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本会議:子ども・子育て支援法改正案 質疑(中島克仁2019/03/12)

子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案(衆議院本会議)

医療制度改革/かかりつけ医の制度化

○中島克仁議員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。会派を代表して、子ども子育て支援法改正案について質問いたします。
 「増税の前にやるべきことがある」。2012年初当選した総選挙で必死に訴えてきた言葉です。その主眼は、医療制度改革を中心とする社会保障制度の抜本改革です。その後、消費税率は8%となり、さらに10%への引き上げが予定されておりますが、肝心の社会保障制度改革は立ち遅れています。既得権益と戦い、国民に必要な改革を断行すべきという思いはより強くなり、信頼する仲間と政策グループ「GO-NAIS」を結成し、先週には児童虐待について緊急医療提言を行うなど、活動を続けております。
 少子高齢化・人口減少社会に突入した我が国の社会保障、特に医療制度は、疾病構造の変化、国民ニーズの変化に加え、財政的にも限界がきております。増税するならば、同時に医療制度を初めとする社会保障制度全般の抜本的な見直しを始めなければ間に合いません。疾病構造、人口構造の変化。国民の不安解消のために、医療財政の構造改革、抜本的な医療制度の見直し、再構築が必要と考えますが、総理の見解を求めます。
 医療制度改革の中心は、かかりつけ医の制度化。かかりつけ医を登録制・包括報酬制度にしていくことと考えております。この件に関して、我が会派の重徳和彦議員が2月14日の本会議で根本厚生労働大臣に質問したところ、「かかりつけ医の普及定着に取り組んでまいります」と答弁をされました。現在、我が国にかかりつけ医とされる医師は何人いて、今後何人を目標としているのか、政策効果の評価をどう認識しているのかお尋ねをいたします。
 我々は「医療の民主化」を掲げ、医療、福祉、予防、介護、それぞれの壁を打ち破り、信頼される医療制度に再構築するための具体的な政策を提案してまいります。

児童虐待防止

○中島克仁議員 児童虐待について、児童相談所への相談件数は年々増加し、重大な児童虐待事件も後を絶たないなど、深刻な状況です。社会全体でこの現実を受けとめ、向き合っていかなければなりません。
 通報・相談件数がふえているのは、これまでのさまざまな取り組みの結果とも言えますが、そもそも日本全体で児童虐待がふえているのか減っているのか、政府として現状をどう捉えているのかお尋ねをいたします。
 加えて、総理ご自身は、児童虐待の本質的課題はどこにあると考えておられるのかお尋ねをいたします。
 児童虐待については多くの要因が入り組んでいることから、さまざまな角度からアプローチが必要だと考えられます。虐待の予防、発生リスクへの対応も重要です。経済的困窮など貧困問題も重要なリスク要因であります。「介護離職ゼロ」「待機児童ゼロ」と言うならば、総理、ぜひこの場で「子ども貧困ゼロ」「児童虐待ゼロ」を実現すると、国民に向け明確に宣言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 児童虐待対応においては、言うまでもなく子どもの人権・命が最優先されなければなりません。目黒区・野田市の事案において、虐待の身体的兆候を見る医師の第三者的な所見が軽視されたことが重大事件に発展した要因となっていることから、我々は医療的観点からの取り組みが重要と考えております。
 虐待の身体的兆候を見逃さないよう、専門的知見のある医師が第三者的に児相の判断に関与することを制度上位置づけることが必要と考えますが、見解を求めます。
 加えて、早期発見から迅速な対応がされるよう、医師に対して研修を義務化し、医療の重層的な虐待対応体制を実現する必要があると考えますが、ご見解をお尋ねいたします。

幼児教育無償化

○中島克仁議員 幼児教育無償化は、一昨年の衆議院選挙に突如総理の独断で決められ、政争の具として利用されました。待機児童対策や保育の質の確保に関する議論を置き去りに、なぜ幼児教育無償化が優先なのか、いまだ理解できません。保育士の処遇改善、児童虐待問題など、喫緊の課題は数多くあります。社会保障・福祉の目指すべき全体像、グランドデザインを示された上で優先順位を決め対応していくべきだと考えますが、消費税の増収分の使い道に幼児教育無償化が最優先される明確な理由をお示しください。
 今回の法律案では、無償化の上限額が全国一律で設定されているなど、費用負担の地域への配慮が不十分です。実態として、保育に投入されている補助金は自治体によって大きく異なっており、それぞれ独自に上乗せ補助が広く行われております。幼児教育の重要性や子育て世帯の経済的負担軽減の観点から無償化を進めるのであれば、まず市区町村間で保育の費用負担や質にどの程度差があるのか、他の自治体と比べて保育料負担が重い自治体や保育の質が悪い自治体を把握し、それぞれに対する支援のあり方を検討することが必要と考えますが、見解を求めます。
 今回の無償化の対象には認可外施設も含まれています。昨年、内閣府が公表した保育施設等における事故報告集計において、入所児童数の比率を考慮した比較では、認可外保育施設の死亡事故発生率は認可保育所の10倍を超える利率となっております。安全が確保されていない認可外保育施設を無償化の対象にするのは、保育の質を無視し、なし崩し的に子どもの命を危険にさらすことになりかねません。「子どもの権利条約」にも反するものだと考えますが、見解を求めます。
 教育の質のチェック、施設ごとの監査結果の公表、不適切な施設の閉鎖などの仕組みを設けるなど、新たな基準や監査制度を構築することが優先だと考えますが、見解を求めます。
 最後に、今回の幼児教育無償化は、待機児童問題や保育士不足が一層深刻化することが予想されること、幼児教育の質が向上するという展望が見えないこと、無償化の恩恵が高所得者層に偏るなど構造的な問題があることを指摘し、私の質問を終わります。

【答弁】医療制度改革

○安倍晋三内閣総理大臣 中島克仁議員にお答えいたします。
 医療制度の見直しについてお尋ねがありました。
 少子高齢化の進展や疾病構造が大きく変化する中で、我が国の医療制度についても、こうした時代にふさわしい制度へ進化していくことが求められています。このため、地域における医療ニーズなどに適応した医療提供体制の再編や、地域包括ケアの推進、予防健康づくりに対するインセンティブの強化により、健康寿命を延ばし「生涯現役社会」をつくり上げていくとともに、費用と負担の見直しにより医療保険制度の持続可能性を確保することなど、「人生100年時代」を見据えた改革を進め、全ての世代が安心できる制度の構築に努めてまいります。

【答弁】児童虐待防止

○安倍晋三内閣総理大臣 児童虐待の現状と課題についてお尋ねがありました。
 平成29年の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、過去最多の約13万件であり、前年度に比べて約1万件の増加となっています。増加の要因については引き続き分析が必要だと考えていますが、国民の、関係機関の、児童虐待に対する意識が高まったことや、警察などの関係機関との連携が強化されたことに伴う通告件数の増加も影響しているのではないかと考えています。
 児童虐待防止に関しては、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援を切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要だと考えており、その一環として、去る2月8日にも新たな対応を指示したところです。
 また、今国会に提出を予定している児童福祉法等の改正法案において、体罰禁止の法定化、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう一時保護等を行う介入の担当者と保護者支援の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化など、実効性のある対策を盛り込むよう準備を急がせているところであります。何よりも子どもの命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
 子どもの貧困対策や、児童虐待防止対策についてお尋ねがありました。
 子どもの貧困対策については、これまで子どもの貧困対策に関する大綱に基づき、子どもへの学習支援や居場所づくりといった生活支援、保護者に対する就労支援、養育費の確保といった経済的支援などの総合的な施策を展開してまいりました。また、平成31年度内を目途に新たな大綱を作成することを目指し、具体的な検討を開始しています。
 また、児童虐待防止対策については、先般指示した在宅児童の安全確保・安全確認や通告元の情報取得といった緊急的な対策を講じるとともに、今国会に掲出予定の児童福祉法等改正案に実効性のある対策を盛り込むことにより、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。

【答弁】幼児教育無償化

○安倍晋三内閣総理大臣 消費税の増収分の使い道に無償化が優先される理由についてお尋ねがありました。
 少子高齢化、そして「人生100年時代」にあって、我が国が誇る社会保障のあり方もまた大きく変わらなければなりません。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、さらには現世代まで、広く安心を支えていく全世代型社会保障への転換を成し遂げなければなりません。その重要な第一歩として、今般、消費税率引き上げ分の使い道を見直し、子育て世代・子どもたちに大胆に投資し、幼児教育・保育の無償化に取り組むこととしたものであります。今後、「生涯現役時代」の雇用制度改革や、医療・年金も含めた社会保障全般にわたる改革を初めとして、全ての世代で安心できる社会保障制度を構築するため改革を進めてまいります。
 なお、幼児教育の無償化について、自民党においては政権を奪還したときから公約の中に「幼児教育の無償化を進めていく」ということを申し上げてきており、私の独断あるいは政争の具といった指摘は全く当たりません。
 各自治体における子育て支援についてお尋ねがありました。
 我が国最大の課題である少子高齢化を克服するため、消費税率引き上げ分の使い道を変更し、本年10月より3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育・保育を一気に無償化することとしました。地方自治体によっては既に独自の取り組みにより保育料の負担軽減を行っていると承知しています。こうした自治体独自の財源による取り組みと今般の幼児教育・保育の無償化が相まって質の向上やサービス量の拡大など子育て支援の充実につながるよう、自治体ともよく連携してまいります。
 認可外保育施設に対する指導監督の仕組みの構築についてお尋ねがありました。
 本年10月から実施する幼児教育・保育の無償化に当たっては、待機児童問題によりやむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々も負担軽減の観点から無償化の対象としています。無償化を契機に認可外保育施設の質の確保向上を図るため、児童福祉法に基づく施設閉鎖命令など都道府県等が指導監督権限を適切に執行することが重要です。このため、指導監督基準等の明確化を図るとともに、特にベビーシッターについては保育従事者の資格や研修受講などについて新たな基準の策定を行うこととしています。
 残余の質問につきましては関係大臣から答弁させます。

【答弁】医療制度改革(かかりつけ医の制度化)

○根本匠厚生労働大臣 中島克仁議員にお答えをいたします。
 かかりつけ医の人数と、その目標数、及び政策効果の評価についてお尋ねがありました。
 患者が身近な地域でかかりつけ医を持つことができるよう、環境整備を進めることが重要と考えております。
 行政がかかりつけ医の認定等を行っているものではないため、ご指摘の人数の把握や目標数の設定は困難ですが、かかりつけ医の普及のプロセスに着目し、2020年度までに全ての都道府県においてかかりつけ医の普及に資する事業を実施することを目標に、今年度より事業の実施・未実施を把握して政策評価を行っております。
 平成30年度の事業の実施状況については29道府県にとどまっており、厚生労働省としては、都道府県や医師会等の関係団体と連携しながら引き続きかかりつけ医の普及定着に取り組んでまいります。

【答弁】児童虐待防止(医療的観点からの取り組み)

○根本匠厚生労働大臣 医師が児童相談所の判断に対応することについてお尋ねがありました。
 児童相談所において、医学的な知見を踏まえたケースにケース対応ができるよう、児童相談所における意思決定に医師が日常的に関与し、児童福祉司等とともに対応できるような体制整備を推進することは重要であると考えております。このため、今般提出予定の児童福祉法等の一部改正法案においては、児童相談所における医師の配置の義務づけなどの内容を盛り込む方向で検討中であります。
 児童虐待対応に携わる医師に対しての研修義務化についてお尋ねがありました。
 児童虐待について、早期に気づき、的確な支援につなげていくため、地域における医師などの医療関係者や医療機関との連携体制を構築することは重要と考えております。政府としては、医師等の医療関係者の研修費用に対する補助等を行っており、まずはこうした取り組みを進めることにより児童虐待にかかわる医師の確保等の体制整備を進めてまいります。

【答弁】幼児教育無償化(認可外施設)

○宮腰光寛少子化対策担当大臣 認可外保育所・保育施設の質や安全の確保についてお尋ねがありました。
 今般の幼児教育・保育の無償化に当たっては、待機児童問題によりやむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がいることから、こうした方々についても負担軽減の観点から対象とすることといたしました。
 認可外保育施設の質の確保向上させることは重要であると認識しておりまして、厚生労働省を中心に、指導監督基準を満たすための支援や認可施設に移行するための支援を進めてまいります。あわせて、重大事故の防止に関する取り組みにも力を入れてまいります。
 児童の権利に関する条約の趣旨も踏まえ、引き続き保育施設における安全性や質の確保についてしっかりと取り組んでまいります。

(以上)

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