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UX改善「ノーズワークのおもちゃ」

巷に転がるUX改善シリーズ、今回は「ノーズワークのおもちゃ」です。
(こちらは、日常にある商品について、リーサチ・UX改善を行うお話です)

ノーズワークとは
飼い主が隠したおやつを犬が嗅覚を頼りに探し当てるもので、ドッグスポーツの1種です。 ドッグスポーツというと、アジリティーやフリスビーといった、競技のイメージが強いと思いますが、ノーズワークもドッグスポーツのひとつとされています。

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そうです。犬用です。
でも猫も人間の20倍くらいは嗅覚が優れているはず..ということで購入しました。不織布を使っているということで、おやつが引っかかる懸念はあったのですが、どのノーズワーク系をみても大体不織布か布を使っていたので、そこは妥協するしかなさそうです。
うちの猫はマンチカンで手も短いので、比較的穴が浅くて掘り出しやすそうな「いちご」を購入しました。

「いちご」(6個入りver)
思ったより横長?若干歪だけど、粒々もヘタあたりのディテールもちゃんとしている。

目的の確認

この商品をなんの目的で購入したのかを確認します。
ノーズワークのおもちゃではありますが、実際嗅覚を特訓しようという意図はなく、感覚を使って楽しく遊べるおもちゃがほしいと言ったところでした。そしてあわよくばひとり遊びができるようになればと..なので目的は下記になります。

  • 匂いで発見する、自分で掘り出す遊びを楽しめる

  • ひとり遊びができるようになる

利用者のカスタマージャーニー

匂いを嗅ぐ
アタリをつける
いちごを掘りだす
おやつを発見
おやつを取る

めちゃめちゃ雑ですがざっくりカスタマージャーニーを想定します。

ユーザーテスト:商品利用者(猫)

早速好物の煮干しを入れてテストしました。

😺「なんだこれ?」
Action 匂いを嗅ぐ
😺「..煮干しの香りする..ここだ!!」
Action おやつの場所に見当をつける
Action いちごを掘り出す
猫パンチでノックアウト
Action 中身を確認

😸「あった!!!」
Action 顔つっこむ
😸「く。。届かない」(うちの猫鼻ぺちゃ系です。)
😼「手で取ったる」
Action 手を入れておやつをほじり出そうとする
😿「うぬぬぬぬ、あれ?取れない」
手が不織布に引っかかり、煮干しも不織布に引っかかる
😾「もう一度やるねん」(5分くらい格闘)
Action 再度手を入れておやつをほじり出し、途中まであげて口でキャッチ

テストデータが取れました。もう一度テストを実施します。
ここでは累積的UXを確認します。
煮干しを入れる穴は変えています。

😺「煮干しでしょ?知ってるよ」
Action 匂いを嗅ぐ
😺「..ここだ!!」
Action おやつの場所に見当をつける
Action いちごを掘り出す
猫パンチでノックアウト
さっき煮干しが入っていたところのいちごを掘ってしまう
Action 中身を確認

😿「あれ?ない!!」
Action 迷いながら別のいちごの匂いを嗅ぐ
😼「..ここだ!!」
Action おやつの場所に見当をつける
Action いちごを掘り出す
猫パンチでノックアウト
Action 中身を確認

😸「あった!!!」
煮干しを発見
(以下同様のため省略)

カスタマージャーニーごとに評価すると下記のようになりました。

匂いを嗅ぐ -> ○
アタリをつける -> ✖️ 2回目以降匂いがついて混乱
いちごを掘りだす -> ○
おやつを発見 -> ○
おやつを取る > ✖️ 掘り出しにくい

テストからの結果をまとめます。

  • 匂いを探知する、いちごを掘り出すの動きは問題なくできている

  • 穴からおやつを掘り出すのが難しい(想定よりだいぶ時間がかかる)

  • 一度使うと匂いが穴について混乱する

次に商品をメンテナンスする管理者側のレビューです。

ユーザーレビュー:商品管理者(自分)

🙎🏻‍♀️「おやつを入れるのは簡単」
🙎🏻‍♀️「使った後に煮干しの残骸が散乱していて、取りにくい」
🙎🏻‍♀️「残骸が取りきれず、不衛生」

取り出しにくく何回も中を引っ掻くので、煮干しが崩れて残骸が..
そして繊維に絡まって取りにくい。
  • おやつの設置は問題なくできる

  • 使った後に煮干しの残骸が散乱していて、取りにくい

  • 残骸が取りきれず、不衛生

課題の抽出と要件定義

課題の抽出

利用者と管理者の課題をまとめます。

  • 穴からおやつを掘り出すのが難しい

  • 一度使うと匂いが穴について混乱する(猫には難しすぎそう)

  • 使った後の煮干しの残骸が取りきれず、不衛生

改善時のアフォーダンス

上げられた課題が解決された状態のアフォーダンスを考えます。

  • おやつの取り出しが簡単にできる

  • 穴の掃除が簡単にできる(匂いも取れる)

上記をベースに、現状のおもちゃに工夫をします。

要件定義

どうすればおやつが簡単に取れて、掃除がしやすくなるでしょうか。
まずは、「おやつを取り出しが簡単にできる」視点で考えてみましょう。
不織布におやつや手が引っかかってしまっているということが取りにくさの原因となっています。
つまり「摩擦」です。
摩擦が少ない素材で、穴ができていたらこの問題は解決されそうです。
次に「穴の掃除が簡単にできる」ですが、こちらは穴自体が簡単に拭けたり、穴を洗うことができれば綺麗に掃除することができます。

以上のことから、下記の穴の改善について要件が出てきます。

  • お菓子を取り出す面は摩擦がない素材である

  • 取り出せて洗える穴

改善施策を立案

上記の改善要件を達成できる施策を考えます。
穴にカップのようなものを埋め込むことで対応できそうです。
また摩擦のない素材、洗えるというポイントを考えるとプラスチックが良さそうです。
ということで、下記に施策が決まりました!

  • 穴に取り出し可能なプラスチックのカップを入れる

ツールを選んで実施

万物が集まるというDAISOさんに行ってきました!
いい感じのサイズのものはあったんですが…

紙なんよ..
洗えないと要件が達成できないので、素材を重視して、あとは自分の手で調整する方向を選びます。(要件を最優先して手段を選ぶ)
例えサイズが大きくても底面の大きさが、いちごの穴と同じであれば上を切ればなんとかなりそう。

ということで上記を購入。
そして、穴の大きさに合わせてハサミで切って調整しました!

飛び出さないようにやや小さめのサイズにするのがポイント
縁は突起がないように滑らかにカットします

改善後の結果

早速利用者に使っていただきます。
結論、秒でおやつが取れました。
スムーズにとれて、してやったりな顔をされました。
プラカップなので取り出し洗いも拭き掃除も簡単にでき、匂いも取れます。

煮干しをセットして他の部屋にいると、すごく呼ばれるので、行ってみると「煮干しとったぜ」アピールでした。
ひとり遊びはできているが、報告も含まれると..それはひとり遊びなのか?

目的達成の確認

  • 匂いで発見する、自分で掘り出す遊びを楽しめる-> ○

  • ひとり遊びができるようになる->△ (ここはちょっと想定外でしたw

以上、巷に転がるUX改善でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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