コタツにて

「ぴぴちゃん(ペンギンのぬいぐるみ)」
「ぴぴちゃん、この子平べったい」
「かわいそう、生きてるのに」
「生きてるのか、ごめん」
「泣いてる」
「寝てるよ」
「いっつも寝てる」
「うちの大きいのもそう」
「ちっちゃくてもかわいいもん」
「かわいくないとは言っとらん」

「女というものはだな」
「何でしょうか」
「『怒ると思って』という身構えに一番怒る」
「えっ」
「そういう人間…気が立ってるとかキレるとか心が狭いとか思われて、遠巻きにされて嘘とか誤魔化しとかされると、本当に性格が悪い行動に出る」
「まじかあ。どうすりゃいいの。だって怖いんだもん」
「正面切る。謝る。信用する」
「ええーっ!いやほんとごめん」
「お兄ちゃん今回の件は見切り発車の馬鹿者だよね。完全にお兄ちゃんが悪いよね」
「その通りです。ハイ」
「私の心を傷つけておいて、答えを言いしぶり、私がワガママかのような言い方をした!」
「いや一度はいいって言ってたんだよ」
「先読みが甘い!」
「そうですねすみません」
「お父さんも最近気づいたんだよ。素直に言うのが一番いいって。いつもごめんねぇ」
「お父さん謝るならお母さんに言え!」
「お母さんほんとすみませんでした」
「いいえ」

「あっ泣いてしまった」
「なんでそのネタが出てくるの?!」
「さぁ」
「アレでしょ、エヴァのスレッドでしょ?」
「そうだけど」
「最近読み返したとこなんだよ。びっくりした」
「アレだよね、私テレパシーが使えるんだよね」
「マジか」
「ミラーニューロンとかあるじゃん。ああいうの」
「ミラーニューロン?知らないぞっ」
「あ、知らない?まあなんか脳科学系の話って眉唾っぽい怪しいの多いけどさ。脳は目の前の相手の脳の状態を真似る性質を持ってて、それがミラーニューロンのせい、みたいな話」
「へー全然知らん」
「朱に交われば赤くなるとか、夫婦の顔つきとかが似てくるとか、同じ大学出身の人間には傾向があるとか、そういうのの正体なんじゃないかと。ちょっと話広げすぎたけど」
「なるほどねぇ」
「で、私は元々スレッドのことは読み返さなくても覚えてて、今お兄ちゃんの脳内でそのトピックがホットなことを読み取って、不意にキーワードとして浮上してきた可能性はある」
「まじかー」
「まあ元々きょうだいだから脳みそ似てるかもね」
「ふむー」
「単純なシンクロニシティなのかも」
「謎は深まるばかりだ」

「もうすぐ誕生日なんだけど」
「……」
「もうすぐ誕生日なんだけど」
「……何か欲しいものはございますか」
「言っていいの?」
「できる範囲で」
「…予算は?」
「これぐらい」
「万?千?」
「千だなあ」
「わかった。探す」

「ちょっと手首の長さ測って」
「えっ何これメジャー?!」
「そう、リラックマ」
「耳取れてる!」
「かわいいしょ」
「これ欲しいな、いいな。後輩が喜びそう」
「いいから測って」
「はいはい」
「13.5…?だと思う?」
「そんなもんだね」
「お兄ちゃんは?16…そんなに変わらないね」
「かなぁ」
「いや外周の数センチは大きいか」
「だなぁ」

「16と15どっちがいいかな。今使ってるのが17だから、いきなり15まで下げるのは冒険かなあ」
「16でしょ」
「そうだな、刻んでいこう。よしこれ欲しい」
「メールにリンク貼って送って」
「こないだメール全消ししたからアドレス残ってない」
「まじかー。こっちにもないぞ」
「それは許さない」

「次いつ」
「二月かなあ」
「ふん」
「じゃあ帰るよ。行ってきます」
「行くの帰るのどっち」
「帰る、かなー」
「さよか」
「またねー」

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