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会話劇

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2019年1月の記事一覧

バーにて⑪

「正論なんて絶滅しろ!!!」
「どうしたんですか、何かありましたか」
「正しいことをもっともらしく偉そうに言われると何であんなにムカつくんだろうね?」
「偉そうに言われるからムカんじゃないでしょうか」
「じゃあ正論に罪はない?」
「罪かどうかはわかりませんが、正論が状況改善に役立つかどうかは場合によるかと思います」
「つまり私にエラッソーに説教垂れたり、突然怒鳴り散らすあのお偉いさんは、害悪という

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バーにて⑩

「こんばんは、マスター」
「お、こんばんは」
「まだ明るいですね。開店早々すみません」
「いいよ。何にする?」
「んー、モスコミュール」
「はいよー」

「最近どう?恋の方は」
「最近ですか?あー、フラれました」
「そうかー。でも、何かあるのは良いことだな。進んでる証拠だ」
「そうですかねぇ…。ああ、ここに一度一緒に来た人ですよ」
「…もしかしてあの、すごく目の澄んだ子?」
「そうです、あの人」

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バーにて⑨

「初めて付き合った人にさ」
「うん」
「『どうして泣かないの?俺の前じゃ泣けないの?』って言われたんだよね」
「あの人が言いそうなセリフだな。でもあの顔でそういうこと言うんだな」
「笑えるよね」
「ちょっとな」
「…泣けないのって悪いこと?なんか…そんな言い方されたら、私が悪いみたいじゃん」
「ずっと気に病んでるの?」
「うん…バカだよね」
「いや、あの人がバカだな。というか…悪質だな」
「どうし

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バーにて⑧

「男ってさ、簡単に好きとか愛してるとか言うじゃん」
「まてまて、話を拡げるな。全ての男ではない」
「そっか…えっと、じゃあ、簡単に好きとか愛してるとか言う男いるじゃん」
「ああ、それはいるな」
「それでさ、『ベッドの中の愛してるは信用するな』とかいう格言めいたものもあるじゃん」
「あるなあ。俺それどこで初めて聞いたのか覚えてないわ」
「私も…」
「うん、それで?」
「でね、思ったのよね。寝るために

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バーにて⑦

「何で文豪って皆不倫するのかなあ」
「皆じゃないと思うけど…リアリティのあるネタ作りのため?不倫モノってウケが良いからね。人は禁忌を求めるものだよ」
「なるほど…」
「で、何で急にそんなこと聞くの?」
「吉本ばななの読み過ぎで」
「ああ。白河夜船とかね」
「そうそう。でもさあ、あんな礼儀正しい男なんているのかな?」
「それこそリアリティの問題じゃない?文字に起こして活字で印刷されてると礼儀正しく感

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路地裏にて

第一話はこちら
第二話(前話)はこちら

「ここでさあ」
「うん?」
「私が泣き出したらどうするの?」
「シリーズ化してきたな」
「ねぇどうなの?」
「どっか連れ込む」
「それから?」
「水飲ませる」
「それだけ?アスピリンは?」
「持ってるよ。俺としたいの?」
「…わからない…」
「それ決めてから泣けよ」
「決定権投げんなよ」
「そっちこそ」

「だってどうせ断るくせに」
「試せば」
「断られる

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バーにて⑥

前話はこちら

「あなたの奥さんってさ、きっと」
「うん」
「すごくしっかりしてて鷹揚で背筋が伸びててハッキリした人なんだろうね」
「ああ、うん、そうだね」
「それじゃ私じゃ、全然ダメだよなあ」
「そういうわけじゃなかったけど」
「何それ奥さんに失礼じゃん」
「誰の味方してんの」
「正義…」

「私だってさ」
「うん?」
「しっかりしてて凛としててかつ余裕のある人間にずっとなりたくてがんばってきた

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バーにて⑤

バーにて⑤

「顔が良くて人心掌握に長けたナガサワさんのような男というものはだな」
「うん」
「自分はモテるということに絶対的な自信を持っていて」
「うん」
「女がワラワラと寄ってくるから」
「ああ」
「『受け入れられる』ことが普通なんだよな。というか最初から相手がフルオープンなわけだからな」
「ふむ」
「トラブルが起こればはい次、でいいわけだし。ハツミさんはキープしてるわけだし」
「家にスタンウェイ置いといて

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河川敷にて

河川敷にて

「ねぇ、触っていい?」
「何もしないって言ったじゃん」
「君はね」
「ダメだよ。止まらなくなるから」
「そしたらダメって言う」
「鬼かよ」
「いいから」
「はいはい」

「…あったかい」
「そりゃ、生きてますからね」
「脈…89」
「数えるなって。こっち向いて。顔上げて」
「…………」
「あなた、甘い」
「…。ダメ、これ以上はダメ」
「なんで?」
「…怖い」
「鬼だな」
「………」
「泣かないで。

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サロンにて

「6センチぐらい切りましたよ」
「これ、気が付く人いるんですかね」
「誰にもわかんないでしょうね」
「6センチも切ったのに…」
「わかる人がいたら、すごい見てる人ですよね」
「気がありますよね、ぜったい」

「専門家とか」
「これは美容師でもわからないかと」

「毛先!」
「え?」
「毛先見てたらわかるんじゃないですか?あ、毛先整ったね、髪切った?みたいな」
「うーん…厳しいでしょう……」

「ど

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バーにて④

「チョコ作るの面倒だからバレンタイン無視する」
「買ったら?」
「あげるなら手作りでしょ」
「…?理解できない」
「なんでわかんないの」
「『本当は手作りしたかったんだけど、上手くできなくて、結局買っちゃったんだけど、貰ってくれる…?』って言って渡せば落ちるよ」
「そんな単純な奴いる?」
「そんな奴しかいないなぁ」
「…理解できない」
「手作りじゃないと受け取らないとかいう奴ならいると思うのか?」

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コタツにて

「ぴぴちゃん(ペンギンのぬいぐるみ)」
「ぴぴちゃん、この子平べったい」
「かわいそう、生きてるのに」
「生きてるのか、ごめん」
「泣いてる」
「寝てるよ」
「いっつも寝てる」
「うちの大きいのもそう」
「ちっちゃくてもかわいいもん」
「かわいくないとは言っとらん」

「女というものはだな」
「何でしょうか」
「『怒ると思って』という身構えに一番怒る」
「えっ」
「そういう人間…気が立ってるとかキ

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スタバにて

風呂で思いついてそのまま忘却してしまったネタを、思い出して書けました。多謝。

「もし君と結婚したらさ」
「うん?」
「イニシャルがSSになるね」
「そうだな」
「これ以上サイズ小さくなりたくないな」
「MとかLとかにサイズアップできればいいの?」
「そう…なのかな」
「MならSMになるし、Lの苗字のやつそもそも日本にはいないね」
「…ホントだ」
「俺が嫌なんじゃない?」
「……違うもん」
「苗字

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コンビニ前にて

「懐に入るには」
「入るには?」
「気配を消すこと」
「気配を消すこと?」
「そう、気配を殺す。殺気を殺す。限りなく無に近づく」
「ふむ、そしてトロイの木馬するの?」
「いや、俺はしない」
「懐に入る目的は?」
「寒いから?」
「ハムスターか」
「ハムスターはかわいいなぁ」
「…寒いからか」
「…んー。懐に入らないと見えないものがあって、それを見るためかな」
「何が見えるの」
「何だろう、家族百景

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