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指摘

「これはやばいっすよ」

私はデザイナーのS氏に言いました。氏が修正を担当している制作物のチェックを頼まれた時のことです。

「今回テキストを作った人はとんでもなく下手くそです。ちょっと読み直せば文章がおかしいのはわかるはずなんですけど」

私がこのような指摘をするのは、けっして珍しいことではありません。紙でもウェブでも、文節の繋がりがおかしいとか二重表現になっているとか、明らかな誤りではないものの好ましくないという箇所はしょっちゅう見つかるのです。ただ、これほどきつい言い方をすることはめったにありません。それほどクオリティの低い文章だったのです。

他社で制作しているものであれば「アホやな〜」で済みますが、自社の制作物だと「こんなのがウチの会社の実績になるなんて恥ずかしい」と思ってしまいます。それで、チェックを頼まれた際には一字一句丁寧に読んで担当者に報告し、ちゃんとしたライターを使うとクオリティが上がると力説しているのですが、それがきっかけで私に仕事が来たことは一度もありません。

「社長が言ってるじゃないですか。『ご指導ご鞭撻をお願いします』って」

社長の挨拶文ももちろんしっかり読んでいます。

「だから言ってやってくださいよ。『こんな日本語だとバカにされますよ』って」

社長の言葉を鵜呑みにして指摘をする人間などいないのは承知していますが、そのくらいのことはしてもいいのではないかと私は思います。クオリティの低い文章でステークホルダーに侮られて困るのは、間違いなく社長だからです。

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