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「サイコパス・インサイド」読書感想文

皆様ゴールデンウィークは如何お過ごしでしたでしょうか。私は田舎暮らしなものですから近くの山の涼しい渓流で本を読んで過ごしたりしましたよ。
読んだ本は「神経科学者であり医学部教授である著者が、たまたま自分の脳のスキャン像をみたら実は典型的なサイコパス脳の持ち主だった」という、爽やかとは程遠い内容ですが。

ちなみに八重桜が咲いてた🌸

(サイコパスの脳とは)

・抑制、社会的行動、倫理観や道徳に関与しているとされている、前頭前皮質腹内側頭部の活動性が低下している
・情動を処理し、冷静な行動を導く扁桃体を含む側頭葉前部の機能低下
PETスキャン映像を見ると、眼窩皮質から前頭前皮質腹内側頭部と前帯状皮質の1部にまで広がる活動喪失が分かり、それは帯状皮質に沿って脳の後部に続きループして側頭葉下部で側頭葉の先端と扁桃体にまで達している。

例えば衝動的な犯罪者の場合は、眼窩皮質の機能低下が存在し、性欲昂進者や易怒的人間は扁桃体の機能異常が存在することが多い。海馬傍皮質や扁桃体に損傷を受けた人間は感情記憶や性欲動、社会的行動に欠点が認められ、帯状皮質の機能低下を示すものは気分の調節と行動抑制に難点が生じうる。


彼は自分の脳がサイコパス脳である事を知った後も、動揺や不安というものを吐露しては居らず、読んでいてやはり定型発達の人達とは情動や心理状態に乖離があるなぁと感じた。

本人としては、他者に対して暴力を行った事も暴力的な嗜虐心を感じたことも無く、法的逸脱行為も行ったことは無いので、そうした脳の持ち主であっても何一つ後ろめたいことは無いという主張。

しかし実は友人知人、家族や妻に対して非情な言動や危険な目に合わせるような問題行動があったことを段々自覚するようになり、開き直りつつも、多少反省すると共に少しでも行動を善行に変容させるように気を付け始めた模様。主観的自己と客観的自己の乖離。

彼自身は反社会的なサイコパスと社会に適応しているサイコパスとの違いの一番の理由は、「虐待の有無」であると考えている。

特に他者に対して残忍な暴力や殺害を行ったサイコパスは必ず虐待経験者であると。

自分がそうした凶悪犯罪者にならなかった理由は、親や親戚が自分に対して寛容で善意的に接し暖かく育て導いてくれたことが大きいと考えている。

サイコパスの脳機能低下は生まれ持った先天的なものだが、育てかたが適切であれば社会に適応することは可能なのだと。

また彼の場合高IQで、法的、社会的倫理の知識があり、また子供の頃から自然科学に強い興味があり、研究に没頭するなどの特性が反社会的行動を取る必要性をもたらさなかったからなのではないかと私は思う。

日本でも年々犯罪認知件数は減少傾向にあり、その理由の1つとして、教育や療育、福祉の充実があるように思う。

犯罪者の多くが、知能や認知機能、脳のどこかしらの機能低下などの脳のハンデを負っていることは明らかな事実だと思うのだが、そうした機能低下があったとしても、虐待や暴力などを行わず適切な教育環境で、勉強等の学びの機会を与えることが、社会への適応能力を高めることに繋がる。

今現在は少年院などで凶悪犯罪を行った子供たちにのみ更生を目的として、そうした優れた教育の機会を与えられているが、本来であれば義務教育の過程で、多くの「落ちこぼれ」たちが、犯罪行為を行う前の段階でそうした適切な教育を受けられるべきなのではないかと思う。

脳のハンデを抱えて生き辛さを抱えている人達の全員が少年院にいくわけではなく、それはほんのごく一部の極端な非行少年たちだけで、大半は生き辛さを抱えたまま被害者側になったり、搾取され利用されたり、社会に適応できないまま貧困に陥ったり、女性であれば風俗や望まぬ妊娠、子殺しなどの苦境に陥ってしまう。

サイコパス・インサイドの著者ジェームス・ファロン氏は脳のハンデを抱えておりその言動は諸手を挙げて賞賛することは出来ないまでも、明らかに成功しているケースといえるだろう。

また私個人は虐待を受けて育っているのだが、自分は子供に対して虐待の連鎖というものは起きていない。ジェームス・ファロン氏とは真逆の立場(脳状態は恐らくサイコパスではないが、虐待を受けて育てられた)と言えると思う。(私は自分の脳の状態を知らないので、脳機能に問題がないと断言は出来ないが)

先天的な要素(脳の状態)+後天的な要素(虐待の有無等)の2つの要素が重なった時に、暴力性や残虐性、虐待行為などに繋がりやすいのではないだろうか。
虐待を受けると脳が萎縮するなどの話も聞くので、後天的に脳が機能低下を起こす可能性もあるかもしれないが。

少なくともなにかしらの脳の機能低下があったとしても、教育によって社会に適応した成長は可能なのだということは非常に重要な観念だと思う。

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