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食と文化と思う事。

先日ある番組を見ていた時、テレビに出ていたイタリア人男性がこう言った。

「だって、イタリア人だもん。」

それは、長年日本に在住しているその男性が、夕食を食べにイタリアレストランに行った時、日本人スタッフの男性に「和食じゃないんですね。」と言われた言葉への返答だった。

また、ある番組では(多分日本在住の)国際結婚カップルへのアンケートで、国際結婚で困る事というような内容の質問の回答の第1位が”食の好み(?)が合わない”だった気がする。

色んな意見があると思いますが、ここからは私個人が勝手に感じた事を書いてみたいと思います。

育ってきた環境と食べてきた物、そしてその国の味のベース、他国に住んでいる年数、自身の味の好み、味に対して保守的かオープンか、自炊をするかしないか。色んな条件があると思うので一概には言えないと思うが、私はこれらの回答に納得出来る。

勿論日本食自体が苦手という方もいらっしゃるかもしれないけれど、味の好みが合わないというのは、別に日本食が食べられないという事だけではない様な気がする。

どちらかと言うとやはり自分の慣れ親しんできた味の方が好きだという事ではないだろうか。

それが日常の食事となると多分慣れ親しんできた味の方が、やはりしっくりくるのではないかと感じる。

20年以上も前になるが、家族とアメリカへ海外旅行した際、やはり私の祖父母は和食が食べたいと言った。旅行期間が長い程その回数は多くなる。だから旅行の際は毎回緑茶、インスタントのお味噌汁、その他ちょこっと食べられる日本食材を持っていく必要があった。そして、滞在期間中近くに和食レストランがあればたまに行く。付き添いの私が他の物を食べたくても、味の優先順位は年上である。。。

年齢の若い人や、食べる事が好きであるという方は余り気にならないかもしれないが、年齢を重ねるごとにきっと慣れ親しんできた味の方が落ち着くのかもしれない。

余談であるが、20年近く前に他界した私の祖父は台湾で生まれた。8歳の頃日本に戻ってきたらしいが、定年退職した後はふらっと散歩してよくマンゴーを買ってきていたらしい。きっと子供時代に台湾で食べていたマンゴーの味が記憶に残っていたのではないかとその後母は言っていた。

現在海外に住んでいる私の友人達も、アジアンスーパー等で材料を購入し自宅で自炊をする。日本より海外生活の長い私の友人は、娘のために椎茸で出汁を取ると言っていた。

ある番組を見て面白いなと思ったのは、ヨーロッパの方とアジアの方に”酢こんぶ”を味見していただき、その感想を聞くというものだった。

アジアの方は余り味に抵抗はなく結構美味しい言うのに対し、ヨーロッパの方は苦手であるという回答だった。

アジアであれば、味のベースが似ているところもあるだろうから余り抵抗なく食べられる事があっても、ヨーロッパだと酢こんぶや梅干しといった味のベースは余りないだろう。醤油や味噌もやはりどちらかというとアジアの味付けベースである。

だから、全く違った味で育ってきた国の人間が一緒に生活するとなると、味の好みが合わないという現象が起こるのも理解出来る。どちらか一方の国の味が日常の食卓に多く並んだりすると、相手の方が「たまには自分の国の味ものを食べようかな。」みたいな事になるのだと思う。

例えば、日本在住の海外の男性に仮に日本人の奥さんとそのお子さんがいた場合、仮に奥様が作った食事が日々多く並ぶ事になったとしたら、内容によってはご主人にとって食べられるもの、苦手なものも出てくるのではないかと私は勝手に推測している。

もしそのご主人が料理好きな方で、しょっちゅう自分の国の食事も自炊をするのであればその辺の問題は解消されるのかもしれないが、自国の食材が手に入りにくかったり、宅配ピザの様なジャンクな味が好み、という方であれば結構難しいのかもしれない。宗教的な理由により食べられるものに限りが出てくる事もあるだろう。

食卓にお互いの国の様々な食事が並べば解消されそうな気もするが、それを毎日作るのは至難の業だ。更に共働きとかだったりするとかなり大変だと思う。

だから、日本に長年住んでいるイタリア人であっても、イタリアンがやっぱり落ち着くという人ならば和食よりもイタリアンを日常の食事として食べる回数は多くなるような気がする。もし自炊をしないのであれば外食という選択になるだろう。

でももしかしたら和食の方が好きという方もいらっしゃるかも知れない。だから国際結婚とは言っても、家庭によって様々であるだろう。

海外住まわれている方はその辺、どのように解消しているのだろう。自炊出来る方であればそこは何となく解消されそうだが、近くにアジアンや日本食のスーパーがなかったり、自炊も苦手で日本食レストランもない場合はどうされているだろうとふと思った。

そういえば、うちの小魚が育った保育園では、昆布と椎茸などで出汁をとったお吸い物が給食に出ていた。保護者会で給食の味見をした際に出汁の味が美味しかったのを覚えている。

だから、お味噌汁やうどんの汁の出汁が変わった時は、味の違いを感想として言ってくれる。

うちの小魚はお刺身やお寿司が好きで、ホルモンも好きだ。うどんも好きだし、チャーシューも好きらしい。韓国のお土産で頂いた手作りの”龍のヒゲ”(?)という白いふわふわしたお菓子を食べたときは感動していたし、洋菓子より和菓子が好きで、わらび餅なんかは大好物である。餡子に関しては好みは私と真逆で、彼女は断然こしあん派。

でも、ピザも好きだ。ピザは毎回マルゲリータを注文。パンツェロッタは大好物だし、ジェラートを頼むときは3種類くらいの味を選び、ピスタチオがかなりの確率で選ばれている。

以前、イタリアに二人で行く機会があった時、私はうどんの乾麺、麺つゆ、だしの素、お味噌、のり、日本のマヨネーズ、お米等を持っていった。彼女のためだ。

たまにツナマヨのおにぎりやうどんが食べたくなるらしい。滞在中イタリアのお魚屋さんでマグロを見つけたときは、生で食べられるか確認して購入。家でマグロ丼を作って小魚と食べた事があった。

片言のイタリア語を何とか駆使し生で食べられるか聞いた時は、そこに買い物に来ていたイタリア人のおばさま達の視線をかなり感じた。きっと”え?生で食べるの?信じられない。”みたいに思われていたのかもしれない。。。。

海外在住の私の友人達が日本に一時帰国する際は、”日本で食べるもの・やりたい事”をリストアップし、短期間に様々なスケジュールを詰め込み堪能して帰る。

その逆も然り。イタリア人は自国に帰ると家族と食卓を囲み、美味しい食事を沢山堪能し、そして名残惜しそうに日本に戻ってくる。イタリアは美味しい物の宝庫である。

どの国にどれくらい住んでいても、やっぱり育ってきた味というのは味覚のベースになるのだろう。そして海外生活をしていれば、自国に帰った際その味に安心感を感じる事もあると思う。

以前都内に住んでいた時、都内にある海外レストランを巡ってみたいと考えていた事があった。結局なかなか出来ずに引越してしまったが、日本にあるその様なレストランは、日本在住の海外の方にとって、安心出来るスポットの一つなのかも知れない。

P.S トップの写真は、南イタリアのマンマが常備しているトマトの瓶詰め。多分今くらいの時期、南イタリアではトマトを大量に購入し、自宅でパスタや煮込み料理に使用するためトマトの瓶詰めを作ります。それを一年かけて使用していく。勿論スーパーでも普通にトマトの瓶詰めは売っていますが、南イタリアではまだ自宅で保存用の瓶詰めを作る家庭もあります。

因みに、先日小魚が学校から味噌の作り方の冊子を持って帰ってきたので、来年味噌作りに初チャレンジを考えている私です。出来るだろうか。。。。

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