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経理の妻が聞く! ちゃんと知らなかった『社会の広告社』の仕事の話①高齢者施設が学校ってどういうことですか? 「ライフの学校」のブランドデザインについて教えてください。

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妻)去年から頻繁に仙台市を訪れていた案件「ライフの学校」が無事にオープンとなりました。今回、その「ライフの学校」の仕事について教えてもらいたいと思います。よろしくお願いします!

夫)よろしくお願いします!

妻)まず、どのようなきっかけで担当させていただくことになったのですか。

夫)2018年からプロデューサー、クリエイティブディレクターとして担当させてもらっている社会福祉HERO’S TOKYOという社会福祉業界のスピーチコンテストが縁で、現在、ライフの学校の代表理事を勤められている田中伸弥さんと知り合いまして、彼から「山田さん、今度、うちの社会福祉法人の名称を変えようと思うのですが、相談できますか?」と声をかけられたのがはじまりです。

妻)そもそもは、法人名の提案の依頼だったんですね。 

夫)はい、そうです。もともとは「社会福祉法人ウエル千寿会」という名前でした。僕としては、ただ名前をつけておしまい、ということではなく、超高齢化社会が進む中で、社会福祉法人としてどう生き残っていくのか、その戦略を踏まえたネーミングとブランドデザインを提案するべきだと考えていました。

妻)ブランドデザインとは、どんなものですか?

夫)ブランドデザインとは、ものすごく簡単に言うと、法人や団体や商品それぞれが売れたり、広まったり、つまりはビジネス的な持続可能な状況にしていくために「エッジの立ったキャラ」をつくること、だと僕は思っています。

妻)キャラですか? 

夫) キャラです。芸能界をイメージしてもらえばわかりやすいと思うのですが、よく「キャラがかぶっている」とかいいますよね。あれは、タレントさんそれぞれが事務所と一緒に自分たちのブランドデザインをしているわけなんですよね。それにより、他と違うエッジをたてて、勝ち残っていく。そのためには、髪型を変える、自分の好きな分野のことを発信する、出演する番組を選ぶ、といったアウトプットとして見えてくる全てのことに気を配るわけです。

音楽業界だってそうですよね。例えば、去年大ブレイクしたミュージシャンのYOASOBIは「ネットに投稿された小説を音楽にする」というブランドデザインの戦略がきっとあったと思うんです。それをきちんとソニーミュージックの若手プロデューサーの方が意識してやって、ちゃんとヒットさせた。それは本当にすごいことなんですが、まさに彼らはブランドデザインしていた、と言えるのだと思います。 

僕がブランドデザインを実施するにあたり留意しているポイントは、以下の三つです。クライアントさんへのヒアリングやマーケットの状況を見ながら、この要素を埋めていく感じでやっています。

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参考までに僕が推測するYOASOBIのブランドデザイン戦略は次のような感じでしょうか。担当者じゃないので間違っているかもしれませんが(笑)

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これは、社会問題に関わるNPOやNGO、そして社会福祉法人の経営戦略にも同様に使える手法であるわけです。逆にソーシャルセクターには、そういうブランドデザインという発想がなかった。なさすぎた、と思っています。「エッジの立ったキャラ」になっていないと、本来、たくさんの人に伝えたい、巻き込みたいという団体なのに類似の活動に埋没してしまい、もったいないということが多いんです。 

妻)ソーシャルセクターに足りていない。なるほどです。 

夫) それで、ライフの学校の場合、まずは田中さんから今後、どういう福祉施設にしたいのか、社会福祉業界全体のことなどを含めてお話を伺いました。その中で、「福祉をひらいていきたい」というお話が出てきました。 昔の日本は今のような核家族ではなく、おじいちゃんやおばあちゃんが同じ屋根の下にいて三世代が同居する形が当たり前でした。地域との結びつきが強く、身近におじいちゃんやおばあちゃんがいて多様な触れ合いがありましたよね。その中で、子供たちや若い人たちが、高齢者と身近に触れ合うことで、命の大切さや生きること、暮らしの知恵などのいろいろな学びがあったんです。だからこそ、支え合うことの素晴らしさや、他人に優しくしたり、優しくされたりすることの喜びなどが学べました。それが、大都市でも地方でも都市化と核家族化が進んで、多世代が混じり合う機会が減ってしまった。田中さんはそれを踏まえて「福祉を地域にひらきたい」とおっしゃったのだと思います。例えば介護施設では、人生の最後を支えることを「看取り」というのですが、その看取りに立ち会うことで、いろんな学びがある。それを普通に地域の人たちにも知ってもらいたいというお話をされていました。その話を聞いた時に「なるほど、福祉施設には【学び】がある」という自分なりの発見がありました。

妻)なるほど、そうやってヒントをつかんでいくんですね。 

夫)東京に帰ってきて、改めてどういうブランドデザインがいいのか考えました。実はまだ少数ですが、福祉施設を地域にひらいた場所っていうのは、けっこうあるんです。じゃあ、田中さんの施設は、もう一段上のところを目指すべきではないかと、僕は思いました。目指していることは、単に地域にひらくということではない。ひらくことで、地域に住む子供や大人たちに学びを提供する、そこまでいけるといいなと思ったんです。 

そこで以下のようなポジショニングがいいのかなと思いました。介護施設ではない、福祉施設でもない、コミュニティスクールだと。高齢者や障がいのある人たちと地域の人たちとが触れ合うことで、いろいろなことが学べる学校だと。
『365日、いのちと暮らしと生きるが学べるオープンキャンパス』これだ!と思いました。

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よっし、ポジショニングも見えてきました。その段階でデザイン事務所minnaの長谷川さんにも入ってもらって、ブレストをしました。当初、いろいろなネーミングを考えたんですが、なんかしっくりこなくて。何ヶ月かして、あ、「LIFE」だなと。LIFEには、生きる、暮らし、命、という三つの意味があります。そのLIFEが学べる学校、ということで、そのものズバリ「ライフの学校」がいいのでは、と思い付きました。それを長谷川さんに提案したら「それ、いいですね!」という反応をいただき、デザインの方を進めていただいたんです。
そして長谷川さんから上がってきたロゴがこちらです。3つのLIFEの「L」が集合してハートになっているデザインです。

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続いてブランドデザインの戦略、ネーミング、実施に向けてのフローなどをまとめて、田中さんをはじめに社会福祉法人ウエル千寿会の職員のみなさんに提案しました。 

妻)クライアント様からはどんなご意見やご感想がありましたか?

夫)みなさん、びっくりされていました。お、おうーという感じでした。「実際にコミュニティスクールとしてのプログラムを開催するのは大変ではないか」「毎日、外から来る人を迎えられるのか?」「職員のキャパは大丈夫か」といった声もありました。でも日頃から田中さんが新しい社会福祉法人になってどんなことをしたいのかということが、各スタッフに伝わっていたので、このブランドデザイン戦略をみんなで進めていこうということになりました。

ただ、提案して終わりではないんです。「学校」にしていくための準備が必要でした。そこでライフの学校のミッションを職員や地域の方にも理解してもらい、いっしょに学校運営に参加してもらうために、ライフの学校のプログラムをみんなで考えるワークショップを開催したんです。

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地域に住む方々、学生たち、そして職員とで、ライフの学校が開講したら、どんな内容のプログラムを提供するのかを考えてもらいました。そこから出てきたアイデアをベースに、実際にプログラムが出来上がり、現在、実施されています。 

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妻)ライフストーリー学って面白そうですね。

夫)施設の高齢者の方は、昭和を生きてきたそれぞれに個性的な人たちです。その方たちの人生を、施設のスタッフが聞き書きをして、プレゼン資料にまとめて、ご本人と家族と一緒に地域の人たちに、その方の「ライフ」を聞いてもらうんです。

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他にもゲストを呼んで、その方の人生についてのお話を、お酒を飲みながら根掘り葉掘り聞く「ライフBAR」や、おじいちゃんやおばあちゃんが先生になって昔の遊びを伝授してくれるプログラムもあります。また平日は、その日が勤務の介護士や栄養士、障がい者支援などのスタッフに、近所の子供たちが密着して福祉の仕事が体験できるプログラムもあります。また、もともと敷地と道路を隔てる壁があったのですが、その壁を取っ払い、地域の人たちが自由に入ってこられる「ライフの庭」もあります。学校帰りの子供たちが立ち寄れる駄菓子屋があったり、自習したりもできる「ライフの図書館」もあります。 

妻)うちの近所にもライフの学校、ほしいですね。

夫)ですよね。ほんと。

★うちの撮影チームでつくったライフの学校コンセプトムービーはこちらhttps://youtu.be/-1RWF2Xwtks

妻)最後に、今後、社会の広告社として「ライフの学校」に、どんな社会的インパクトを期待していますか?

夫)「ライフの学校」のような社会福祉法人は日本にもっと増えるべきではないか、と思っています。一般的に福祉施設というのは、いざ困った時や必要になった時に利用するという形になっていますが、今後高齢化が進むにつれ、3人に1人、地域によっては4人に1人が高齢者となる社会では、普段から一般の人が福祉に触れられる環境を当たり前に作っていく必要があると思います。仕事をしていれば、会社と家の往復になりがちですが、地域の施設に気軽に足を踏み入れられるようになれば、その時、自分にできることは何かを考えたり、支えたり支え合ったりすることができる優しい社会になると思います。

社会福祉の施設が地域に開いていけば、優しい社会になれるのではないかという田中さんたちの思いから、「ライフの学校」というブランドデザインが実現しました。今後も社会の広告社としてバックアップすることで、こうした取り組みが広がり、「開かれた福祉」が日本で当たり前になっていけばいいな、と考えています。

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ライフの学校についての詳細はコチラ
ライフの学校 WEBサイト 

これからも弊社の仕事について発信していきます。
社会の広告社 WEBサイト




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