川辺のたいてい同じところにいる

最初は新鮮だった。
はじめは離れたところに暮らしていたので、たまにしか行かなかった。
いつ行っても、リフレッシュした気分になった。
川辺の近くに引っ越してきた。
労力もなく行ける距離に住んだ。
毎日通った。
いつもたいてい同じ場所に座る。
ごく稀に少し違う場所に座る。
いつもたいてい、川辺に飲み物とタバコとスマホを持って行った。
飲み物は、ある日はコーヒーだったり、炭酸だったり、果物飲料だったりした。
飲み物を持っていかない日もたまにあった。
タバコもライターを忘れた日もあった。
スマホを見ていることがある。
SNSやニュースを見たり、ふと思い立って、友達に連絡することもあった。
川辺に行っても川の流れを見ないこともあった。
丹念に見て、その日の水の量や流れの速さの違いをぼんやりと眺めた。
光の加減も違った。
朝に行くことも、昼や夜に行くこともあった。
そこでサンドイッチやおにぎりを食べることもあった。
食べるものはだいたい似ているようで違っていた。
季節は巡った。
暖かい日も暑い日も寒い日も、風の強い日も雨の日もあった。
雨も小雨や土砂降り、降り始めややんだあとのときも。
春には羽虫や蟻や、てんとう虫、たまに猫を見かけた。
落ちている木の枝を手にしたこともあった。
草を撫でたことも。
写真も繰り返し、空や川の景色や、花を撮った。
昨日咲いていた花が、今日も咲いている。
しばらくするとしぼんだ。
また違う草が勢いをました。
秋冬には枯れた。
緑と茶色を見た。
あぐらをかいたり、三角座りをしたり、たまに寝転んだ。
初めて寝転んだ時は新鮮だった。
それにもだんだん慣れた。
たまに寝転ぶと、また面白かった。
いろんなことを考えた。
その時に生活で起こっている、いろんなことを思った。
悲しい時も、嬉しい時も、虚しい時も、落ち着いた時もあった。
生活が新しい局面に入った。
また川辺に行った。
繰り返しのようで、少しずつ違った。
そこでは大きくは変わらないことだらけだった。
また春がやってくる。
川辺の外での生活が少し変わる。
でも川辺には行く。
なんで行くんだろう。
泣いた時もあった。
涙をこぼした。
目薬を川辺で指したこともあった。
なんにもなかったようで、たくさんの少しの変化があった。
歳を重ねた。
まだ川はある。
季節は変わる。

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