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古代の鉄と神々・真弓常忠

研究者であり、自身神官でもある真弓常忠氏による大変な労作。全国各地を歩き回り、ときに自ら手を動かして古代の手法を再現した記録はそれを読むだけでも一大スペクタクルで、心踊ります。

弥生時代を中心に信仰の興り、技術革新やそれに伴う祭祀の移り変わりなどに対する考察は大変に興味深く、日本の信仰がいかに金属資源と深く結びついてきたかということを考えさせられます。

特に、褐鉄鉱の団塊が湖沼やそこに棲息する植物と深く結びついているという点はこの本を読んで初めて知ったことで、そこから種々の信仰や氏族形成に対する理解も深まります。

泰斗に対して不遜を承知であえて書くならば、全てを製鉄に帰結させているきらいはあり、本書を契機とした後発研究による否定意見などがありもします。本書に限ったことではありませんが、読む際には鵜呑みにすることなく、自身で検討、他資料を参照しながら読む必要があるでしょう。

然しながらそれが本書の価値を損なうものでは全くなく、この分野における重要資料となっている証でもあり、何より、本人の汗と鉄の匂いすら紙間から漂ってきそうなくらいの臨場感をもった、興奮さめやらぬ本であることは強調しておきたいと思います。


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