アクティビスト対策における過剰反応問題
A:アクティビスト対策で気を付けるべきことは何ですか。
T:何より重要なことは過剰反応をしないこと。例えば、アクティビストという評判があるだけで、面談を拒否するのは一番避けたほうが良いよ。
A:それはどうしてですか。
T:コーポレートガバナンス・コードもあり、株主との対話が重視されている。アクティビストだからというだけで面談を拒否することは、特定の株主だけを不公平に扱うことになる。百害あって一利なし。
A:ただ、どの企業もアクティビストと積極的に面談したくないですよね。
T:そうだと思う。けれど、少なくともIRの現場レベルでは情報収集目的を兼ねて、面談をした方が良い。アクティビストと言っても、投資先すべてに対して、新聞等で話題になるようなアクティビスト活動を行うわけではない。そして、初回の面談からいきなり、強硬な主張をしてくるわけではない。どんな人なのかを把握するためにも、面談しておいたほうが良い。
A:確かにそうですね。ただ、相手の素性は事前に調査しておきたいです。
T:その作業は必須。これはアクティビストだけに限らないよ。個人に近い法人や、よくわからない組織がいることは事実。自社で調べるだけでなく、専門の調査会社などにも調査してもらった方が良いよ。
A:そんな専門会社があるのですか。
T:あるIRコンサルティング企業は都度、調査してくれる。具体的な調査ポイントも伝えれば、そうした調査もしてくれる。
A:いろいろな会社があるのですね。アクティビストよりも新興勢や実態が不明なところではより必須ですね。
T:過剰反応に戻るけど、具体的な要望も出されていない点で、株主還元などを強化したり、必要な投資を抑えたりしないこと。日本企業のアクティビスト対応で問題なのはこの点。アクティビストからすると、自分たちの威光で、企業が勝手にひれ伏してくれるのが最も費用対効果が高いから。
A:昔の総会屋みたいですね。
T:総会屋みたいなところも一部にはある。ただ、多くはそうではない。そうではないにもかかわらず、勝手に恐れて対話もしないで、株主還元などをしてしまう。
A:日本企業はアクティビストが来たらとにかくすぐに追い出したいと焦ってしまう傾向があるように思います。
T:アクティビストにとって理想は、取得の事実だけで、勝手に企業が忖度して動くこと。次に理想は対話だけで要望が叶うこと。次はキャンペーンなどをして、企業が要請に応じること。最も避けたいのは、株主総会での株主提案まで発展すること。アクティビストも、リソースは有限。投資先すべてに大々的なキャンペーンを張ることはできない。
A:実際、どのパターンが多いのですか。
T:話題になるものはごく一部。大部分は水面下での交渉で決着。ただ、実際には焦って勝手に忖度して動いてしまっているケースも少なくない。
A:どうしてそうなってしまうのでしょうか。
T:日本企業の経営陣は、事業運営は上手でも、外圧が生じた際、有事が発生した際の対応に慣れていないことが多い。あと、社長がボスであとは子分みたいな会社などだと、真の対話は見られないかも。
A:アクティビストは、そうした社内の力学、メカニズムもわかっているのかもしれないですね。
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