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鏡越しに唱える 今日を生きることば#2

「助けが欲しいって 言えなかったから せめて今 助けてあげたい」

(「魚肉ソーセージと人」矢野顕子、アルバム『音楽はおくりもの』より、2021年、Victor Entertainment)

こんにちは、Shadeと申します。
僕は30代、既婚(子無し)、バイセクシャル、メンタル疾患持ちの男性です。
このコラムでは、映画や小説、ドラマ、音楽など、サブカル大好きな僕が日常的に触れるあらゆるものから拾った、「今日を生きる」ための言葉を記録していきたいと思います。

上手に甘えるのは…

突然ですが、皆さんは人に甘えたり、頼ったりするのが得意な方ですか?
僕は大の苦手です(苦笑)
どんなに大変な時でも、心身ともに辛い状況でも、少なくとも表面上は、「万事順調」という顔をして、これまで生きてきたような気がします。
それは僕の欠点である、人に弱みを晒すことができない、プライドの高い性格がそうさせていた(自分のセクシャリティーに蓋をして、見ないふりをしてきたのも、きっと同じ仕組みです)のだと思いますが、結果として、数年前に心が限界を迎えて、メンタル疾患を発症してしまいました。
思えば、自分は人に甘えない反面、人から相談されたり、何か頼み事をされたりすることは、どちらかといえば多い方だったような気がします。
そして、それに応えている時の自分も嫌いじゃない。というか、仕事であれプライベートであれ、人からの頼み事に応えているときの自分って、どこかおかしなアドレナリンが出て、ハイな状態になっている。それが難題であれば難題であるほど、困ったことにアドレナリンの量は増加します。
今自分は「誰かの役に立っている」、という意識が、たとえ体力や気力が限界を超えていたとしても、無理やり自分を動かしているような…そんな感じでした。仕事でいえば、自分から「やりがい搾取」にハマりにいっている状態。そりゃあ、メンタル疾患も発症します。
けれど、生来の性格を変えるのはなかなか難しいもの。
僕は一度休職期間を経て、昨年同じ部署に復職したのですが、現在は自分のキャパシティーの限界を常に見極めるよう細心の注意を払いながら、コップの水がこぼれないように、こぼれないように、何とか働いているところです。

この世の全ては「お互い様」だと言い切れる

冒頭に引用したフレーズは、言わずと知れたシンガーソングライター・矢野顕子さんの曲の一節。この曲、タイトルこそユニーク、というかユーモラスな感じこそあるものの、実は矢野さん独自の人生観や豊富な人生経験が滲み出た、めちゃくちゃ深い曲なのです。
その中でも、このフレーズは、僕が仕事で最も辛い時期に聴いていたというのもあってか、非常に心に刺さりました。
その後、数年かかりましたが、ようやく「助けて欲しい」と言えるようになった僕は、心療内科にかかり、休職を経験し、仕事をセーブしてもらいながら働くことを覚え、以前よりも少し楽に呼吸ができるようになりました。
また、自分のセクシャリティと向き合い、奥さんにカミングアウトができたのも、結局は誰かに「助けて欲しい」と言えるようになったということが大きいと思うのです(noteでこうした自分の正直な気持ちを書くことができるようになったのも同じことです)。
このフレーズの後半部分は、「せめて今 助けてあげたい」とつながりますが、これもまたよく理解できる言葉。誰かを助けることで、自分も救われる。そんな経験が、誰にでもあるんじゃないでしょうか?
特に、自分が辛い時に辛いと言えなかった人ほど、同じように辛い人の気持ちや状況が手に取るように分かる。
結局、世の中の全ては「お互い様」なのです。僕が自分だけでは抱えきれない気持ちを奥さんに吐き出したように、願わくば、今度は奥さんからも、同じように抱えている悩みを何でも打ち明けてほしい。
もちろん、僕がカミングアウトしたことで奥さんの心が揺れている部分も大きいかと思うので、そこも含めてできる限り受け止めたい。勝手な論理と思われるかもしれませんが、本心からそう思っています。

「ひとりひとりは ひとりを生きる」

これまで書いてきたことと矛盾するようですが、この曲の終盤にはこんなフレーズもあります。これもまた真理。自分が抱える孤独は、結局は自分だけのものです。
けれど、だからこそ、大変な時には「助けて欲しい」というサインを出すことに意味がある。何故なら、それがやがては、誰かが「助けて欲しい」ときのサインを受け取ることにもつながるからです。
人間は究極的には「ひとり」であることを理解しつつも、必要な時には支え合う。これこそ、人としての本当の成熟に繋がる考え方ではないでしょうか?
色々な解釈があるかもしれませんが、僕はこの曲をそんな風に理解しました。何かがあった時、プライドやカッコつけを優先して、「大丈夫なフリ」をしてしまう癖を治すにはまだ少し時間がかかりそうですが、そんな時はこの曲を思い出し、「助けて欲しい」と正直に言える人間になりたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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