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もてはやされまくっている、ビートルズの『リボルバー』に茶々を入れてみようの回(4)

10.For No One


 ポールの曲。

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 リボルバーの中では一番短い曲。

 音の作り自体も結構シンプルで、ビートルズのうち参加メンバーもポールとリンゴだけ。あとは外部ミュージシャンがフレンチ・ホルンを吹いている。

 このホルンがなかなかいい味を出してるんだよね。

 邪魔しすぎない程度に心地よく聴こえるし、男女の別れを描いた割と悲しい歌詞の雰囲気を壊さないような音色、明るく壮大になりがちなホルンだけど、この曲ではそのミニマルさが逆にいい

 あとね、これはすごく評価したいのは、一番最後の一節でホルンが一音だけ流れて曲が終わるんだよ。これってけっこう大きい影響与えてると思ってて、一番印象に残るホルンを最後に流すことで、まだ諦めきれてない恋の余韻を感じさせるっていうかね。そういうのをこのホルンの音から感じるわけですよ。

 なかなかいい曲です。ポールの曲群では隠れがちだけど、もっと評価されるべきだと思う!おすすめ!


11.Docter Robert


 ジョンの曲。

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 リボルバーのジョンの曲の中では、軽快なものにカテゴライズされると思う。"And Your Bird Can Sing"の次ぐらいに明るいんじゃないか?

 リズミカルでシンプル。可もなく不可もなくの曲かと思いきや、0:58あたりと、1:39あたりで突然曲の雰囲気がガラッと変わってすぐに戻る。このブリッジ部分と、急展開さがすごく好きなんだよな~

 実はこの曲、当時、麻薬のディーラーをしていた超有名な医者のことを遠回しに言及してると言われてて、そのブリッジ部分の歌詞は、麻薬を使用して体の調子がおかしくなり始める状況を歌ってるんだよね。

Well, well, well, you're feeling fine
Well, well, well, he'll make you

ほらほらほら、よくなってきただろ
ほらほらほら、彼がそうしてくれるさ

 こういう歌詞にああいう展開だから、これは間違いなく麻薬の効果が効き始める様子を描写したんだろうね。

 いやでもそれだけだし、地味な曲だし、別に好きな曲ではないかな、、、

 これもけっこう飛ばすこと多いです。


12.I Want To Tell You


 ジョージの曲。

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 この曲、割と好きだよ。いや、嫌いではないぐらいかも、、、

 ジョージ・ハリスン生前最後のライブツアーになった日本でのライブの1曲目として選ばれたこの曲、たぶん本人は気に入っていたんだろう。

 ギターのリフはいいと思う。いやさすがに、"Day Tripper"とか、"Satisfaction"レベルの出来ではないけどさ。まぁいいんじゃね?って感じではあるな(適当)


 歌詞はどうやらジョージお気に入りの「東洋思想」をもとにしてるらしいんだけど、俺にはあまりそれがピンとこず(´·ω·`)

 でも、ポールのベースがブリブリ言わせてるのはすごく好きなところ。なんかジョージの曲と同じぐらい音でかいしね。だからミックスの部分は成功してると思うよ。

 ていうかさ、ジョージってギタリストの割にあんまりギタープレイに重きを置いた曲って作らないね。いいんだけどさ。この曲もせっかくリフがいいのに、曲中ではそんなに弾いてないし、そもそもギターの音が聴こえないんですけど??

 これはほんとに可もなく不可もなくって感じだな。たまに飛ばしたり飛ばさなかったり、ってぐらいの曲。佳作。


13.Got To Get You Into My Life


 ポールの曲。

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 さっきの"For No One"とはまったく逆で、こっちはブラスバンドを大々的に持ち込んで、コンサートホールで流れてもおかしくないような厚みのある音作りをしている。その対比がすごくいいよね。

 ていうか、この曲の一番はポールのボーカリストとしての実力でしょうね。歌うますぎ、なんなんマジで

 リンゴのご機嫌なドラミングもいいし、曲中のジョージのサイケデリックなギターソロもいい。あと曲の始まり方もいいね。ぶわーーーーーっと縦にも横にも開けていく感じ。すごくいい。

 歌詞も好きな部分があって、

I was alone, I took a ride,
I didn't know what I would find there
Another road where maybe 
I could see another kind of mind there

僕はひとり車に乗り
そこに何があるのかなんて知らなかったんだ
別の道を行けば、たぶん
なにか別の考えを見つけたんだろうけどさ

 けっこう考えさせる歌詞だよね。

 歌詞の全体的にはよくあるラブソングなんだけど、全体を見たら明らかに女性へのラブソングではなくて、薬物へのラブソングなんだってすぐ気づくと思う。

 でもこの歌詞の部分は、薬物を使う以前の未知なるワクワクした感じと、使ったあとの若干の後悔を感じさせる

 そういう迷いを感じる歌詞がリアルで好きな部分かな。


14.Tomorrow Never Knows


 ジョンの曲。

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間違いなくこのアルバムで一番の問題作でしょう

 割と展開だけみるとシンプルなこの曲は、コード進行も単純らしい(その辺詳しいことはよくわからない)。

 ただ、曲の雰囲気があまりに異常だ

 ぴゅんぴゅん言うのだ。ヘッドホンで聴くとよくわかるけど、頭の中のありとあらゆるところからその音が聴こえてきてわけがわからなくなる

 これはカモメの声とかを収録したテープを逆回転させて出してる音らしいんだけど、これがほんとに癖になる。

 しかもジョンは「数千人ものチベットの僧侶が経典を唱えているような感じにしたい」(wikiより引用)って言ってたらしい。大成功です


サイケデリック・ロックは、"Tomorrow Never Knows"からすべてがはじまったと言っても過言ではない


 歌詞の全体を見てみよう。いかにもサイケデリックだ。

Turn off your mind relax and float down-stream
It is not dying, it is not dying

意識を遠のかせ、リラックスし、下っていく流れに身を任せてみろ
それは死じゃない、それは死じゃない

Lay down all thought, surrender to the void
It is shining, it is shining

思考を全て捨て、虚無に身を委ねろ
それは輝きだ、それは輝きだ

That you may see the meaning of within
It is being, it is being

すると内なる世界の意味が見えてくるだろう
それは存在だ、それは存在だ

That love is all and love is everyone
It is knowing, it is knowing

愛とはすべてで、愛とはみんなのことだ
それは知るということ、知るということ

That ignorance and hate may mourn the dead
It is believing, it is believing

無知や憎悪が、死を嘆くことになるだろう
それは信じるということ、信じること

But listen to the color of your dreams
It is not living, it is not living

でも自分の夢の色に尋ねてみて
それは生きるということ、生きること

Or play the game “existence” to the end
Of the beginning, of the beginning
Of the beginning. Of the beginning

もしくは最後まで「存在」というゲームを遊ぶんだ
始まりの、始まりの
始まりの、始まりの


 え?も一回言って?

 と言ってしまいそうになるこの歌詞は、ジョンが影響されたチベット仏教の教えからインスピレーションを受けているらしく、これらの文字の羅列を見るだけで惚れ惚れとしてしまう。

 ジョージでもポールでもたどり着けなかった、サイケデリック・ロックの入り口に、ジョンがついに到達した瞬間であった。

 僕はこの曲を「聴くドラッグ」と呼んでいて、自由にドラッグが使えない日本でも楽しめる稀有な存在だと思っている。

 なぜか聴いているだけでこの世の全てを完全に理解した気になるのだ。なんとも不思議な曲である。


 リボルバーはこうやって終わるのだ。そしてまたTaxmanがはじまる。

 社会への不満から入り、死や不満、幻想を超えて、思想の奥深くまで入っていくこのアルバムは、ビートルズがアイドルから真のアーティストへの変わっていく、決定的なドキュメントとも言えるだろう。

 そういう意味ではたしかにこのアルバムには無限の価値があるし、その存在の尊さが認められるべきではあると思う。

 ただ、今回振り返ってみて気づいたのは、

 「あれ?捨て曲多くね?」

 ということである。

 みんながリボルバーを褒めまくるから気づかなかっただけで、意外と好きじゃない曲が多かった。これは別に僕の好みの問題なんだけれど、ビートルズの全仕事を振り返った時に、これらは本当に最高の仕事だと言えるだろうか?みたいな曲が多かった印象がある。

 だけどいいアルバムであることには変わりない。

 だから僕はこれからもGood Day Sunshineを飛ばしながら聴いていきます^_^

 また明日!

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!