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『何者でもない、』を演じ終えて。


「正月何してる?なんかやらない?企画」

朝起きて見たラインがきっかけだった。

2020年になって新しいことをなにかしたい、という気持ちがとても強かったので、私はすぐに

「やりたいです!!」

と返信した。

今思えばこんなに壮大な作品を、まさか二人だけで作ることになるとは全く思っていなかったし、
それでも、「やらない」の選択肢はもちろんどこにもなかった。

台本が送られてくると、特に丁寧に説明が書いてあるわけでもなかったが、私はすぐに共感した。
情景がすぐに頭に浮かび、いい映像作品がつくれるという確信があった。

そう、私は今回演じているという感覚ではなく、主人公サチが、過去の私にそっくりだったので、過去の自分をそのまま再現するという感覚に近かったと思う。

脚本を考える人と、受け取り演じる側は必ず同じ解釈とは限らない。

私は私なりに読み取り演じたので、
少しだけ私が今回どんな思いで演じていたのかを読んでいただけたら嬉しいです。


【シーン1: キッチン】

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台本には空想しながらコーヒーを入れるサチ。という指示があり、すぐにその様子は思い浮かんだ。

頭の中のイメージで体が動いてしまうサチ、実際の私も実はこの感覚がとてもあるので演じやすかった。
頭の中でオーケストラが鳴っていて(オーケストラでなくとも団体の何か)それは、打楽器のようなリズムを刻む者もいて(キッチンでたたいてる様子)、鍵盤楽器もいて(壁を鍵盤に見たてて弾く)、その音楽に合わせて踊るダンサーもいて、、、
何よりその音楽を統率しているのはサチなので、指揮をするかのような動作を入れました。ここで意識しているのは、歌っているとかではなく、音楽全体がサチの中で完結、完成していて、その世界はもう無意識に作り上げられている。ということである。(とんでもない妄想力である)。

そこに現実にいきなり戻すように彼氏のコウが後ろから抱きつく、当然びっくりするのだが、「びっくりした~」や「わっ」などの声は入れないことにした。それがいつもの日常であると感じてほしいと思った。
当然言う間でもなく、いつもそういうことをしないのにしてくる場合は、驚いて声も出ると思うのだが、そう、あくまで日常なのである。

ここからセリフのシーンに入る。

台湾旅行に誘ってくる彼氏、自分は仕事を休むから、サチも休んじゃいなよ。

勿論、サチも嫌なわけではないし、彼氏といる時間が、苦なわけでも全くない。でも、いつもいつもが積もっていくと....。また、大学やすむのか.....というほんの少しの自分のやらなきゃいけないことと、彼氏との時間を天秤にかけている返事をしたいと意識しました。

それを表現するために、「ん~、」という言葉をいれたり、目線は考え事をしている目線にしていました。目は少し閉じ気味で、光をあまり入れないようにしてました。うれしいという仕草は抱きついてきたコウの腕にちゃんと触れている。そういう葛藤と矛盾した気持ちを、無意識に感じさせるように演じていました。

だって。彼氏との台湾なんて、そんなうれしい誘い

「絶対楽しい!!!!!!!!!!!!いこ!!!!!!超楽しみ!!!!」

でもサチはそうじゃない。

いつものようにコーヒーを当たり前のように「はい」とコウに渡し、少し笑顔で見つめあった後、少し一人で考えたかったり、話を遮断するように

笑顔で「洗濯行ってくる。」

台湾のどこ行きたい?二人で旅行!楽しみだね!計画たてようよ!いろんな話ができるはずだし、

洗濯だって一緒に二人で行こうよ。

会話をするシーンが、もっと言うと2人画面に映るシーンがこのシーンしかなかったので、この少ないセリフで、コウとサチの関係を確実に見てくださるみんなに、疑ってほしかった。少し不安な気持ちになってほしかった。


【シーン2:ランドリー】

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ここはキッチンのシーンとは全く別で、考えている様子(女性らしい)を表現しました。先ほどの考えているシーンと同じように、少し瞼を閉じて。

キッチンのコーヒーを淹れているシーンも一人なのですが、明らかにコウが登場してからのサチの一人の時間が変化してほしいという思いで演じました。

日常の動作、当たり前のようにコウの服を洗濯機に入れる。

ここで下着にしっかりフォーカスをあてているのがポイントで、白地に花柄、下着をわざわざ映さなくても、作品は成り立ったかもしれないが、「同棲をしている男女」を感じてほしいシーンでした。

下着の色や柄も私(衣装担当)が選んでいるので、彼女の一番肌に近い彼氏しか見ることのできない衣服までキャラクターを固定してほしかった。でも外に出る足は黒のブーツ。

この下着のシーンは脚本の方から「下着のシーンどうする?」という風に聞かれたのですが(私に気を使ってくださって)「絶対入れましょうそのシーン」という即答し、私の大好きなシーンです。

乾燥機に移し、考えがぐるぐる回っている様子と、ぼーっとしている様子を表現し、次へ。


【シーン3:海/ここではない何処か】

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妄想の中での海のシーンはとてもサチに自分を解き放っていてほしかったし、「踊って!」という指示だけで本当に自由に表現しました。(一番ここが演じやすかった)

とにかく解放!解放!を意識していて、脚や手、指先まで大きく大きく表現しました。音楽に身をすべて預けて自由に。歩き方もまっすぐ先を見て、少し楽しそうに、サチに未来を見てほしかった。

タイマーの無機質な音によって、現実に引き戻されるサチ、中の洗濯物を取り出さず、母に電話する。

コウに話しているトーンより少し低く、でも決して深刻ではなく、希望があって、でも少し不安で。

「しばらくそっち、帰ろうかなって。」のところで眉を少し動かして、サチのいたずらっぽいところとか、ちょっとした企みを感じてほしい演技にしました。

洗濯ものはそのままに、勢いよくどこかに疾走するサチ。


【シーン4:海】

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ビジョンで見たあの場所(解き放てる場所)にサチは息を切らして、向かう。

実際に走ったので息は多少切れていたのですが、もっと切らして。

顔をゆっくりあげ、遠くを見つめ、その瞳に様々なこれからの「サチ」の可能性を秘めて。


以上でシーンの演技の解説は終わりです。

製作期間もそんなに長くなかったのですが、2020年の約3分の1、『何者でもない、』に集中することができて、本当に嬉しかった。何より嬉しかった。

過去の恋愛と似ていると書いたのですが、本当にそっくりで、私はその彼氏と別れ、今このように自由にのびのびと活動することができています。

間違いなくその恋愛をしていなければ、演じることができなかったと思うし、本当に感謝しています。昇華できました。

こんなに素晴らしい作品を演じることができ、皆様にも見ていただけて、幸せです。

これからも、この作品に感謝し続け、新しいことにチャレンジしていこうと思う。ありがとう。

少しといったのですが、長々と書いてしまいました。

読んでくださり、ありがとうございます。



私は『何者でもない、』。


映画はこちら↓↓↓

音楽はこちら↓↓


p.s. 白サチメイクと、黒サチメイクの動画を出します。


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もし心を動かされた方がいましたら、少しでもサポートいただけるととても嬉しいです。これからもたくさん作品を生んでいきます。