とんでもなく卑屈で天邪鬼な僕を変えてくれた一つの物語
あともうちょっとで始まる僕の初舞台。
本当は今すぐにでもその場から逃げ出したいくらい緊張してるのに、
これから始まるものになぜだか胸の高まりを抑えられない僕。
久しぶりの、この感覚に「ただいま」って声をかけると、
「おかえり」って言葉が返ってくる。
そんな自分にどこか懐かしさを感じながら、
舞台にいる自分は確かに前を向いていて、
なんだか新しい自分に出会えた気がして、
嬉しさのあまり、顔が綻ぶ。
あぁあ、終わちゃった…僕の初舞台。
もう、終わっちゃたんだ…
2カ月前に話を聞いたときは、初舞台で主役という大役に戦々恐々としていたけれど、
終わってみればあっという間で、
あぁこんな感じなのかって冷めた自分もいるけれど、
舞台のことを思い出すと、まだ胸の奥から熱いものがこみあげてくる。
初めての舞台を終えて、
いろいろ感じることがたくさんあって、考えることもたくさんあって、
そいつら全部を整理するのに4日もかかってしまった。
だから、いろいろと書きたいことがいっぱいある。
書きたいことはたくさんある。
けれど、今回はその中でも特に自分の中で強く感じたこと、大きく変化したことについて書いていこうと思う。
・・・・・・
まぁ、こんな年の瀬にダラダラ書くのもあれだから、僕の伝えたいことをまず最初に書いておこうと思う。
それは、「人は一人では生きていけない」っていうこと。
19年という僕の短い人生の中で耳がタコなるくらい聞いた言葉。だから正直なところ、これを読んでいる皆さんにとっては当たり前のことかもしれない。
でも、少し前までの自分にとってこの言葉はただの偽善でしかなかった。
別に一人でも生きていけるだろって思っていた。
本当のことを言うと、そんな言葉は一人で生きていけないやつの甘えだとさえ思っていた。
だって、僕にはどんな困難にぶち当たっても、1人で乗り越えてきたっていう自負があったから。
どんなに落ち込むようなことがあっても、どんなに悲しくて涙を流しても、どんなに過去の自分を憎んでも、結局はそういう自分と真正面から向き合って、自分のマイナスの部分をプラスに昇華してきたっていう自負があったから。
誰かの助けなんかいらない。他人を信じても仕方がない。結局は自分次第なんだって。
そうやって自分に言い聞かせて、どんな困難も僕は自分一人の力で乗り越えてきた。
そういう自負が、僕の中には確かにあった。
けれど、本番3日前の通し稽古を終えたとき、その自負は僕の中から姿を消していた。
・・・・・・
本番まであと3日。
そんな状況の中で迎えた初めての通し稽古。
えもいえぬ緊張ばかりが先行して、後悔ばかりが残ってしまった。
頭の中は「後悔」の二文字で埋め尽くされて、ただただ頭を抱えて、覇気のないため息をつくだけ。
正直なところ、本番3日前にしてすっかり自信を失ってしまった僕は翌日の稽古直前までずっとそのことばかりを考えていた。
そしてそんな僕の「後悔」などつゆ知らず、次の稽古は刻々と迫ってくる。
だから僕は、この負のスパイラルからどうにか抜け出さないとって思って、
次の稽古のために気持ちを切り替えないとって思って、
今は後悔してる場合じゃないぞって自分に言い聞かせて…
また、自分一人の力で立ち直ろうと思っていた。
けれどそんな時、本当に僕を支えてくれたのは自分じゃなかった。
目の前にあったのは、卑屈なうえに天邪鬼でどうしようもない僕を、励ましてくれたり、尊敬してるって言ってくれたり、好きだって言ってくれた大切な人たちからの手紙だった。
そこにある言葉たちは自分に対する憎悪や後悔で冷え切った僕の心に、温もりを与えてくれた。
こんな僕でもいいって言ってくれた。
・・・・・・
そういえば……そうだった。
これまでの僕にはどんな困難にぶち当たっても、自分一人の力で乗り越えてきたっていう自負があったけれど、
本当に心が疲れた時は、いつも大切な人たちの言葉に勇気をもらっていた。
どんなに辛くても、どんなに悲しくても、いつもそばにいてくれたのは、
僕のことを大切に思ってくれる人たちだった。
そうか、僕は、一人じゃなかったんだ。
僕はいつも誰かに支えられて、ここまで生きてこれたのか……
あぁあ、遅いよ、気づくのが。
だから遅すぎるって、はぁ。
・・・・・・
「人は一人では生きていけない」
物心ついてから9年くらいかな、
やっとこの言葉の意味を本当に理解することができた。
僕はこれまでどんな困難にぶち当たっても、自分一人の力で乗り越えてきたとばかり思っていた。
でも、実際にはたくさんの人たちに支えられて、たくさんの言葉たちに励まされて、今の自分がいる。
確かにそう思える自分がここにいる。
だから僕はこれからの人生、自分一人のためじゃなく、
僕を大切に思ってくれた人たちのためにも生きていきたいと思う。
こんな僕を、大切に思ってくれた人たちの想いに応えられるように。
今日とは違う明日を目指して、一歩ずつ、いや半歩でも歩みを進めていきたい。
そしていつか、あのときの自分を支えてくれた大切な人たちのように、
僕も誰かにとっての大切な人となれるように……
でも、それはちょっと欲張りすぎかな……
最後まで読んでいただきありがとうございます。 皆様から頂いたサポートは今後の自己研鑽のために使わせて頂きます。 僕の書いた文章で何か少しでも感じていただけたら、僕にとってこれほどうれしいことはありません。