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結局、みんなコイツになりたいんだろ?【映画:ビッグ・リボウスキ】

 最近、見る映画見る映画全部が名作ばかりで、そろそろ『スター・ウォーズ:エピソード9』レベルのゴミ映画を引いてしまいそうでおびえています。たいがです。本日もよろしくお願いします。

 今日は、ずーーっと見たいと思っていた映画、『ビッグ・リボウスキ』(1998)でございます!!


 犯罪映画の巨匠、コーエン兄弟の第6作目となる本作。あの有名な『ファーゴ』の翌々年に公開されたため、映画製作費もファンと批評家の期待も膨らみまくっていたが、なんと興行収入と当時の評価は散々だったらしい。

 たしかに『ファーゴ』のあの感じ、謎のゆるさもありつつ、しっかり恐ろしい犯罪映画っていう新感覚のものを見せられたら、そりゃあ同じようなものを期待するよね、としか言いようがない。

 この『ビッグ・リボウスキ』も一応犯罪映画ではあるんだけれども、ちっとも緊迫感がない。なんならクラス会でも開けば、解決できちゃうんじゃないか?ぐらい思ってしまうほど

 その理由は、このリボウスキにある。


 リボウスキ、本名、ジェフリー・リボウスキ、通称、デュード(「デュード」ってのは、日本語で「野郎」的な意味なので、もうのっけからふざけている。最高だ。)は、自分の身に起きたことにいちいち感情的になるものの、その数分後にはそんなことは忘れて、風呂に入ってしまう男だ。

 デュードの存在自体が、この映画の「謎のゆるさ」と「シュールさ」を演出していると言ってもいいだろう。彼にとってのリラックス方法の一つに「音楽を聴く」というのがある。どんなアーティスト?と思っただろう。彼がヘッドホンで聞くのは、『ベニスビーチボウリング大会1987』の音だ。どういうことかって?ボウリング大会での環境音を聴いているのだ。こんな奴に常識など通じない。ちなみに、彼はお風呂で『クジラの鳴き声』のテープをずっと聴いている。そんな男だ。


 そして彼の友人は、ウォルター。彼はベトナム戦争の退役軍人である。何かあればすぐ「ベトナムでは~」と言い出し、デュードをイラつかせる。彼はまさに90年のオヤジ世代を象徴する存在だろう。60年代の終わりごろ、つまりまだ30代だったころに、おそらくベトナム入りした彼は、映画内ではすでに50代。完全に面倒なオヤジ世代だ。愚痴も止まらない。

 彼は過去に生きる人間だ。戦争にすがり、絶対に勝負には負けないという「男らしさ」にすがる。それは劇中で彼自身も言っていた。それに対して、デュードは文字通り「無頼」な人間だ。誰にも頼らず、自分のために行動する。後のことも先のことも考えず、イマだけを見つめる生き方だ。

 そんな彼の生き方は、『デュードイズム』として成立し、一つの哲学として成立している。以下引用!

The Dudeist belief system is essentially a modernized form of Taoism stripped of all of its metaphysical and medical doctrines. Dudeism advocates and encourages the practice of "going with the flow", "being cool headed", and "taking it easy" in the face of life's difficulties, believing that this is the only way to live in harmony with our inner nature and the challenges of interacting with other people. It also aims to assuage feelings of inadequacy that arise in societies which place a heavy emphasis on achievement and personal fortune. Consequently, simple everyday pleasures like bathing, bowling, and hanging out with friends are seen as far preferable to the accumulation of wealth and the spending of money as a means to achieve happiness and spiritual fulfillment. As the Dude himself says in the movie: "the dude abides", which essentially just means to keep existing.

デュードイズムの信念体系は基本的には、道教から形而上学的・医学的な教義をすべて取り除き、現代風にアレンジしたものである。デュードイズムは、人生の困難に直面しても「流れに身を任せる」、「冷静になる」、「気楽になる」ことを提唱・奨励し、これが人間の内面や他者との交流の困難と調和して生きる唯一の方法であるとしている。また、成果や財産を重視する社会で生じる物足りなさを和らげることも目的としている。その結果、入浴やボーリング、友人と過ごすといった日常のシンプルな楽しみの方が、幸福や精神的充足を得るための手段として、富を築くことやそれを浪費することよりもはるかに好ましいと見なされるようになったのである。映画でデュード自身が「the dude abides」と言うが、これは本質的にただ存在し続けるという意味である。

https://en.wikipedia.org/wiki/Dudeism

 たしかに、ウォルターが犯罪を犯して大量の現金を奪い取ろうとしても、デュードは必死でそれを阻止しようとしていた。これは彼がお金のことなどどうでもいいと思っている証拠だ。

 それに加えて、彼は人と話すときは基本的に酒を飲んでいる。彼にとって酒を飲むことが、"Chill"することであり、それが自分を落ち着かせる唯一の方法であることを、彼は知っているのだ。

 

 この映画自体、デュードイズムの結晶である。絶対に必要のないシーンをわざと織り交ぜて、その無駄感を楽しむ。絶対にデュードが風呂に入るシーンは二つもいらないし、だれかに殴られて幻覚を見るシーンもいらない

 しかし、それがないと、この映画は成立しないのだ。

 ただ存在していること、それ自体が重要なのである。

 これらのシーンが存在していないと、『ビッグ・リボウスキ』ではないわけだから。僕が前からずーーーーーーーーーーーーーーーっと言っているように、無駄はなけりゃダメなのである。


 『ビッグ・リボウスキ』、思っていたよりも傑作でした。

 俺もデュードイズムを信じようかな。とりあえず金を捨てます。

 また明日!

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