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【アリク祭りレポ】「また来ます」の話には、こんな続きが待っていた

2024年1月27日 (土)。
 
下北沢のボーナストラックにてアリク祭りが開催された。
 
桑沢デザイン研究所 夜間部の学生が『今後のアリクをデザインする』をテーマに研究を続けた1年間。
その集大成が、このアリク祭り”デ”。
 
桑沢の学生の皆さんが展示や会場装飾、物販やワークショップなどを企画。さらに、兄さんに縁のある人たちがあれやこれやと参加する、1日限りの豪華な宴。
 
かつて兄さんをインタビューしたご縁で、私たち世田谷十八番にもお声がけいただいた。
(過去のインタビュー記事はコチラ⇩)

 通常のイベント参加のように十八番の紙面を配布することも考えたけれど、せっかくなら祭りらしく十八番らしく!
というわけで、兄さんにインタビューした時の文章を抜粋してパネルにした。

兄さんには「少し恥ずかしいね」と言われたけど、私にとってはこれぞ兄さんだ。
 
当日は時間の都合で前半戦(オープン〜15時頃まで)のみ参加。それでも盛りだくさんだったので、現場レポートをお届けします! 


祭りを愛し、祭りに愛された男

何よりこの日はお天気がよかった。
祭りの数日前はグッと冷え込んだり、自転車もなぎ倒されるほどの強風だったりした日が続いたが、この日は気持ちのよい晴天。
 
そういえば、祭りの打ち合わせをした時に、当日雨だった場合の対応を聞いた。すると兄さんは「あー雨か。その想定なかったわ」そう答えた。そして話は終わった。
 
想定にないだけあって見事な天気。なるほど。これが祭りを愛し、祭りに愛された人間の力か。
 
 
会場に着くとまず、兄さんにご挨拶。アリクは夜営業のお店だけど、爽やかな朝も妙に似合うのが兄さんの不思議なところ。
 
十八番のパネルを設置してウロウロしていたら、早速何かを食べている兄さんを発見。
「これ、うっま」と一人呟きながら食べる食べる。
この人、自分の祭りを一番楽しんでいるな。

私も負けじと食べることにした。
というわけで、一部ですが飲食レポートをどうぞ。  

アリク祭りの飲食レポ

1.南の国の明るい朝食”テールスープ”

パクチーが一面に広がるスープの下には、2日かけて煮込んだ牛テールとボール状に握られた雑穀玄米が鎮座する。噛みしめるたびにホロホロほどけながら旨味を放つテール肉。弾力のあるお米が、口の中でスープとともにほぐれていく瞬間がシンプルに幸せ。あぁこの幸福感、伝われ伝われ。パクチーがもたらす爽やかな香りは、スープをさらに極上にする。
若林アリクで毎週水曜の朝7時半からテールスープモーニングをやっているので、アリクが終わってしまう前に皆様も是非。
ちなみに、このモーニングでは自家製の酢醤油も一緒に供される。この意外な味変がホントに最高。あぁ思い出すと、今また食べたい。
☞ instagram @substitutemorning

2.山ト波さんのドリンク

6才の娘が「何か飲みたい!」と選んだのが、たんかん&パイナップルのビネガーシロップ炭酸割り。
フルーツビネガーシロップって甘味と酸味のバランスが難しいなぁとよく思うのだけど、こちらのは素晴らしかった。決してしつこくない、でもしっかりした甘みの後から酸味がほんのり追いかけてくる。底には角切りの果肉がたっぷりで、フレッシュな果物の味わいが口の中でふわぁっと広がる。
あまりに美味しくて、娘が見ていない間にこっそりたっぷりいただいだ。祭りに夢中の娘は気が付かなかった。 
☞ instagram @opantoc

(左)テールスープ         
(右)たんかん&パイナップルドリンク

3.浮き雲さんのキーマカレー

ものすごく芳醇な香りながら、食べると優しくスパイシー。少し粗めで大ぶりな挽肉が隅々までスパイスをまとっている。だからこそ、噛むごとに幾重にも連なる旨味と深みが溢れ出す。あ、キーマの醍醐味ってこういうことなのね!と、気付かせてくれた一皿。今更ながらキーマのキーマたる所以を知る。添えられたお豆のおかずも丁寧で味わい深い。
今年から埼玉に移住されたとのことで、ここで食べることができて良かった。  
☞ instagram @ukigumo_curry_and_momo

4.講師が作る肉豆腐

この祭りを企画した桑沢の講師・高谷廉さんが、企画デザインに留まらず肉豆腐まで煮込んでしまった。これがもう、通行人全員が足を止めるほど良い香りを漂わせる。知り合いに頼んで取り寄せたという山形牛と、2日かけて仕込んだ大ぶりの豆腐。お鍋の中から味しみしみの豆腐がでっぷりとすくい上げられた時は倒れそうになった。
大きなお鍋にたっぷり入った肉豆腐、仕込んでも仕込んでもすぐに売り切れていたけど、我が家は隙を見て2回買った。ふふ。
☞ instagram @ren_takaya

ここまでの結論。
「美味しいものは、結局茶色。画面が地味でも気にしない。」

(左)浮き雲さんのキーマカレー
(右)高谷さんの肉豆腐    

5.アリク兄さんの生ガキ

私は貝類がまったく食べられない。それが言えなくて、ご近所なのに3年ほどアリクに近寄れなかった。ある日、貝NGを告白したらすんなり受け入れてもらえて、それ以来仲良くしてもらっている。
時を同じくして、夫がアリクで生ガキを食べたらすっかりはまった。それまで生ガキを食べているところなんて見たことがなかったのに。今やアリクだけでなく、他のお店でも注文するようになった。アリクの影響力、恐るべし。

ちなみに、我が十八番編集長の奥様もアリクで生ガキにはまった。貝が500%食べられない私でも興味をそそられてしまうほど、とろけるような顔をして食べている。もし兄さんがCMを作るなら、是非とも編集長の奥様を起用して欲しい。
☞instagram @ariku2014

生ガキ3種盛り
産地は全て異なる

餅をついて、獅子が舞う

さて、そんなこんなでひたすら食べていると『もちはもちや』さんによる餅つきが始まろうとしていた。炊き立ての餅米が臼にどさっと入れられ、兄さんが杵を持つ。
何が起こるのか興味津々の子どもたちに向かって「つき始めたら、人が変わっちゃうけどビックリしないでね」と声をかける。そうして、いざ餅つき開始。
・・・いや、全然変わってないし!心の中で思わず叫んだ。兄さん、むしろいつもそんなイメージよ。常に全力投球という意味も含め。
 
途中から子どもたちも順番に餅をつかせてもらい、もちやさんが仕上げについたらいざ完成。その場で丸めたお餅をいただく。つきたてのお餅を食べるという行為、現代日本における幸せの極みではなかろうか。もちやさんの背中に向かって拝んだ。 
☞ instagram @mochistagram2017

こんなかっこいい法被があるだろうか

ほどなくして、獅子舞と曲芸が始まった。軽やかな音とともに獅子が舞い、威勢の良い掛け声と共に傘が回る。その昔、染之助・染太郎という兄弟の芸人さんがテレビで傘を回しながら「おめでとうございまーす」と明るく叫んでいたのを思い出した。
 
今年は元旦から「おめでとうございます」と挨拶することがどこか躊躇われた。
でも、餅つきも獅子舞も曲芸も、それでもやっぱり元気にいこうよ、と背中を押してくれているようで、その場の空気と相まってとても元気付けられた。 

娘が撮影した曲芸の写真

歩くおみくじ屋さんもいた。80種もの四字熟語とそれに伴うお言葉が書かれたおみくじ、全て自分でデザインしているそうだ。デザイナーだけど、同時にお菓子屋さんでもあるとのこと。なるほど、自分の才と興味の活かし方を知っている人はなんだって出来るのだ。
娘が引いたのは「時機到来:機を逃すなかれ」
6才の時分で重みある言葉をいただいた。 
☞instagram @hideji_t

デザインがとてもおしゃれなおみくじ

あの日のコの字カウンター

学生さんの企画の1つに、松陰神社アリクを象徴する『コの字カウンター』の復活があった。
アリクのカウンターはシンプルだったけど、桑沢カウンターは素敵に彩られている。もちろんそこで飲食も可能だが、途中からそのカウンターの中が舞台となって弾き語りが始まった。ふと見ると、兄さんもギターを弾いている。なんと兄さんが作詞作曲した“オイスタームーン”も歌ったとのこと。やっと生で聴くチャンスだったのに、娘のお面作りに付き合っていたら聴き逃した。

私が兄さんと初めて話をした日は確か、松陰神社アリクのカウンターでオイスタームーンのMV撮影が行われていたな。しかも、本格的なクルーを引き連れて。今ならば、兄さんの周りは常に本気で遊ぶ人たちばかりだとわかる。でも、そんなことを知らない当時の私は、硴屋のはずのこの人は何者なのだろうと、少し怖かった。あの日の記憶も今となっては懐かしい。

オイスタームーン歌唱中
気になる方は是非YouTubeでMVを

その他にも、世の中の全子どもが好きであろうヨーヨー釣りにシルクスクリーン体験、兄さんのお面が作れるブースもあった。アリク人生が体験できちゃう人生ゲームもあれば、物販ブースではアリク図鑑なるものが売っていた。さらにはDJ、ライブ、占いに数秘、パンの販売など。少し遅めの時間から始まるものもたくさんあって、紹介しきれないのがとても残念。 

アリクお面。迫力が…

「また来ます」のその後に

その場はとにかく清々しくて爽やかで、皆が笑っていた。それぞれが気ままに楽しんで、今これ以上に望むことは何もない。そんな一致団結した集団意識みたいなものがボーナストラック中に漂っていた。
 
1日限りのアリク祭り。同じ時間は二度とない。
以前インタビューしたときの兄さんは、「また来ます」の言葉の重みを語っていたけれど。この日この場所に「また来ます」は、ない。
 
でも、きっとそれでいい。「また来ます」がないからこそ、一期一会だからこそ、煌めく時間もあるのだいうことを兄さん自身が具現化し見せつけてくれたのだから。
祭りを楽しんだ人の心にはこの日の記憶が刻まれる。そして、時々ふと思い出しては心地よかったあの日の空気に包まれる。この記憶が細胞のどこかにあれば、いつかどこかで引かれ合って、約束なんかなくてもまた会える。そんな奇跡もきっとある。 

一店舗の今後、一個人の未来を1年かけてデザインするなんて、はたから見ると無謀にも思える。でも講師の高谷さんが本気で取り組んで、学生の皆さんは全力で応えて。その集大成にこれだけ多くの人が集まり、同じ時を過ごしたこと。
廣岡好和という人を軸にして、その渦に巻き込まれた人たちがこんなにも目一杯に真剣に今を楽しんだこと。
まずもってこれが奇跡なのだから。
 
私がインタビューをしたあの日、「また来ます」のその先にこんな未来があるなんて想像もしなかった。
この日見た景色、私はきっと忘れない。

アリク祭り”デ”

▼日時

2024年1月27日(土)  午前10時〜午後9時

▼主催
硴(かき)とおばんざいの店 アリク・廣岡好和
@ariku2014

▼企画

桑沢デザイン研究所 ビジュアルデザイン専攻 夜間部
VD2B アドバタイジングクラス
@kuwasawa_design

非常勤講師・高谷廉
@ren_takaya

場所
BONUS TRACK
@bonustrack_skz    @bonustrack_house

世田谷十八番

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