見出し画像

『ドライブ・マイ・カー』とは、ビートルズの『ラバー・ソウル』である。

 つい先日、『ドライブ・マイ・カー』についての記事を書いたんだけれど、未だに書ける余地がたくさんある。

 この記事で、『ドライブ・マイ・カー』は、ビートルズの"Drive My Car"という曲からきている、ってことはすでに言った通りである。

 この曲は、1965年12月3日に発売された、ビートルズの6枚目のオリジナルアルバムである『ラバー・ソウル』の1曲目に収録されている。

 この『ラバー・ソウル』というアルバムは、ビートルズがフォーク・ロックに挑戦した時期の傑作で、それぞれの曲が深淵で奥ゆかしいイメージを放っている。

 『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹の短編小説が原作になっているが、彼の作品にはビートルズ由来のものが多い。あの有名作、『ノルウェイの森』も、このアルバムの2曲目の"Norwegian Wood (This Bird Has Flown)"という曲から引用されているし、作中には登場人物がギターでビートルズを弾き語るシーンがあるし、この物語は4曲目の"Nowhere Man"という曲で終わる。さらに、2019年には『ウィズ・ザ・ビートルズ』という短編まで発表している。当然、これはビートルズの2枚目のオリジナルアルバムのタイトルである。

 そして、ついに本題に入るが、この『ドライブ・マイ・カー』は僕からすれば、『ラバー・ソウル』そのものなのである

 例えば、主人公の家福は、言うならば"Nowhere Man"である。妻と娘を失い、仕事をするしか生きがいのない彼にとって、何が彼を奮い立たせるのか?何が彼を生かし続けているのか?それは、演劇であることに間違いはないが、それへの愛情すら失いかけるシーンがこの映画内では数多くのシーンで見受けられる。

Nowhere Man, please listen,
You don’t know what you’re missing,
Nowhere Man, the world is at your command
居場所なき男よ、聞いてくれないか
お前は、もう何を失ってしまったかすら、わかっていないんだ
居場所なき男よ、世界は君のものなんだ

The Beatles- "Nowhere Man"

 それに、家福の妻、音は彼からすると魔性の女だ。自分を裏切って、何人もの男と浮気しているのはわかっているものの、それについて問いただすこともできずに、なんとなく付き合ってきた。しかし、いざ彼女が自分の元から突然離れてしまえば、自分の心に空いた穴が決して埋まることはない。それはジョン・レノンの傑作、"Girl"(9曲目)で表現されているものとすごく似ていないだろうか?

When I think of all the times I’ve tried so hard to leave her
She will turn to me and start to cry
And she promises the Earth to me and I believe her
After all this time I don’t know why
どうにか彼女から離れようと思ったことが今まで何度あっただろう
そうしたら彼女はこっちを見て、泣き出してしまうだろう
そして彼女は僕に約束して、僕は安易に信じてしまうんだ
結局のところ、僕にはもうわからない

The Beatles- "Girl"

 家福の妻に対する感情に似たものは、これとは別の曲でも語られている。それはポール・マッカートニーの"I'm Looking Through You"(10曲目)だ。彼が抱える複雑な感情、見かけは同じながらも、壊れてしまった妻との関係。将来を誓い合った妻のことをもう理解できないという様子は、まさにこの曲が語るものと同じだ。

I'm looking through you, where did you go?
I thought I knew you, what did I know?
You don't look different, but you have changed
I'm looking through you, you're not the same
君のことはお見通しだよ、いったいどこに行ったの?
君のことは理解しているつもりだったよ、でも僕は何を知っていたんだ?
君の見た目はあまり変わらないね、でも君は変わってしまったよ
君のことはお見通しだよ、君はもうまったくの別人さ

The Beatles- "I'm looking through you"

 さらに、映画の最後に、家福とみさきがたどり着く結末は、ジョン・レノンの"In My Life"(11曲目)で語られているのではないか?今まで失ってきたもの、人、すべてのものに敬意を払い、愛を込めた傑作だ。そしてこの曲内では、過去の愛と共に、現在の愛についても語っている。

 みさきは母を失ったが、彼女への愛を持ったまま、新たな愛情(映画内では犬であった)をもって生きていく。しかし、家福はどうか?映画内では詳しく語られないが、おそらくこれから先、多くの人々と出会って、新たな愛を構築していくのだろう。そんな希望をもってこの曲を聴きたい。

Though I know I’ll never lose affection
For people and things that went before
I know I’ll often stop and think about them
In my life I love you more
In my life I love you more
過去の人々と物事への愛情を失うことはないだろうし、
たまには立ち止まって彼らについて考えるときもあるだろうけど、
この人生で、君を何よりも愛している
この人生で、君を何よりも愛しているよ

The Beatles- "In My Life"


 どうだろうか?僕の仮説、『ラバー・ソウル=ドライブ・マイ・カー』説。けっこう信ぴょう性高くないですか?

 もっと掘り下げたら他の共通点もあるんだろうけど、今回はこの辺にしておこうかなと思います。今後はみなさんの想像力込みで聴いてみてほしいです。

 また明日!

この記事が参加している募集

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!