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拝啓プロフィール

「懐かしい……」
今開くと、ページのデータがほとんど消えていた。
所詮、若気の至り。
皆、黒歴史ならぬ、黒いプロフィールごと消したのだろう。
若い頃ってこういうの夢中でやってたよな。

そういえば、高校時代のクラスメイトなんて10数年会ってない。
最後に会ったのは東京でやった女子数名のプロントでの軽い飲み会。
社会人になった一同は「辞めたい」「辛い」と言っていた気がするが、
実際に会社を辞めた子はいるのだろうか。
あ。寿退社でいるか……。
でも。ブチギレして会社を飛び出したヤツはいないか、さすがに。

アタシも歳を取った。
ちゃんと筋肉痛は数日後に来るし、無駄な肉は付いたし、シミも増えた。
でも全然変わっていないな。
変わらない人は、すなわち変わっていることになるわけで……。

何かの拍子でインスタグラムに表示されたクラスメイトのページ。
知っている顔ぶれがズラリとキレイなドレスを着て楽しそうな顔を浮かべている。真ん中には幸せそうな丸顔のアイツ。
そこに、アタシはもちろんいない。

しばらく彼氏もいないし、リモートワークやらで家から出ないせいもあってか、一言もしゃべらない日もざらにある。
しょうがない、時代だ。

でも全然苦痛じゃない。
昔から、学生時代からアタシは人としゃべるなんてなかったじゃないか。

そか。思い出した。


アタシには友達がいなかったんだった。
一人も友達がいなかっただよね。


ずっと、ずっと、誰かを探していた気がする。そうしてここに来た。

思い出してみる。そう。
見よう見まねでプロフィールサイトに登録したんだった。
誰も登録してくれた人なんていなかったんだ。
皆に気づいてほしかったんだ。


プロントで最悪なパワハラ上司のしょうもない愚痴を延々と聞いているときに、カウンターにいた彼女たちを見かけただけだった。
あの子ら、カクテルを飲みながらピクルスをつついて笑ってた。


消えてなんかいない。最初からアタシのプロフィールはアタシのプロフィールだけだった。


拝啓。プロフィールーー。
アタシは、生きているよ。
どうにかこうにか、この町でたった一人あの頃と同じように生きているよ。友達ぼしゅう中!

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