状態にあって、とても苦しかった時に、こんな馬鹿なことをしているのは世界中で自分一人だけだと思っていたんですが、後にひきこもりの当事者、経験者と言われる人たちと出会えて一人じゃなかったんだと思えたことは、とても大きかったんですね。この女子会も、やはり自分だけじゃなかったと、分かりあえる人がいるんだということを感じてもらえたらと思って、こういう場をやっているということがあります」

山田「最初、林さんが当事者だったときに行っていた居場所というのは、男性が中心だったんですよね」

林さん「そうですね。たまに女性もいらっしゃいましたが、ほぼ今でも、日本中の当事者会の9割以上は参加者が男性だと思います」

山田「参加者9割。でも、白書でいうと女性の当事者はもっと割合が多いですよね」

林さん「はい、そうですね。男性がいるところには女性が行きづらいということもあるでしょうし、また女性の中には、例えば家事手伝いや主婦という一応肩書きを持っているけれども、とても生きづらさを抱えている、また、自分のことをまだひきこもりだと気づいていないという人もいらっしゃるので、いろいろな理由で男性が多くなってしまっているのかなと思います。主婦であっても、例えば10年以上、夫以外の人と口をきいたことがないという方もいらっしゃいますし、例えばママ友とか親戚付き合いというものも非常に苦手で、長年できてないんだという生きづらさを抱えた主婦の方は決して少なくないと思います。


ひきこもり問題の本質は

自己肯定感が粉々になって生きていていいと思えない苦しさ。

その苦しさを減らし、「生きる気力」を取り戻すきっかけになる場所、それが「当事者会」


ひきこもりと言うと、これまでどうしても自立や就労というものが支援のゴールとされて、周りの人にそれを求められるところがあったと思うんですけれども、私はひきこもりが仮に問題だとするならば、その本質はやはり生きづらさや自己肯定感というものが粉々になってしまっている、生きていていいと思えないというところの苦しさだと思うんですね。それが女子会のような当事者会に来ることで、そのように思っていたのは自分だけではないと、分かってくれる人がいることで、まず生きてていいと思えるというんですかね。こんな自分でも、もうちょっと生きてみようかなと思えるようになる、そしてまた、こんな自分でももしかしたらみんなと一緒にやっていけるかもしれないというふうに、生きる気力をまずは取り戻すということが先だと思うんですよね。女子会のような居場所というのは、それがもしかしたら提供できる場なのかなと思います。就労に到るという事はもちろん大切なことではあるんですけれども、その手前のいくつものステップが必要だと思うんですね。そのステップの一つが、安心できる居場所ということだなと思います。ですので、本当に全国各地でもっともっと増えていって欲しいと思っています。自分たちで立ち上げてくれる人も増えてきていますのでね、そういう人たちも、ぜひ周りの方、応援していただきたいと思います」

高橋さん「私も林さんのお話聞くまでは、男性が多いイメージがあったんですけれども、女性で不安を抱えている方は、実態調査でもありましたが、6、7割が男性が苦手であるとか、本当に女性のひきこもりや思いというのは見えにくいものなんだなと感じました。そしてこの女子会の存在ですよね。私も普通に、友達などで男性、女性がいますが、やっぱり女性同士でしか話せないことってあるんですよね。抱えている問題であったりとか。そういった場所を提供してくださることは本当に大事なことなのかなっていうふうに思いますし、この生きづらさを抱えている中で、生きていいんだというふうに感じられる場があることは、とても大事なことなのかなと思いました。さあ、ひきこもりUX女子会に参加した、当事者の方にも取材していますので、そちらの声も聞いてみましょう」

ひきこもりUX女子会に参加した3名の方にお話を聞きました。


鈴木さん「鈴木です。年齢は24歳です。今、精神系のデイケアに週3日で通っています。同じような立場の人とおしゃべりができたので楽しかったです。どうしても家にいると、家族以外の人とほとんど話さないみたいな状況になってしまうので、同年代の方たちとおしゃべりできる機会があるのは、とても楽しいし、なかなか難しいのでありがたいです」

あーちゃんさん「あーちゃんといいます。30歳になりますね。友人と出かけるのも少なくなったり、外に出る機会がすごく減ってしまったりして。気持ちも、どんどん沈んでふさぎがちになってきたので、これではいかんと思って、同じような仲間とか を見つけたいなと思って参加しました。ちっちゃい頃からちょっと不安とか緊張とかが、すごく強い気質だったんですね。そういうのが、大人になった今でも出ることが多くてですね。それが会社、仕事の中で積もり積もって、ちょっと心の限界が来てしまったかなという感じで、一旦職を離れることにしました。

最初、中学生の頃に不登校になってしまって、なった当初というのは、理由が自分でも分からなかったんですけど、大人になってから、ちっちゃいときから不安が大きくて心配性で、自分の中で抱えるものがすごく大きかったんだなっていうふうに気づいたという感じです。高校は通うことができたんですね。高校、大学と進むことはできたんですけど、これから社会人でもやっていけるぞと思っていたのに、そこでまた戻ってしまったというか、そうなってしまって、やっぱり絶望というか何なんだろ自分は、という思いが大きかったですね。やっぱり、どこかでどうにか生きていかなきゃいけないんだというのはあったので、まあどうにか沈み切らずに、気持ちは落ちるけど沈み切らずに、自分で調べたりとか、ちょっと外に出ていくきっかけを作ったりしていたように思います。

行く前はネガティブな話というか、心についての(話を)、気持ちも沈んでいるところだったので、沈んでいる方とそういった話をしてみたいなとか思っていたんですけど、そういう話だけではなくて、趣味の話とか楽しいことの話もできたことで、ちょっと気持ちが一段明るくなったと言いますか、ひきこもっていることとか仕事辞めちゃったこととか、過去にこんなことがあったよということを、素直にさらけ出せる場所だなというふうに感じています。本当にいろいろな方がいるので、いろいろな背景とか状況の方がいるので、お互いに刺激にもなったりしますし、こういう話もしていいんだなって思える場所だなと思います。自分をさらけ出す居場所をいろいろな所で見つけていくことで、生きづらさみたいなものが、ちょっとずつ薄まっていくのかなと実感していますね。それがなんか自分を認められることにつながっているのかなと思っています」

はるかさん「はるかといいます、年は32歳です。直前までひきこもっていたんですが、ちょうど29歳の誕生日を迎えて、あと1年でもう30になっちゃうみたいな焦りを感じて、元々ひきこもりUX女子会のことはちょっと調べていたので、ちょっと行ってみようという感じで出てきたのがきっかけです。おかしくなってきたな、というのはだいたい24歳ぐらいだったので、だいたい5年ぐらいとかになりますかね。

これって言う理由はあまりないんですけど、引越しだったりとか、新しい環境になったっていうのは大きいです。引っ越しして家族全員で住むようになって大学に編入学したのですが、その大学でうまくいかなかったり、電車通学も初めてだったりとか、いろいろ苦しいなぁとかしんどいなぁということがたくさんあって、結局ひきこもってしまったので、大学は行けなくなってしまい退学という感じになってしまいました。それが一気に積み重なったからという感じかなと今は思っています。

ひきこもりの当事者会ってちょっと暗いイメージで、めっちゃガチガチに緊張したのは覚えていて、どういう場所かもわかんないし、だいぶ早く会場前に行ったんですが全然入れなくて、でも会場も過ぎて、ちょっと話し声が聞こえてきたところで、もうここまで来たんだから、思い切って入らなきゃダメだと思って一歩踏み出したら、結構和やかな雰囲気で笑い声も聞こえていて、割と明るくて入りやすい会場だったので、いい意味でびっくりしましたね」

山田「こういう女子会に参加することになって、自分自身の変化はありますか」

はるかさん「そうですね。かなり変化はあったんじゃないかなと思ってます。こうやって、そもそもひきこもっている状態から出られるようになって、今は一人暮らしもして仕事もできる状態になったので、それも大きいし、そういう自分のひきこもっていた経験みたいものを、なにか活かせないかなと思えるようになったっていうのは、かなり大きいんじゃないかなと。

今、当時者会というのを自分でもちょっとやっています。国立で社会福祉協議会の方と一緒に、生きづらさを抱えている方の居場所みたいのをやっているんですが、その中で、自分が美術やアートが好きということを活かせないかなと思って、最近はコラージュといって、雑誌とか広告とかをビリビリ破いたり切ったりして貼り付けてコラージュ作品を作ろうということもしています。もうちょっと、アートと福祉が繋がっていくようなことを何かできないかと、すごく模索していきたいなというのが、私の今後の生きる目標というか、そういう感じにはなっています」

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高橋さん「ひきこもりUX女子会について、皆さん最初はちょっと勇気がいったというのはありましたが、行ってみたら、いい意味で裏切られて楽しい場所だったっていうのが、皆さんの声色からすごく伝わってきましたよね。本当にそれぞれが持つ悩みの形も違いますし、事情も違うと思うんですが、お話ができる場所が、居場所があるということがとても大事なんだなと思いました。抱えている不安が、自分だけのものじゃないんだ、みんなも抱えているんだというふうに思うと、自分のことを客観的に見られるようになったりとか、ちょっとした元気が出てきたりとか。最後のはるかさんは、自分のひきこもっていた経験を活かしていろいろなことをやって行きたいんだと、アートと福祉がつながっていることを、いろいろ考えていきたいんだっていう。すごく皆さん前向きになっていっているのが伝わってきましたね。私もすごく勉強になりました。

ひきこもりボイスステーション。今回は女性のひきこもり当事者が集う、ひきこもりUX女子会についてご紹介しました」

◆林恭子さんの書籍「ひきこもりの真実」筑摩書房より発売中!

◆イベント開催 2021年1月16日13時スタート!
『ひきこもりVOICE STATION』公開生配信! (パーソナリティ高橋みなみ)
視聴登録はコチラ https://www.asahi.com/ads/hikikomori-voice-station/

◆『ひきこもりVOICE STATION』 公式WEBサイト https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/   
◆TOKYO FMサンデースペシャル『ひきこもりVOICE STATION』放送決定! (2022年2月13日19:00~19:55)

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