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読書記録 2023年7~9月に読んだ本

 こんにちは、せ→る→です。
 本日は2023年7~9月に読んだ本の感想を書いていきます。あらすじ程度のネタバレあり。あくまでも私個人の感想です。(誤字等あるかもしれません 汗)


「愛されなくても別に」武田綾乃

 物語の主人公は大学生の宮田陽彩(みやたひいろ)。コンビニで22時から4時まで週6でバイトをし、8万円を家に入れているという。母親と二人暮らしで、料理も掃除も洗濯も全部宮田がしています。
 深夜バイトで疲れて家に帰ってきて、寝る時間が満足に取れていないのに、母親に起こされ、早く朝ごはんを作ってと言われる。

「最近、陽彩って色々と手を抜きすぎじゃない? 私が言う前にごはんくらい準備しておいてよ。大学生だからって調子乗ってるでしょ」

31ページ

 上記のセリフがそのとき言った母親の言葉です。もうめちゃくちゃムカつきました。てめぇでてめぇの飯くらい準備しろ、何様のつもりだこら、って感じ(笑)

 そんな母に少々辟易している宮田は、バイト仲間の江永雅(えながみやび)と交流をしていくことで自分の生き方を考えるようになります。
 このまま母親と暮らしていて良いのか。

 すっごく面白くて、すっごく刺さりました。“愛されてたら、許さなきゃいけないのか”、宮田をはじめ、家族との関係に悩む大学生たちの姿がすごくリアルに感じられました。実際にそういう人たちがいそうだな、と。
 生きるために何を手放し、どう行動するか。強く、逞しくなっていく宮田がとてもかっこよかったです。

「マイ・ディア・ポリスマン」小路幸也

 交番勤務の宇田巡(うためぐる)は、幼なじみで現在は副住職として働いている大村行成(おおむらゆきなり)と話していると、電柱の陰からこちらを見ている女子高生を見つける。
 その女子高生の名前は楢島あおい(ならしまあおい)。彼女は、漫画を描くための資料としてお巡りさんである宇田の写真を撮りたいという。

 写真撮影会が終わり、宇田が業務に戻ろうとすると、交番近くのベンチに財布がポツンと置かれていた。誰も近くを通った気配がないし、どこからその財布が現れたのか。状況がどうも不可解であった…という出だし。

 登場するキャラクターたちの視点が章ごとに変わって描かれています。こっちの話とあっちの話、それぞれが少しずつ繋がっていくのが読んでいてとても楽しかったです。
 タイトルに「ポリスマン」と入っていますが、がっつり刑事ものではないので個人的に読みやすかったです。

 サクサク読めて、ほっこりとした読後感。面白かったです。

「てのひらに未来」工藤純子

 図書館のティーンズコーナーで見つけた児童書です。表紙の淡い感じに惹かれました。

 物語の主人公は中学生の琴葉(ことは)。彼女の実家は町工場なのだが、あるときを境に注文が減って経営が危うくなってしまう。そしてそんなタイミングで居候の天馬(てんま)の実の父親が会いに来るという連絡が入る。

 戦争、平和、家族について書かれていて、児童文学っぽい!と思いました。読書感想文に向きそう。

 工藤さんの「セカイの空がみえるまち」という作品を過去に読んでいて、そちらは人種や差別を題材にしていました。今作も、そうした自分とは一見関係ない事柄を通じて、主人公たちが成長していく様が描かれているのがとても好きでした。

「群青のカノン」福田和代

「碧空のカノン」の続編。面白かったです。

 航空中央音楽隊を舞台にした青春音楽ミステリ作品。駐車場に停めてあったバスが消えたり、隊長室に飾ってあったダルマがすり替えられていたりと、鳴瀬佳音(なるせかのん)が今回もハプニングを呼び寄せていきます。

 1巻ではクラシック曲を多く演奏していたのに対して、今作では佳音が支援要請に従って沖縄へ行くので、民謡などまた違った音楽が聞こえてくるようで楽しかったです。
 ミステリ要素は少し薄まっていて恋愛がちょっと濃くなったなぁという印象も受けました。

人と人とのつながりって、距離なんか関係ないの

186ページ

 人との出会いや別れ、再会、など縁に関する佳音の上記の台詞がとても好きでした。

「薫風のカノン」福田和代

 「群青のカノン」の続編にして、シリーズ最終巻。

 音楽隊で年1で行われる競技会の審査員が偽物だったり、佳音たちの元に取材にきた漫画家のストーカー事件だったり…今回もハプニングや謎が起きますが、佳音の恋愛が決着するって感じでした(笑)

 航空中央音楽隊を目当てにこの作品を手に取った人は、内容がほのぼのしすぎていて肩透かしをくらうかもしれませんが、私は逆にこの緩さが全巻通してとても好きでした。なにより登場人物が魅力的なんですよね。

 実際の音楽隊の雰囲気はわかりませんが、佳音の周りは個性的だけど頼りになって、一緒に悩んだり笑ったりと空気感が良いのです。
 少々人の恋路に首突っ込みすぎじゃない?と思う場面もありますが、それだけみんな仲が良いんだなぁと私はほっこりさせられました。

 読み終わってしまって寂しいですが…とても楽しかったです。

「沖縄オバァの小さな偽証」友井羊

 沖縄の法テラスを舞台にしたリーガルミステリ。連作短編で、7編収録されています。

 特に第二話「飲酒運転の刑事弁護」が好きです。
 法テラスで働く弁護士の阿礼沙英子(あれいさえこ)の元に、飲み会帰りに飲酒運転で逮捕された我謝英樹(がじゃひでき)が訪れる。

 我謝は飲み会で一滴も酒を飲んでいないと主張している。飲み会に同席していた知人たちもそれを証言している。けれど、アルコール検知器は反応したという…

 私はミステリは圧倒的に学園ものが好きなので、法関係はあまり読まないのですが、どのお話もテンポ良く読めて面白かったです。
 タイトルは少々疑問ですが(笑)なんで「オバァ」限定なんだろう…?

「仙文閣の稀書目録」三川みり

 泣きました。めっちゃ面白かったです。

 主人公・柳文杏(りゅうぶんきょう)の育ての親であり師でもである柳睿(りゅうえい)が、危険思想の持ち主だとされ、殺されてしまう。文杏は大切な師が残した一冊の本を守るため、巨大書庫・仙文閣へ向かう。

 本まで消し去ろうとする追手から必死に逃げる文杏。途中、仙文閣で働く徐麗考(じょれいこう)と出会い、仙文閣にやっと辿り着く。だが、本当にこの場、ここの人たちを信頼して本を預けても良いのか…
 見極めるために、文杏は仙文閣に住み込むことになる。

 私は中華ファンタジーが苦手です。なぜなら漢字が多くて読み方がわからないから(笑)そしてすぐに読み方を忘れるから。
 でもこの作品は本を題材にしているのでとても楽しかったです。

 命懸けで一冊の本を守ろうとする文杏に涙でした。こういう展開に弱いんですわ…
 こいつ絶対怪しいだろ、と思っていたキャラが案の定終盤でかましてくれまして、読み進めるたびに心が躍りました。

 いや、良かったです、ほんと。続編書いて欲しい…

「バスを降りたら」眞島めいり

 毎日の通学、同じバスに乗る奈鶴(なつる)と律(りつ)。別の中学校に通う二人の視点が交互に展開されていく、青春ストーリーです。

 お互いに「あの中学に通っている人」と認識してはいるものの、名前も知らない他人同士。
 物語の中で二人は最後まで会話を交わさない。だけどこの先何かのきっかけで二人が交流していくことになったら素敵だなぁと想像してしまいます。

 特に奈鶴視点が好きでした。行動しようと思っていても、でもこうだったら?もしこうなら?とやらない理由を探して、結局行動できない感じが自分と似ていてとても共感しました。
 そんな奈鶴はあるときバスで、律のとった行動に憧れを抱きます。

 自分の知らないところで誰かに勇気を与えていたり、頑張る力をくれたり…すっごく良いなと思いました。こういうの、大好き。面白かったです。

あれはやりたくない、これもやりたくないって、選択肢をバツで消していくのがいつの間にかくせになっていたけど。
これをやりたい、ってマルをつける何かを見つけたくなった。

142ページ

「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成

 スピラリンクスという企業の最終選考に残った六人の大学生たち。
 波多野祥吾(はたのしょうご)、嶌衣織(しまいおり)、九賀蒼太(くがそうた)、袴田亮(はかまだりょう)、矢代つばさ(やしろつばさ)、森久保公彦(もりくぼきみひこ)は、最終課題であるグループディスカッションに備えて交流を深めていた。

 初めは「ディスカッションの内容によっては全員に内定を出す」と言っていた企業が、直前になって選考方法を変えると言い出す。その選考方法は、「六人の中で誰が最も内定に相応しいか学生六人で議論して決める」というもの。

 ずーっと読もう読もうと思っていて、やっと読みました!楽しかったです。
 正直最初は、コミュ力も高くて優秀な六人にリアリティがあんまり感じられず、自分には合わないのかなぁと思っていました。だけど読み進めてみると、だんだんとみんなの人間らしい一面が出てきて最後まであっという間でした。

 特に私は矢代さんが一番好きです。堂々としていて自分を一切恥じず、やりたいことに真っ直ぐな姿勢がかっこいい。

 ちゃんと何度も騙されました。こいつこんな奴なのか、いや、やっぱ良い奴なのか?どっちなんだ。と掌の上で転がされている感じ(笑)イヤミスは勘弁して欲しいなぁと思っていましたが、スッキリした読み心地で明るいラストでした。

 たった数時間、数週間一緒にいたところで、人柄を理解することはできないんだなと改めて実感します。
 ちょっとした言葉が足りないことで誤解を招いてしまったり、自分にとっての悪と誰かにとっての悪が違っていたり。読みながら何度「そういうことだったんだ!」と驚いたことか。

「夢見る横顔」嘉成晴香

 児童文学を挟みながら小説を読むとすごく良い、ということが最近わかりました(笑)特に司書さんおすすめの児童文学を借りるとハズレがない。というより図書館に置いてある児童文学はたいてい面白いと感じます。

 この作品の主人公は中学生の橋本香耶(はしもとかや)。親友や好きな人がやりたいことに一生懸命で、目標に向かって頑張っている姿を見て、自分の将来について考えていくというストーリーです。
 香耶の母親に対するちょっと黒い気持ちがすごくリアルだなぁと感じました。

 心温まる物語で、ほっこりしました。中学生のときに読みたかったなぁ。

「薬屋のひとりごと」日向夏

 はあー!!!!面白かった!!!!

 上記の「仙文閣の稀書目録」の感想でも書いた通り、私は中華作品が苦手です。今作でも登場人物の名前がまあ覚えられない(笑)毎回ルビ振って欲しいくらいです(真顔)
 でも、すっごくすっごく楽しかった!

「薬屋のひとりごと」は2023年10月にアニメが放送されるので、pvをちらっと見てみたところ…面白そう!と原作を手に取ってみました。

 物語は、後宮で下働きをしていた主人公の猫猫(マオマオ)が宦官の壬氏(ジンシ)から毒見役を任され、後宮で起こる事件や謎を解決していくというものです。the ミステリ!って感じではないですが、面白かったです。

 猫猫が言葉遣い荒くなるところがすごくかっこよかったです。逆に壬氏さまは、通常は美!なのに、拗ねている姿や急いで仕事を終わらせて猫猫の元に行ったりとか、可愛い奴でした(笑)彼がヒロインですね(真顔)

「夜のピクニック」恩田陸

 第2回本屋大賞第1位の作品。
 高校生たちが80キロをただただ歩く「歩行祭」を描く。大きな事件が起こるわけでもなく、ひたすら歩いているだけなのに、想像以上にボリューミー。

 西脇融(にしわきとおる)、甲田貴子(こうだたかこ)、秘密を抱えた二人を主人公に、今までの学校生活を振り返ったり、友だちと他愛のない話で盛り上がったり…淡々と展開されるけれど、彼らの三年間を見てきたような心地になりました。

 私の高校には歩行祭のような行事はなかったのですが、友だちが通っていた高校には毎年あったみたいです。全国にどのくらいあるんでしょう?正直私は歩ける気がしません(笑)

「ABC! 曙第二中学校放送部」市川朔久子

 ものすごく良かった。すごぶる良い。私はこういう作品が好きだ。

 はい、すっごく面白かったです。青春小説が読みたくて検索してみたらヒットした一作。タイトルからもお分かりの通り、中学校の放送部を舞台にした作品です。

 曙第二中学校の放送部員は、本庄みさと(ほんじょうみさと)と古場和人(こばかずと)の二人だけ。このままでは廃部の危機、ということで新しい顧問の須貝(すがい)先生と一緒に部員獲得に向けて活動を始める。

 新入部員も入り、より活動に力が入るみさとたちがキラキラしていてとても好きです。中学の女子ならではのねちっこい嫌味とか陰口とかがリアルで、面倒くさい教師の感じもなんだか懐かしくなりました。

汚い言葉でなくても人は傷つきます

190ページ

 転校生の真野葉月(まのはづき)がかっこよくて眩しかったです。上記も葉月のセリフ。馬鹿とか死ねとかはもちろん誰にとっても汚い言葉だけど、一見他の人から見たらなんともない言葉が誰かにとっては不快な言葉に変わったりします。
 それって当事者にしかわからないことだし、当事者のことを知らないくせに、一般的に汚いとされる言葉を言った側にだけ偉そうに説教してくる人ってどうなんだろうと思います。

 この物語の中にも古権沢(こござわ)っていうウザい教師(ウザいも汚い言葉ですね)が登場するのですが、まあ最初から最後までウザい(笑)私は高校まで先生という存在にあまり良い思い出がないので、余計ムカムカしました。

 とまあ、話のわからないクソ教師は置いておいて。

 とっても素敵な作品でした。青春小説と検索して、こう甘ったるい恋愛ものとか寿命がどうのこうのの泣けるものとか切ない話とか、出てきたら嫌だなぁと思っていましたが、読みたいニーズと合致した作品がヒットして嬉しいです。
 ちなみに、そのサイトでは上で感想を書いた「夜のピクニック」も載っていました。

「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」友井羊

 奥谷理恵(おくたにりえ)は、会社でポーチを失くしてしまう。同僚を疑うことへのストレスなどから体調がすぐれない日が続いていた。
 そんなとき出会ったのが、「しずく」というお店。朝にひっそりと営業しているそのお店を理恵はすっかり気に入る。

 5話の「わたしを見過ごさないで」が好きです。
 理恵はある日、「しずく」の店主である麻野(あさの)の娘・露(つゆ)が、女性と一緒にいるところを目撃します。露の母は亡くなっているはずなのに、女性のことをなぜかお母さんと呼んでいる…というお話。

 うーんと、私はあんまり食に関心がない人間なので、こういった食を大事にしていたり食の描写が多めの作品は合わないなぁと思いました。あんまりハマらない…でもスープ自体はすごく美味しそうで、飲みたくなります。

 個人的には可もなく不可もなく、のんびり楽しめた作品でした。

「叙述トリック短編集」似鳥鶏

 うーん…似鳥さんの作品は今まで三冊読んでいてどれも面白かったのですが、今作はなんだか微妙でした。…感想書くことがあまりない(笑)

 短編集なので読みやすいはずだと思いましたが、読み終わるまで結構時間かかっちゃいました。

 2話目の「背中合わせの恋人」は唯一楽しく読めたお話です。トリック自体は「まあそうだよね」って感じでしたが、大学が舞台だったので比較的楽しく読めたのかもしれません。

「春や春」森谷明子

 あ〜、素晴らしく良い!!すっごく面白かった!!

 俳句甲子園を目指す高校生たちの青春小説。
 俳句が大好きな須崎茜(すざきあかね)は、昔句会で見かけた同級生に再び会えるかもしれないと思い、加藤東子(かとうはるこ)とともに、俳句同好会を設立する。

 集まったメンバーはみんな俳句が好きなわけではない。でも必要な人材。情熱を持った子、知識を持った子、音に敏感な子、文字にこだわる子、ディベートが得意な子、周りをサポートする子。
 各章ごとメインとなる人物が違くて、全員が主人公になっている感じがとても好きでした。

 正直私は俳句に興味がありません。プレバトをたまに見て、「んー、よくわからん!」ってなる感じです。この作品にはたくさんの俳句が出てきて、生徒たちの解説がないと全く理解できないのですが、めちゃくちゃ面白いなぁと思いました。

 作中で、『広がる空を見上げるな』というフレーズが登場します。空は広がっているもの、空を詠む時点で見上げているもの、だから俳句の中に『見上げる』や『広がる』を用いない、という。
 ここの部分がすごく興味深かったです。

 小説だと、長ったらしく青い空が云々とかどこまでも広がるとか、書いてあったりするじゃないですか。(そうじゃない作品ももちろんある)俳句と小説は全く長さが違うから比べてもしょうがないのかもしれませんが、『空』という一文字だけでこんなに広がりを持っているんだなぁと思いました。

 やっぱり青春もの、主に部活関連の作品大好きだなぁと再確認しました。
 最後に私が作品の中で一番好きな句を紹介します。

夏めくや図書室に聴く雨の音

335ページ

「écriture 新人作家・杉浦李奈の推論」松岡圭祐

 主人公の杉浦李奈(すぎうらりな)は、小説家である岩崎翔吾(いわさきしょうご)との対談後、自身の新作の帯に彼からの推薦文がもらえることを喜ぶ。
 しかし、販売直前になって岩崎の小説に盗作疑惑がかけられ、本人も失踪してしまうという事件が起こる。李奈は事件についてのノンフィクション本を書くため、色々な人から話を聞くことに…

 読み始めはそこまでハマらなかったのですが、読んでいくうちに、「え、まじか」とスラスラ進んでいきました。面白かったです。

 太宰治や芥川龍之介など文学知識もさらっと書かれています。私自身は学生時代の教科書でしかその手の作品を読んでいないので、実際の作品名が出てきてもあまりテンションは上がりませんが、好きな人はより楽しいんじゃないかなぁと思いました。

 盗作って大変ですよね。(他人事)でも、webで小説読んでると似てる作品なんて至るところにありますし、盗作なのかただ似てるだけなのかの判断も難しいです。設定だけじゃなく、タイトルも似たり寄ったりなのでたまにキャラを勘違いすることもあります…(笑)

 本作に登場する李奈も、カクヨム出身のラノベ作家です。どんな作品書くのか気になります。

「春は始まりのうた」小路幸也

「マイ・ディア・ポリスマン」の続き。2巻目もゆるく、楽しく読めました。

 市川公太(いちかわこうた)は化け物に遭遇し、びっくりして荷物を置いてきてしまう。あとでもう一度現場に行くと、荷物が消えていたという…公太は交番勤務の宇田巡(うためぐる)に相談することに。

 一方、巡の彼女になった楢島あおい(ならしまあおい)は、交番近くで巡を観察している刑事の存在に勘づき…?

 様々な登場人物の語りによって、少しずつ二つの事件の真相が明らかになっていきます。1巻で良い雰囲気だった巡とあおいの恋が2巻で描かれるのかなぁと思っていたら、もうすでに付き合っていました(笑)

「クラスメイツ〈前期〉」森絵都

 中学生12人をそれぞれ主人公に描いた連作短編。続編ではクラスの残りの12人が描かれているみたいです。

 12人それぞれがすごくリアルで、「こういう子たしかにいたなぁ」と懐かしくなりました。実際に自分が中学生のころに苦手な子がいたように、作中にも何人か「この子とは友だちになれないなぁ」と思ったり(笑)

 好きだったお話は1話「鈍行列車はゆく」と2話「光のなかの影」です。1話の主人公は、自分を変えたい千鶴(ちづる)。すごくほっこりする良い話だったので、千鶴主人公の長編を読んでみたいなと思いました。

 2話の主人公は、そんな千鶴の友だちの志保里(しほり)。奇数で行動することを嫌がっていたり、自分のいないところで悪口を言われていたらどうしようと不安になっている姿にとても共感しました。

 それから9話の「言えなくてごめん」も印象に残りました。主人公・ゆうかは歳の離れた弟をクラスの人に内緒にしています。

はずかしくて、はずかしくて、どうしてもみんなに言えずにいた。

152ページ

 ゆうかは一体何が恥ずかしいのか。
 私は別に歳の離れたきょうだいがいるわけではないのですが、この恥ずかしいという気持ちとかそのあとに出てくるおぞましいという感情がものすごく理解できて、「わかる、わかるよ!」と言ってあげたくなりました。
 それくらい、このリアルな心を描いていることが個人的になんだか嬉しかったです。

「どうしてわたしはあの子じゃないの」寺地はるな

 最高でした、はい。久しぶりに寺地さんの作品読んだのですが、もう、ほんと、好き(笑)寺地さんの文章がすごく自分に合ってる。

 私はどちらかというと、成人している大人が主人公の作品より、中学生~大学生くらいの子が主人公の作品を読むほうが好きです。

 この作品は、閉鎖的な村で育った天(てん)、ミナ、藤生(ふじお)の3人が中学生のときにお互い宛てに書いた手紙を30歳になった今開けようとする。みたいな感じのあらすじだったので、読むのをためらっていたんですよね。

 でも読み始めたら、まあすこぶる好きな作風で。30歳になった3人の視点、中学生だった3人の視点で描かれていて、当時この子はこういうことを思っていたんだなぁと苦しくなったり、この気持ちわかるなぁと共感したり。
 閉鎖的な村で男尊女卑みたいな感覚が残っていたり、外から来た人に当たりがきつかったり、頑固なおやじが多かったり…そんな中でどこまでも真っ直ぐに自分の信念を突き通そうともがく天がものすごく好きでした。

 ミナもミナで、モヤモヤを抱えているけれど、誰にも、友だちである天や藤生にもそれを口に出せずにいるんですよね。
 特に私は中学生のころの藤生の行動がめちゃくちゃ好きで、中学生らしく好きな子に全力なんだけど、全然爽やかじゃないんです(笑)そこがまた良くてですね…

 ああ…すごく良かったんですよ。とても好きなんですよ、私は!

 アマゾンのページからも読める、大矢博子さんのブックレビューに全部詰まっているのでそちらをぜひお読みください。私のとっ散らかった文章ではわかりにくいけど、大矢さんの文章は「そうそう!それ!それが言いたいの!」と興奮しました。

 寺地さんの作品大好きだなぁと改めて感じる、そんな一冊でした。

「認知心理検察官の捜査ファイル」貴戸湊太

 検事と事務官のバディミステリ。まあ表紙に惹かれましたね(笑)
 天才検事・大神祐介(おおがみゆうすけ)のもとに配属された新人事務官・朝比奈こころ(あさひなこころ)。4つの事件の謎に迫っていく。

 どの事件も面白かったのですが、どうも最初から最後まで朝比奈が好きになれず…うーん、真っ直ぐで良い子なのはわかるのですが、正義感とか自分の考えが正しいと思い込んでいる感があまり好きになれず。

 心理学で謎を解くという面白い要素があるのに、読んでいてイマイチ乗り切れなかったです。

「小説の神様」相沢沙呼

 高校生作家の千谷一也(ちたにいちや)はある時、同じ学校に通う作家・小余綾詩凪(こゆるぎしいな)と合作することになる。
 お久しぶりに読んだ相沢さんの作品。映画化されているみたいですね。

 千谷のネガティブ語りが想像以上に長かったのがちょっと残念。不器用な二人の青春小説で、恋愛要素がないのは良かったです。二人の意見がいつまで経っても平行線なのが、「うーん、このくだり前もやったやん!クドい!」ってなりましたね…(笑)

 上記の認知心理検察官に続き、主人公が好きになれなかったのがなんだか寂しいです(汗)
 Amazonのレビューにも書いている人がいるのですが、登場キャラたちがセリフの中で「けれど」を使っているのがすごく気になっちゃいましたね。地の文ならまだしも、セリフで使わなくない…?

「君と読む場所」三川みり

 「もってけ屋敷と僕の読書日記」という作品の続きだったみたいです。気づかずに読んでしまいました(笑)道理でキャラの背景が薄いわけだ。
 本と人の繋がり、を描いた作品というところに惹かれて読み始めたものの、あまり印象に残らない作品でした。
 前巻を読んでいないのでなんとも言えませんが、主人公の有季(ゆうき)と同じ職場体験をすることになった麻友(まゆ)の関わりをもっと見せて欲しいなぁと思いました。

「水族館の殺人」青崎有吾

 「体育館の殺人」の続編にあたる作品です。やっぱり面白い!

 新聞部の向坂香織(さきさかかおり)、倉町剣人(くらまちけんと)、池宗也(いけそうや)の三人は、学校新聞を作るために水族館へ取材に行くことになる。
 そこでまさかの殺人が…香織たちが館内を案内してもらっているとき、サメ水槽の中に突然飼育員の雨宮茂(あめみやしげる)が落ちてきて、そのままサメにがぶりと。

 想像するだけでなかなかグロテスクな殺人でした。警察が捜査していくものの、容疑者11人全員にアリバイがあり手詰まりになります。そこで登場するのがこのシリーズの探偵役、裏染天馬(うらぞめてんま)です。あいかわらずな彼のキャラクターがすごく好きです。
 一巻では天馬が警察をガン無視して勝手に捜査や推理を進めたのに対し、今回はあろうことか警察側から天馬に助けを求めるという。おいおい、それでいいのか警察は!と思わず突っ込んでしまいますね。

 一巻同様わりとページ数がありますが、あっという間に読めました。楽しかったです。

 以上、24作の簡単なあらすじと感想を書いてみました。たくさん読めて大満足です!

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