見出し画像

世界は「生きろ」と言っている…★劇評★【舞台=ドライブイン カリフォルニア(2022)】

 松尾スズキの書く戯曲には「毒」があると言われてきた。それは社会矛盾に対するアイロニックな抵抗であったり、現状固定への激しい怒りであったり、恵まれざる者、異形なる者の異議申し立てであったりするが、死の影や悲しみ、絶望、あきらめという毒がこれほど全編を漂っているのにもかかわらず、日本総合悲劇協会Vol.7として上演されているこの舞台「ドライブイン カリフォルニア」ほど、生きることへの渇望や希望という場所への思いがあふれている作品もないだろう。それは作劇上のテクニックなどというものを超えて、松尾がすべての登場人物に愛情を注ぎこんでいるからこそ生まれてきた作用だ。ずるくても、さびしくても、弱くても、切なくても、世界は「生きろ」と言っている。死者や、死んでいたはずの者まで、そう叫んでいる。一筋縄ではいかない感情ではあるものの、出演者の一人が言った、この舞台を観終わった後、演じきった後の「爽快感」というものは、そういうところからもたらされてくるのだろう。まるで竹林を渡ってくるさらさらとしたそよ風のように。初演の1996年、再演の2004年に続く今回の2022年の再々演は私たちに松尾の作劇のレベルの高さと、それを進化させ続けてきた軌跡をあらためて感じさせてくれた。(写真は舞台「ドライブイン カリフォルニア」とは関係ありません、イメージです)

 舞台「ドライブイン カリフォルニア」は2022年5月27日~6月26日に東京・下北沢の本多劇場で、6月29日~7月10日に大阪市のサンケイホールブリーゼで上演される。東京公演はすべて終了しています。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも序文は無料で読めます。舞台写真はブログでのみ公開しております。

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。阿部サダヲさん、麻生久美子さん、皆川猿時さん、猫背椿さん、小松和重さん、谷原章介さんら俳優陣の演技に対する批評、松尾スズキさんの演出や舞台表現、戯曲に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「ドライブイン カリフォルニア」公式サイト

ここから先は

4,970字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?