ターミナル 10日間の軌跡 (下)
※この物語は、世界で唯一空港内に閉じ込められた鍼灸師の物語である。
▽目次
・希望
・日本人の心
・夜明け
・天国
・宴会
・PCR検査
・スーツを着た日本人
・ロシア人が消えた人
・戦友との別れ
・カーゴ便
・最後のチャンス
・45分後
・東京
希望
4名のスタッフが空港のどこにいるかもわからない場所へと駆けつけてくれました。
「これでとりあえずここからは出れるやろ。」
名簿のようなものを手に人数、国籍、最終目的地の確認を開始。最後の人の確認を終えると…
「また戻ってきますね。」
…と言い残し、その場を後に。
「連れて行ってくれるんちゃうんかい!こっから出られへんって事?」
僕たちが、こんなところに取り残されている事を確認して貰えたものの、希望は一瞬で断たれました。
何か食べ物や飲み物は貰えないかとLisannaが交渉し、次戻ってくるときに持ってきてくれる事に。
夜中1時を周り、収容されてから4時間以上経過、前日から空港に居る者にとっては疲れが出てきていました。
日本人の心
進展しない状況。水も食料も無い。
この状況で、パニックが起きてしまうのはマズイと思い、自分なりにできる事をしてみる事に。
さっそく鞄の中から、機内で友人のCAさんから差し入れでいただいた水やパン、チョコレートにクッキー。空港内で購入したお菓子を取り出し、部屋の中央にあったテーブルへ。
「皆さんで召し上がって下さい。」
と伝えました。
中には、遠慮する方もいたので、チョコレートやクッキーを配り歩き、積極的にコミュニケーションを図りました。こんな状況下だからこそ、場の雰囲気がとても重要でした。
「Thank you!!! You are such a nice guy.」
※ありがとう。お前めっちゃええやつやな!
そんな声をかけていただき、この状況の中で笑顔が見れた。それが、僕の励みになりました。
ここから先は
3,413字
/
6画像
¥ 300
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?