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官能的で神秘的な何ものにもかえがたい濃密な時間。どこまでも研ぎ澄まされていく文学的純粋に陶酔にも似た感情に包まれる衝撃的な傑作…★劇評★【ミュージカル=ファンレター(2024)】


 ネットで文章を書き込んだことがある人なら誰でも、自分の文章が読む人に思いもかけない影響を与えることがあることを知っているだろう。私ももう20年以上前に、ネット上で知り合ったある人の相談に乗っている時に「こんなふうに決断してみたら」と書いたら、その人が私のアドバイスに従って1週間後に人生最大の決断をしてハワイに旅立ってしまったことがある。「あなたの言葉が決め手でした」と去り際に言われてドキリとしたものだが、その人にとってそれは決して不幸せな決断ではなかったことを今は知っているので、なんとか胸をなでおろしている。お互い顔も知らない間柄であることは同じでも、それがまだネットもメールもない時代に、ファンと孤高の人気作家との間に交わされたファンレターの中で起きたとしたら…? しかも、影響を受けるのが、作家の方だとしたら。そんなひそやかな出発点からスリリングに展開していく心理劇を描いた韓国発の珠玉のミュージカル「ファンレター」が日本初演を果たし、観客らに経験したことのない、官能的で神秘的な何ものにもかえがたい濃密な時間を与え続けている。日本統治下だった韓国での文化的抑圧という暗い歴史に真正面から向き合いながらも、どこまでも研ぎ澄まされていく文学的純粋に陶酔にも似た感情に包まれる衝撃的な傑作だった。日本版の演出は、韓国の演劇との交流も深い巨匠、栗山民也。(写真はミュージカル「ファンレター」とは一切関係ありません。単なるイメージです)
 
 ミュージカル「ファンレター」は2024年9月9日~30日に東京・日比谷のシアタークリエで、10月4~6日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演される。
 
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★ミュージカル「ファンレター」公式サイト

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